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船長は恋がしたい  作者: 28号
船長は恋がしたい
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9/17

9 自暴自棄な酔っ払い

 目が覚めたカインが始めに見たのは、机に腰掛けながらラム酒を飲んでいるリードの姿だった。

 ゆったりとしたシャツの下には女のふくらみ。前々から女の様だとは思ってきたが、こうしてみると女神のような麗しさだとカインは再認識する。

「キャプテン、鼻血」

 視線を向けることなく指摘され、カインは慌てて側に置かれていたハンカチを鼻にねじ込む。

「……リード君、ひとつ尋ねたいのだが」

「女ですよ」

 問いよりも先に来た答えに、カインは掛けられていた毛布をはね除け、あわてふためく。

 混乱しすぎて動きまでワタワタし出す35歳に呆れつつ、リードはふて腐れた。

「性別を偽っていた罪で、今すぐ海に捨てます?」

「え、何で?」

 何でとくるか、そこまで馬鹿なのかと呆れつつ、リードはこの船の掟が書かれた本を彼に投げる。

「カイン海賊団の掟その5、船に女を乗せてはならない」

「あ、これノリで作った奴だから」

 一時期、海賊っぽい事してみようかなって思ったこともあって。

 と笑うカインに、リードは逆に殺意を覚える。

「これを真に受けて3年も胸にキツイさらしを巻き続けた俺を、馬鹿だと言いたいんですね。そうなんですね」

「ち、ちがう! お、掟は本気だ! でもリードは別だ、女でもいい」

 むしろいい、と言い出すカインに、リードはため息を重ねた。

「捨てられた方がよかったのに」

 そのつぶやきに、カインは今更ながらにこの部屋に来た理由を思い出した。

「あの、なにかその、悩みとかあるのか?」

「主にキャプテンに」

「……俺が好きなのか」

 真顔で言い切ったキャプテンの頭にラム酒の瓶を叩き付けるリード。

「ごめんなさい、もう言いません」

「そう言うアホなところに飽き飽きしたんです」

 先ほどまで飲んでいた酒が効いたのか、リードの口からは愚痴が次々と零れ出す。

 自分でもそんなことまで喋らなくてもと思ったが、自制するには酒をあおりすぎていた。それにたぶん、カインに胸を見られて自暴自棄になっていたのだ。

 気がつけば日頃の愚痴から性別を偽る苦労、元の世界のことから親友や家族の満ち足りた生活への不満まで、しゃべりに喋りまくっていた。

 時折カインを蹴ったり殴ったり髪を掴み上げたりと、割とやりたい放題をしながら。

「つまり、色々嫌になったんですよ! 特にキャプテンのお守りに!」

「じゃあその、実は大病を患っていてとかそう言うことはないんだな」

「死んでほしいってか?」

「違う、死なれたら困る!」

「でもアレですよ、ある意味宇宙人みたいなもんですよ私。超がつく部外者ですよ、その上女ですよ」

「うちゅうじんが何か分からないが、別にリードが何であろうと構わないぞ。むしろ、いなくなったら本当に困る」

 真剣な顔で言い切られ、リードは少し居心地が悪そうにラム酒を煽った。

「じゃあ、キャプテンももう少しキャプテンらしくなって下さい。そうしなきゃ、今度こそ本気で船を下りますから」

「なるなる! リードのためなら何でもする!」

 その言葉に、リードはラム酒の瓶から口を離し、そして花が咲くような笑顔を浮かべた。

 これはやばい、本気で惚れると慌てて鼻に詰めた布を押さえたその直後、リードの口は開かれた。

「じゃあ、次の港で童貞捨ててください。相手は私が見繕うので」

「ま、まって! それだけは、それだけは!」

「どうせそんな腕じゃ、健全な恋愛なんて無理ですよ」

 そう吐き捨てられ、メアリーちゃんの失恋から立ち直っていなかったカインは深く傷つく。

「と言うことで、次の港で男になって貰いますから」

 激しい後悔。それも今までで一番激しい後悔に、カインはしくしくと泣き出した。


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