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メモリーゼロ人生に思い出を  作者: キュウヨとかげ
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3.「大広場の影」

俺は、死んだのか?

こんな中途半端なところで。

何も出来ずに頭を落とされたあげく、俺の近くにいたシオンもきっと同じ目に…。

あの日と同じことを繰り返そうとしている自分の不甲斐なさに苛立ち、右手で髪を掻き乱す。

だが、そのイライラのおかげでようやく気づくことが出来た。

「右手?」

右手だけじゃない。

左手や足、体まで全て付いていた。

起き上がり一通り体を確かめ、自分が生きていることを確認し、ひとまず安堵する。

だが、近くにはシオンもベルもいない。

ここはさっきまでいた階段ではなく、どこかの店の中にいた。

「少年、あの『頭取りのベル』にビビって足を滑らして階段から落ちたんだよ。まー、そのおかげで助けることが出来たんだがな」

突然聞こえた声は、懐かしくも最近聞いたことがある声だった。

「元気にしておったか?というのは野暮な話か」

「おじいさん!!」

この異世界に来て初めて出会った人物に出会い、安心する。

だが、他に気になるところがあった。

「なんで……おじいさんがここに?」

「ワシはこう見えて武器商人なんだ。武器を頼まれて運んでいる間、護衛としてお嬢ちゃんに依頼したんだよ」

おじーさんは親指で後ろを指し、目をやるとそこではベルと戦うシオンの姿があった。

(なんでシオンとベルが戦っているんだ…?)

「まさか、この国に『頭取り』が来ていたとはな」

「『頭取り』ってなんのことなんだ?」

「そのまんまだ。人の頭を切り取り、コレクションにする狂人だ。ワシも実物を見るのは初めてだけどな」

あの優しかったベルが人殺しをしていたなんて…。

俺は最初から騙されていたんだ。

「そうだ……シオンが戦っているんだ。助けに行かないと──」

「今のお主が行ったところで何も変わらん。それどころか死体がひとつ増えるだけだ。武器も持たずに手ぶらでどう戦うんだ」

出入口に向かおうとした足は止まり、再びおじいさんの方へ向く

おじいさんの言っていることは正しかった。

だが、それでも…

「それでも…俺は……」

「……しょうがない。そこで待ちな」

そう言い残すと、部屋の奥の方へ行き藁の中に手を入れる。

そこから取り出したのは1つの両刃の剣だった。

竹刀ほどの大きさの剣を持ってくると俺の前へ差し出してくれた。

「これは注文の品だが、この際貸したる。どうせ止めてもあんた、行くんじゃろ?ならワシにできるのは手助けだけだからな。それとこれも渡す」

おじいさんは懐から1つ小さなナイフを取り出すと剣と一緒に差し出す。

「ワシのお守りだ」

「…ありがとうな、おじいさん」

渡された剣はずっしりと重く、俺の力じゃ連続して振るとすぐバテるだろう。

それでも、何も無いよりはマシだ。

「くれぐれも、気をつけるんだぞ」

「あぁ、行ってくる」

剣を肩から掛け、後ろ腰にナイフホルダーを横に付け俺は覚悟を決めて思いっきり外へ飛び出した。



「あのまま籠城せずに、この子を助けに来るなんて、ユイトは思ったよりもカッコイイね。気に入ったよ」

飛び出した先で待ち構えていたのはさっき、俺を殺しに来てた頭取り─ベルだった。

ベルと対角線上にシオンが立っている。

俺はシオンの隣に並ぶように立った。

「どうして、助けに来たの?」

「俺の知ってるシオンじゃなくても、目の前で人が死ぬのはもう嫌だから」

でも、その前に1つベルに確認したいことがあった。

「ベル、なんでこんなことをするんだ?誰かに命令されて仕方なくやっているのか?だったら俺が─」

嫌々こんなことをさせられているなら、止めて助けたかった。

だが、そんな願いとは届かずに、ベルが割り込む。

「好きでやっているんだよ、誰かの命令でもなくボクが。斬るのも殺すのも集めるのも全部、ボクがそうしたいからだよ。ユイトみたいに馬鹿で狩りやすそう奴を狙ってね。」

嘘でも冗談でもない、本気で言っている。

本気で殺しを楽しんでいる。

「ボクはユイトのこと殺そうとしてるのに、何気ない顔して話してくるから思わず笑いそうで、堪えるのに必死で必死で」

ベルは耐えきれなくなったのか天高く嗤い、侮辱する。

「そうか、ありがとな……おかげで覚悟が決まった!」

俺は剣を抜き、強く握り締める。

緊張と不安で喉が乾き、まともに息をするのも辛くなる。

だが、そんなのはお構い無しに相手も大きめのナタのような物を持つ。

その瞬間姿が消え、俺は本能的に後ろへ下がった。

『頭取り』なんて呼ばれてんだ。

なら狙いは……首!

気づいた時にはシャツの首元が切れ、血で滲み、目の前にはベルが立っていた。

「今のを躱されるとは思わなかったよ。ユイトのことは好きだからせめて、ボクの攻撃で楽にしてあげようと思ったのに」

「…化物かよ」

俺は皮肉混じりに嗤う。

目に見えないほどの速さ。

ここまで差がついてると同じ人間とは思えなかった。

「怪我は大丈夫!?」

シオンが駆け寄り、怪我を見る

「あ、あぁ。こんくらいなら大丈夫だ」

少し切れただけで血管などには届いていないようだった。

「ん?キミ、その『鍵』はなんだい?」

「「!!」」

ベルが指さした物は俺がいつも首にぶら下げている鍵のネックレスだ。

元々は俺のじゃないが、持ち主に託されたため、ずっと付けるようにしている。

きっと、さっきの攻撃で中から出てきたのだろう。

「これは俺の大切なお守りだ。お前には関係ないだろ」

「いや、大アリだよ。まさか、こんなところで『鍵持ち』と出会うなんて。余計にキミを持ち帰らないといけなくなったよ」

ベルの言った『鍵持ち』とは何なのかよく分からなかったが、辛い状況なのは変わらないので後回しにした。

「次はこっちから行くぞ!!」

剣を持ち直し、闘牛のようにまっすぐ力任せに振りかざす。

だが、それをベルはひらりと躱すと、みぞおちに強烈な蹴りをお見舞する。

剣を離してしまい、そのまま転がって行き、転がった先で壁にぶつかり、やっと止まることが出来た。

「……痛ってぇ」

「キミはこいつの相手をしてなよ」

腹を抑えつつ、前を向くとシオンの目の前に影のような人型が立っていた。

そのままシオンは交戦し離れてしまった。

「うぐっ」

みぞおちを蹴られたこともあり、胃から込み上がるものを我慢し、小さなナイフを抜いた。

「……使わしてもらう」

今度こそ離さないように強く握り、ベルの方へ突っ走る。

その道中で剣を拾い、鞘に仕舞った後、それを盾代わりに持ち直す。

速さでも、力でも勝てない。

ならば…

「オラァァ」

「ボクに勝てないなら勝てないで、何か作戦があるかと思ったけど、稚拙な考えだね」

「ぐぅっ」

剣で身を守るが所々擦り傷ができ、思うように攻撃が出来ない。

出血が酷く、体力もかなり削られる。

だが、そのおかげでかなり目標に近づくことが出来た。

「これで最後だ!!」

手に持っていたナイフをベルへ投げ、剣に持ち替える。

投げたナイフは避けられたが、それをよんでベルが躱した先に全体重を乗せて剣を振るう。

だが、懇親の一撃はベルには当たらなかった。

もう一度剣を持ち上げる時間はないだろう。

正真正銘、最後の攻撃だった。

「イイ考えかもしれないけど浅はかだったね。それじゃボクを殺せないよ。悪いけどこれも仕事だから、今度こそ死んでね」

そう言い終えると、一瞬のうちに肩から腰までに赤い糸のように一線に斬られ、熱いものが中からダラダラと出だし、そのまま倒れてしまう。

だが、そんなことに構わず、笑顔で斬りつけたベルに意地悪く笑って返した。

「……これで、『影』は倒した」

「!!!」

俺が倒したかったのはベルではない、その近くにいた影だ。

ベルは慌てているのか、周りを確かめる。

確かめたところで、もう影はいない。

すると俺とベルの間に、強い風が巻き上がると俺は壁側まで運ばれていた。

「ごめんなさい、あなたを守りきれなかった…」

「悪い、俺も無茶した」

シオンの顔を見て気が抜けてしまい、立ち上がる気力すら無くなっていた。

あのシオンの速さ……多分俺よりもシオンの方が強いだろう。

もしかしたら俺は足を引っ張ってしまったかもしれない。

「傷がかなり酷い…。そのままじっとしてて」

傷の前に両手をかざし、気が付けば俺の傷は塞がりかけていた。

「後は、任せて」

シオンのその一言は、力強く信頼でき、周りの空気の流れが変わった気がした。

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