第65話
二人は現実世界と少し次元がずれている異世界を王都目指して走って行った。
世界は灰色で、人は霞のようにおぼろげにしか認識できない。
おそらく、現実世界からは、二人を全く認識できないはずだ。
王宮のラ・ヌカ国王のところに着くと同時に術式を解いてもらう予定で、それは朝六時と打ち合わせていた。
ラ・ヌカ国王が朝稽古をしていなければ、ラ・カームたちは近衛団と戦うことになるはずである。
ラ・カームは、王宮内にいるラァやラナの近くで潜伏するという選択肢は取れない。
見慣れていた王都の南門から入り、中央通りを北上し王宮へ入る。
ここまで、二人は無言でひたすらに走っていた。
王宮は五階建てであり、一階部分は近衛団本部及びラ・カームたちの学校の他、城の従者たちのためにかなり広い造りになっている。
二階は、応接の間と御前会議などを執り行う会議室があり、王族以外が公式に出入りできるのは通常二階までである。
三階には、ラ・カームたちの居室がある他王族の者のみが入れる庭園があり、今回国王が剣術の稽古をしているとすれば三階のはずである。
四階は国王と王妃の部屋がある。
五階は国王だけが入れる部屋となっており、その内部についてはラ・カームですら分からない。
時間まで十五分を残して三階の庭園についた。
ラ・カームには、次元を超えてもラァとラナの感覚がつかめていた。
「まだ、大丈夫みたいだ・・・」ラ・カームが呟いた。
「お二人ですね、大丈夫ですよ」サーシャが励ます。
「父上は全て分かっているはずだ、説得はしない、父上と戦うことになる、サーシャは周辺の警戒だけをしていてくれ」
「はい・・・」
ラ・カームにとっては、そこで待つ一分が永遠の時のように思えた。
もし、父上が現れなかったら。
そもそも、僕の力で父上に勝てるのか。
勝ったとして、ソード・オブ・ラーを破壊できるのか。
ソード・オブ・ラーを破壊すれば二人を助けられるのか。
僕が負けた時に父上はどうするつもりなのか。
サーシャの処遇はどうなるのか。
キヌア様はこのあとどうするのか。
僕が死んだら、ラァやラナは呪縛から逃れられるのか。
ラ・カームの頭の中を色々な想定が巡り、一瞬、立っているのが辛くなるほどであった。
「ラ・カーム様?」サーシャは青ざめたラ・カームに声をかけた。
「ああ、なんでもない、サーシャ」ラ・カームは自分を落ち着かせる意味も込めてそう言った。




