第63話
終章
ラ・カームとサーシャは、決意した以上このままロズオブニアにいてはキヌアに迷惑がかかると考え、二人で出立の準備をしていた。
「まるで家出だな」行政庁から帰ってきたキヌアがサーシャに向かって言った。
「これ以上、ここにいたら師匠に迷惑がかかるから」
「もう、問題なくなった、俺もロズオブニアから出て行くことになる」
「キヌア様、すみません僕たちのせいですよね」ラ・カームが申し訳なさそうに言った。
「殿下はお気になさらないでください、幼い二人に重責を負わせながら自分だけ安全なところにいるというわけにもいきません」
「はい・・・キヌア様にもお力になって頂きたいです、ソード・オブ・ラーを破壊し、イグニクェトゥアと和平を結ぶ、僕たちが出した結論です、でも、どちらをするにしても難しい」
「ラァ様とラナ様のことは緊急を要すると思われます、まずはそちらから解決しましょう」
「はい」
「ラ・カーム様の従者が二人になったね、師匠の魔術はとんでもないんだから!」
「サーシャ、はしゃがない」キヌアに咎められた。
「でも、大変にありがたい申し出です、戦力も不足しています、どうやって達成するかも僕たちだけでは見当もつきません」ラ・カームが素直に言った。
「王都ラーの警備は厳重ですし、中途半端な戦力があってもどうにもならないでしょう、それに、殿下にあっても正面からラ・カーム軍を相手にするのは避けたいのではないでしょうか?」
「はい、僕としては一人の犠牲も出したくありません」
「私がパク・インビジの上位魔法を詠唱できます、王都の魔法結界はこれで通過できるはずです」
『すごい・・』ラ・カームとサーシャが思わず同時に呟いた。
「しかし、ソード・オブ・ラーを破壊することは結局殿下にしかできません」
「やってみます、そうでなければ・・・」
「それと、私はこの術式を唱えている間は全く動けません、ですので王都への潜入はお二人で行って頂くことになります」
「はい」ラ・カームが答えた。
「父上は毎朝決まった時間に一人で王宮内の庭園で稽古をしています、そこへ時間を合わせれば、おそらく、一対一になれると思います」
「私も加勢するよ」サーシャが言った。
「サーシャは周りを見ていてくれ、父上とは一対一で戦う」ラ・カームが真剣な表情で言った。
「うん・・・」ラ・カームの力強さにサーシャもそれだけ言うのが精いっぱいであった。
「ここから、王都までですが私の専用グリフォンに乗りましょう、三時間ほどで着くはずです」キヌアが告げた。
「三時間・・すごい・・」ラ・カームはここまでの逃避行を思い出しながら言った。
「グリフォンでは目立ちますが、今はお二方を救うのが最優先です、今から出ればちょうど夜遅くにラーまでいけるはずです」
「では、私はグリフォンを見てきます、準備をなさっていてください」
ラ・カームとサーシャはそれぞれに武具・携行品・衣服などの準備を行い、三十分後にまた三人は合流した。
キヌアの私邸から十分ほど歩いたところにグリフォンは留め置かれていた。
「わぁおっきい!」サーシャが思わず言った。
「王国のものよりも大きい気がしますね、でも、おとなしそうな目をしていますね」
グリフォンは三人が近寄っても特に声を上げるでもなく、じっとしていた。
「サーシャから乗って」キヌアに促されてサーシャがグリフォンに恐る恐る乗った。
グリフォンは大人しく、少し身震いするくらいだった。
「殿下も乗ってください」
二人がきちんと乗ったのを確認して、キヌアは最後に搭乗し、二人を抱きかかえるように手綱を握った。
「飛びます」キヌアが言ったと同時にグリフォンは羽を羽ばたかせた。
一際強い羽ばたきと同時に浮揚感があり、グリフォンが地上から飛び上がった。
少し旋回した後、一気に高高度まで飛翔した。
王国の対空監視は主にグリフォンやパク・ドラゴンによるものであったので、キヌア専用のグリフォンほど上空に飛ばれると監視にはかからないはずだ。




