第34話:データ強奪(パッチ)、あるいは世界の改竄
防衛システム起動まで残り六十秒。
世界のバックアップデータが眠る『苗床』で、リ・センセンは禁断の「不正アクセス」を続行します。
「逃げろリ・センセン! 消されるぞ!」
「……うるせえ、あと数ギガで『レジェンダリー・スキル』が落ちるんだよ!」
騎士の誇りも、世界の理も関係ない。あるのは「最高効率」を求める廃人の執念だけ。
リ・センセン、異世界の歴史を自らの血肉に変える一分間が始まります!
※今回も3200字超え、心拍数MAXのリアルタイム攻略回をお届けします!
「——警告。不正アクセス率 84%。防衛システム『ゼロ・イレーザー』、展開完了まで残り 45 秒」
ドーム全体が血のような赤色に点滅し、天井から無数のレーザービットが降下してくる。それは物理的な破壊兵器ではない。触れたものの『存在定義』を書き換え、無に帰すための、論理的な消しゴムだ。
「リ・センセン!! もういい、早くここを離れるんだ! あの光に触れてはならない、私の直感がそう叫んでいる!」
イヴが俺の背中を掴んで叫ぶ。彼女の肌は、死の予感に泡立っていた。だが、俺はコンソールのキーを叩く手を止めない。むしろ、その速度は人間の限界を超え、残像すら生んでいる。
「……待て、あと少しだ……! 12.0のレイドでも、ボスの発狂モード(DPSチェック)を乗り越えなきゃ報酬は手に入らねえんだよ!」
リ・センセンの網膜には、青いプログレスバーがじりじりと伸びているのが見えている。
【ダウンロード中:88%…… 89%……】
【1.8mのメッシ:うわあああ! センセン、後ろ! ビットが射撃体勢に入ったぞ!】
【隣の王さん:これ死んだらマジで『キャラ削除』じゃねえのか!? 運営(神)の怒りだぞ、これ!】
【物理の張先生:リ・センセン、そのコンソールの緊急冷却弁を開け! オーバーヒートでデータが破損する前に吸い出せ!】
「わかってるよ、先生! ……システム、冷却リミッター解除! 右手の魔力回路を全焼させてでも、帯域を確保しろ!」
バチィィッ!! と、リ・センセンの右腕から火花が飛び散る。紋章が皮膚を焼き、焦げた臭いが鼻を突くが、彼は笑っていた。苦痛など、得られるリターンの大きさに比べれば、ただの『デバフ効果』に過ぎない。
「——ゼロ・イレーザー、発射まで残り 20 秒」
天井の巨大なレンズが収束し、純白の光が俺たちを狙い定める。
イヴが覚悟を決めたように、重剣を頭上に掲げた。
「リ・センセン……貴様がそこまでして守りたいものが、その『データ』とやらなら……私がこの身を賭して、あの光を食い止める! 貴様は……最後までやり遂げろ!!」
「……っ!? 馬鹿言うな、イヴさん! お前の防御判定じゃ、あの消去プログラムは防げねえ!」
だが、イヴは聞かない。彼女の全身から、かつてないほどの黄金の魔力が溢れ出す。それは3.0時代の『騎士の魂』が放つ、最後の輝きだった。
【ダウンロード:95%…… 96%……】
「——10、9、8……」
カウントダウンが残酷に響く。
俺は、視界の端でイヴが光の中に飲み込まれようとするのを見た。
その瞬間、俺の脳内にある『正式服の記憶』が、ある一つの裏技を導き出した。
「……システム! ダウンロードしたデータを自分じゃなく、……イヴさんの『重剣』に全転送しろ!!」
「——実行。ターゲット:装備『毒棘の重剣』。データ上書き(パッチ)を開始」
【99%…… 100%!! コンプリート!!】
「——ゼロ・イレーザー、発射!!!」
ドォォォォォォォォン!!!
視界が白一色に染まる。
本来なら、俺たちも、この遺跡も、全てが『存在しなかったこと』にされるはずの衝撃。
だが、その轟音の中で、リ・センセンは聞いた。
キィィィィィィィン……!! という、何かが『弾かれた』ような高い金属音を。
光が収まった後、そこにはボロボロになりながらも立ち続けるイヴの姿があった。
彼女の掲げる重剣は、もはや紫色の毒々しい刃ではない。
数万人の『英雄たちのデータ』を強制パッチされたその剣は、七色の光を放ち、周囲の空間そのものを歪めるほどの神々しいオーラを纏っていた。
「……な、んだ……これ……は。剣が、歌っているような……。いや、私の腕の中に、数千人の戦士たちの記憶が流れ込んでくる……!」
イヴが愕然と自分の手を見つめる。
その剣は、今やこの世界の法則から外れた『特異点』——正式服12.0のレジェンダリー装備をも凌駕する、**古代遺産型・統合武装『ソラリス・レガシー』**へと進化していた。
「……ははっ、……あぶねえ。……座標判定が間に合ってよかったぜ」
リ・センセンは、煙を吹く右腕を抱えながら、その場にへたり込んだ。
コンソールは爆発し、防衛システムは『対象の消去失敗』によるエラーで沈黙している。
【課金王:ハハハハ!! 最高だ! リ・センセン、お前、運営の攻撃を『装備の進化』でカウンターしやがったな!!】
【1.8mのメッシ:イヴさんの剣、エフェクトがヤバすぎるww これもう、この世界の誰にも負けねえだろww】
【隣の王さん:森森、お前、自分の強化じゃなくてイヴさんの強化に回したのか? 意外と優しいじゃねえか】
「……勘違いすんな。俺は『装備枠』を確保しただけだ。……イヴさんは、俺の専属タンク(壁役)だからな。壁が壊れたら、俺が死ぬんだよ」
リ・センセンは悪態をつきながらも、満足そうにイヴを見上げた。
彼女が手に入れたその『力』は、単なる武器ではない。この世界の『管理システム』に風穴を開けるための、唯一の鍵だ。
「……リ・センセン。貴様は、私をどこまで連れていくつもりだ? この剣の重さは、もはや一国の王が背負うものよりも重いぞ」
「どこまでって? 決まってるだろ。……この『クソゲー』のエンディングを見るまでだよ」
夜明けの光が、地下遺構の入り口から差し込んでくる。
リ・センセンと、神の武器を手にした女騎士。
二人の『不正アクセス』は、ここから世界全土を巻き込むバグへと発展していく。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
第34話、ギリギリのデータ強奪戦でした!
リ・センセン、まさかの「自分のステータスアップ」ではなく「イヴさんの武器へのパッチ」という選択。
これでイヴさんは、この世界で唯一「管理システムの消去」を無効化できるチート武器を手に入れたことになります。
まさに廃人プレイヤーによる、最高効率の『戦力投資』ですね。
【作者からのお願い】
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皆さんのポイントが、リ・センセンの次の「不正パッチ」の内容を決めます!
4月18日の50話到達に向けて、このまま「連載RTA」を継続中!
第35話は、地上への帰還。しかし、外の世界では『リ・センセンの不正行為』を察知した別の勢力が動き出していました……。
お楽しみに!
それでは、第35話でお会いしましょう!




