5.5「空白の間」
「…ごめんなさい」
私は彼の首筋にトンと叩く。
彼の体はガクンと崩れ、伏せるように倒れる。
「お、お嬢ちゃん!?」
「すみません、コルトネさん。この人の身柄はギルドで預かります。気絶させただけなので、どうか安心してください」
「お嬢ちゃんのギルドには世話になっている、信頼しているよ。だがそこまでするということは鍵に何か秘密があるのか?」
シオンは言いにくいのか、困ったような顔をする。
「ごめんなさい、あまりこの事は他の方には言えないので」
「そうか…なら、ユイトくんを頼んだよ」
「はい」
懐にしまっていた鍵束を取り出す。
その中の1つの鍵を持ち、空間に扉を出した。
気を失っているユイトを背負い、扉を開けて帰る。
2人が扉に入ると光に溶けるように扉は消えていた。
「おい!今までどこほっつき歩いてんだベル!」
大きながたいをしている男は帰ってきたボクを見るなり怒鳴りつける。
「別にボクの好きにしていいはずだよ。どこに行こうが何をしようが、誰を殺そうがね」
周りには何も無く、あるのは大きい円形の机に椅子。
ベルは空いている椅子に座ると伸びをし、そのまま机に伏せる。
狩りやすそう奴がいたから近づいたのに、まさか鍵持ちとはねー。
「あ、そうそう。7人目に会ったよ」
「鍵持ちか!全く、何故それを言わん!」
すぐ熱くなるんだからコイツは…。
「殺す気で連れて帰ろうとしたらジャマな奴がいてね。…例のギルドだよ」
ベルは声のトーンを落とし、笑顔が消える。
「運がいい。これで残り1人の居場所が分かったんだ。良しとする」
「いたの!?」
ベルと対角線上に座っている男は神父の格好をしていて、影が薄いのかいつも居ても気づかない。
「あれ?そういえば他のみんなは?」
「アイツらもお前みたいにどっか行っちまったよ!全く、イライラする」
「それはいつもでしょ」
ベルは茶化すように言う。
「あぁ!?いつでもお前のこと燃やしてやれるからな、この殺人狂が!」
「キミの首はボクのコレクションに入らないからいらないよ、戦闘狂さん」
「なんだと!!」
言い換えればいつでも殺せるといった発言を男は聞き逃さず、立ち上がった。
「やはり運が悪い。…私に力を使わせないでくれ」
「お前は黙っとけ!いいか、俺たちの悲願が叶ったら真っ先に殺してやる」
私の方が先輩なのに…と、しょぼくれている人はほっといて、ボクは男の方へ向き応える。
「それまでにお互いが生きている事だね」
「ふん」
男は元の場所に戻り、ボクも楽な姿勢をとって、今日のことを思い出していた。
(またキミと殺し合えるかな、それまでに鍵の力を使いこなしてよ。次は本気でいくから)
首にぶら下げた鍵を弄りながら不敵に笑った。




