第64話
「飛び立ったか」ロズオブニア行政庁の議長がグリフォンを見ながら言った。
「これでよかったのでしょうか」一人の議員が議長に聞いた。
「キヌアの言うことはもっともだ、戦争のない世界は誰もが望む、しかし、我々が第一にすべきはロズオブニアの平和を保つことで、簡単にギャンブルはできない」
「そうですよね・・・」遠くなるグリフォンを見ながら議員も相槌を打った。
上空に達するとあっと言う間にスピードが出て、ロズオブニアが遥か後方に流れていく。
初めてグリフォンに乗る二人は緊張して声も出なかった。
巡航速度になって初めてキヌアが話しかけた。
「ここからは、二時間半といったところです、目標地点は王都南側の森林です」
「はい」少し青ざめた顔でラ・カームが答えた。
そこからは、三人とも無言で前方を見ていた。
キヌアの言った通り、王国の警戒網はこの高さまでは届いていなかった。
このあと、下降するポイントについても、ラ・カームとキヌアがすでに打ち合わせ済みであった。
物凄い速さで飛ぶグリフォンが空気の壁を破っていく。
サーシャやラ・カームには初めての体験で目を開けることも出来なかった。
「そろそろ下降します、ここからはしゃべらないでください」キヌアが言うと、グリフォンが徐々に下降を始めた。
王都を通り過ぎ、五キロほど南へ行った森に着地した。
どうやら、ここまでは王国には見つかってないらしい。
二人にはまだ、グリフォンに乗った疲れが残っていたがそれも言っていられる状況ではなかった。
「ここで私が術式を完成させます、これが完成するとこの世界の裏側というべき、別次元へと我々は移行し、解除する際は三人が同時にこの世界に戻ってくることになります」
「はい、お願いします」ラ・カームが言うとキヌアはミスリルロッドで術式を完成させていく。
・・・すごい。ラ・カームもサーシャもその魔力の総量に驚いた。魔術院のマスタークラスが百人もいるような魔力であった。
そして、術式が完成した瞬間、三人を黒い霧が覆い別次元へと移行した。
「私ができるのはここまでです、殿下、サーシャあとはお願いします」さすがに、これだけの術式を詠唱してキヌアは苦しそうだった、この術式を維持させるだけで精一杯であろう。
「はい、ありがとうございます、キヌア様、あとは僕らが」
「師匠、待っててね、あとごめんなさい、迷惑ばっかりかける娘で」サーシャがしおらしく言った。
「こんな時に言う言葉じゃないだろ、ちゃんとまた会える」
「うん」サーシャは動けないキヌアに言ってラ・カームのほうを向いた。
「行こうか」ラ・カームがサーシャに告げた。
「はい、ラ・カーム様」




