九章 ~冬イベ 全員集合~
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「ん……う~ん」
朝の訪れを感じて、重く閉ざされた瞼を上げる。いつもより温かい布団に包まれつつ目を覚ますと、私の傍らでは女の子が眠っていた。
「……って、あやめさんか」
一瞬、女の子とあれなことをしてしまったのかと想像して焦った……。よく考えたら、昨日はあやめさんの家に泊まって、そのまま二人で一緒に寝たんだっけ。
「今何時だろ……って、もうこんな時間!?」
壁に掛かっている時計を見ると、時刻は九時過ぎ。お日様がとっくに昇っている時間だ。そろそろ起きないと……。
「って、あやめさん、私に抱きついてるし……」
道理で温かいわけだ。お陰で、起き上がりたいのに動けない。
「どうしよう……?」
自分が起きるにはあやめさんを起こさなければならない。けれど、あやめさんはすやすやと、それはもう気持ち良さそうに眠っているので、起こしてしまうのは躊躇われる。かといって、いつまでも寝ているわけにもいかない。……ほんとにどうしよう?
「……ん」
と思っていたら、あやめさんが突然身を捩った。もしかして、起こしてしまったのだろうか?
「うぅ~……あ、桜ちゃんおはよ~……」
気怠そうに目を開けたあやめさんは、私が傍らにいると気づいて挨拶してくれた。
「お、おはよう……」
布団の中で「おはよう」と言ったのは、一体何時以来だろうか……? 全然記憶にない。
「ふぁ~……おやすみぃ~」
しかしあやめさんは、大きな欠伸をしながらまたも眠ってしまう……ていうか二度寝?
「……って、動けないままだし」
さて、どうしたらいいのだろうか……?
◇
結局、私もあのまま二度寝してしまい、次に起きたのは正午近くだった。あれから二時間も寝てたのか……。
「ふぁ~……うぅ、眠い」
あやめさんは未だに眠たそうにしている。夜とテンションが違いすぎる……。
「寝すぎだっての」
そんな彼女(と私)を、呆れた様子で見ているのは西崎君。ほんと、面目ないです……。
「勇太様も、起きられたのは九時過ぎでございましたが」
「ちょっ、高洲さん、それは言わないでくれよ……」
と、いつの間にか部屋の隅にいた高洲さんが、そんなことを教えてくれた。……って、西崎君も結構起きるの遅かったんじゃん。
「そ、それより、優の家にはいつ行くよ?」
都合が悪くなったからか、西崎君は強引に話を変えようとする。……まあ、いいか。
「四時からだから、三時くらい……?」
「まあ、それが一番丁度いいんか」
はい、会話終了。っていうか、西崎君と話すときって、大体こんな感じな気がする……。話が長続きしないっていうか。
「……うぅ~」
それから聞こえてくるのは、あやめさんの呻き声だけ。……とりあえず、三時まではどうしようか?
◇
「Yeah! クリスマスパーティーへLet’s go!!」
三時過ぎ、あやめさんが完全復活を遂げた。……この人、テンションの変動が激しすぎる。
「んじゃまあ、行くか」
そんな彼女を、西崎君は華麗にスルー。結局、いつもの感じで中田君の家へ向かうことに。
◇
「とうちゃ~っく!」
あやめさん、西崎君の先導で辿り着いたのは、直方体の建物。縦長で屋根がフラットな、三階建ての住宅だ。これが中田君の家なんだろうか?
「ああ、そういや牧野ちゃんは初めてだっけ?」
「う、うん……」
そういえば、私って、中田君のことを何も知らない。家の場所もそうだし、趣味や嗜好、他にも色々……とんでもない秘密は知ってるけど。
「おっじゃましま~すっ!」
チャイムも鳴らさず、自分の家に入るみたく扉を開けるあやめさん。親戚+幼馴染の家だから、彼女にとっては我が家同然なんだろうけど……私には、そのまま後に続いていくのに抵抗がある。
「ん? どうした牧野ちゃん? 行こうぜ」
「う、うん……お、お邪魔します」
西崎君に促されて、私は恐る恐る中田家に足を踏み入れた。
「西崎君に牧野さん、いらっしゃい」
家に入ってすぐ、玄関のところに中田君がいた。その隣にはあやめさんもいる。
「ちょっと早いですけど、全員揃いましたから、そろそろ始めますね」
そう言いながら、私たちを案内する中田君。玄関の隣にある階段を降り、地下室へと通される。
「さ、どうぞ」
その部屋は広々としていて、丁度、あやめさんの屋敷にあったレクリエーションルームくらいのスペースだった。壁際にはテーブルが設置されていて、その上には色取り取りの料理が並べられていた。
「やっと揃ったか、待ちくたびれたぜ」
「孝介さんは早く来すぎなんです」
その部屋にいたのは、夏休みに海で会った孝介さん。彼も呼ばれていたのだろうか。
「まあ、今年は全員時間前に来ましたけれど。珍しく」
「Heyゆうにゃん! どうしてmeをseeingしながら言うのかNA?」
あやめさんはハイテンションですっ呆けているみたいだけど、多分、例年はあやめさんが遅刻してくるんだろう。……最近、あやめさんの行動パターンが分かるようになってきた。
「おーい、もう揃ったか?」
すると、背後からハスキーな声が聞こえてきた。振り返ると、部屋の入り口から短髪の女の子が顔を覗かせていた。
「あ、日暮さん。はい、もう全員揃いましたよ」
「良かった。理夢が痺れを切らして大変だったんだ……って、でか!」
その子は最初、中田君と話していたけど、私に目を向けた途端、そんなことを叫びだした……そんなに驚かないでもいいのに。
「日暮さん、そういうことは思っても口にしないほうがいいと思います」
「いや、だってさ、私だって大概だけど、こいつはそれ以上だぜ? 見て驚かないほうがおかしいだろ」
うん、悪気がないのは分かってる。けれど、こういう純粋な言葉が一番傷つく。……自分がいかに異常なのかを自覚させられるから。
「あんまり考えなしに発言するようなら、日暮さんのケーキはなしにしたほうがいいのかもしれませんね」
「ちょっ、そりゃないだろ!?」
けれど、そうやって大人気ない発言をする中田君は、心の中ですら憤慨できない私の代わりに怒ってくれているようで、ちょっとだけ嬉しかった。




