5 優秀な副官に感謝
「で、見事に振られた感想は?」
目の前に立つリードに、カインはうめく。
「船長をいじめるな!」
「船長悪くねぇ!」
カインを囲み、そう怒鳴る船員達。
「あなた達、この状況でよくそんなこと言ってられますね」
そんな彼らと、リードの間にあるのは鉄格子だ。ちなみにその鉄格子があるのは騎士の国の王城の地下である。
「振られてねぇ……」
「じゃあ、騙されたと言えばいいですか?」
リードの言葉をカインは否定出来ない。なぜならそれが事実だからだ。
待ち合わせの教会で待っていたのは、騎士の国の騎士約100人。
それを率いていたのはカインの宿敵である、将軍フランシスだった。
フランシス=リチャーズ。
彼はもう10年もカイン逮捕のために、彼を追いかけている騎士の国の将軍である。
今まで彼とは幾度もやり合ってきた。剣や海戦、一度だけ女性を取り合ったこともあった。そしてカインが負けたのはこれが一度きりである。
だがその歴史をついにフランシスは塗り変えた。
「阿呆阿呆と思っていたが、ここまでの阿呆は見たことがないわ!」
メアリーちゃんと同じピンクの封筒を持って高笑いをしていたフランシスを見たとき、カインはもはや抵抗する気力もなかった。
目の前で告げられる勝利の口上も聞こえず、ただメアリーちゃんがそこにいないという事実に彼は酷く打ちのめされたのだ。
そしてカインの部下達も仲良く捕まり、今はこうして地下牢に仲良く閉じこめられている。
「ともかくここを開けます」
さすがリードと沸き立つ海賊達。それを五月蠅いと叱咤しつつ、リードは手際よく鍵を開け、仲間を逃がしていく。
「さあ、キャプテンも」
最後まで残っているカインに声をかければ、カインは拗ねた顔で寝台にごろりと横になる。
「メアリーちゃんがいない人生なんて」
「わかりました、じゃあここにいてください」
「おい! そこは『きっとキャプテンには他に運命の人がいるんですよ』って励ますところだぞ!」
「めんどくさいです」
と立ち去りかけたリードの体に、抱きつくカイン。
その直後、カインの世界が反転した。
「よるな変態童貞!」
真っ赤になって怒り出すリードをみて、カインは殴り倒されたことにようやく気付いた。
「遊びはここまでです。これ以上ふざけたら、本気で置いていきますから」
と言いながら、リードはすでに歩き出している。
その背中を見て、それから先ほどリードに抱きついた腕に目を落とすカイン。
「あいつ、意外と筋肉ねぇな」
というか、妙にやわっこかったなと思いつつカインは立ち上がる。
今回の礼に、自分の使っている筋力トレーニンググッズをプレゼントしてやろう。そんなどうでも良いことを思いながら、カインはリードの後を追った。




