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船長は恋がしたい  作者: 28号
船長は恋がしたい
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4 今こそ男になるとき

 会いたい。

 その一言が書かれた手紙をもらってから2週間後、カインは騎士の国の裏港に来ていた。

 騎士の手の届かない、国外れ。断崖絶壁に挟まれた細い運河の奥にあるその裏港は、海賊御用達の隠れ港である。

 メアリーちゃんと会うことになっていたのは、裏港と市街地の間にある古い教会だった。

「いきなり教会とか、ちょっと狙いすぎかな」

 スーツに着替えながらだらしなく笑うカインを、リードは至極どうでも良さそうな顔で無視する。

「でも、町娘がこんな夜中に教会まで来るのでしょうか」

「愛があるからな」

「実は、何かの罠だったりして」

 カインのネクタイを直していたリードの頭に、鈍い衝撃が落ちる。

 痛みで顔を上げると、そこにあるのはカインの拳骨だ。

「惚れた女は信じる。それが男ってもんだ」

「女に惚れられたことはないくせに」

「関係ない!」

 そう言うと、カインはかぎ爪の毒を抜いた。

「まあ、こうすればハンガー変わりですって言えるだろう」

「無理があると思います。それにいざというとき…」

「リード」

 年下の副官をたしなめつつ、カインは微笑む。

「いざと言うことはない。それにもしあったとしても、お前がいりゃあ大丈夫だろ?」

「あなたの事なんて助けませんよ」

「しってるよ」

 じゃあ後はよろしく、とカインは船室を出て行く。

 甲板に出れば、そこには整列した船員達の姿。

 荒くれ者で顔も体臭も酷い奴らばかりだが、キャプテンへの信頼はみな熱い。

「今度こそ、可愛い女の子連れてきてくださいよ!」

 気の良い部下達に励まされ、カインは景気づけに腰の剣を高く放る。

「今日の俺は素敵なジェントルだ。そいつを頼むぜ」

 丸腰なんて男らしい!

 さすがキャプテン!

 部下達の歓声をせに、キャプテンカインは恋の一歩を踏み出した。


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