誘黒神は遊びたい 3
「ゆう……こくしん?」
「【ドレッドギアス】に存在する六色、赤、青、緑、黄、白、黒……それぞれの頂点、リーダーみたいな物だと思って下さい。有名どころですと、神聖制約教団の統白神にIGPの救黄神辺りですね。ある意味人間大好きな二人ですから、人によく関わっていますし」
ユギト──誘黒神の視線が何故かアポロ店長に向けられる。
「そうそう、既に人間によって打破された方もいましたね……力の大部分を没収されて、今はどこにいるのやら」
くすくすと笑う誘黒神が水兎に、いつもの"ミラージュ"での"ギアスファイト"の時みたいに促す。
「ほら、ターンを進めて下さいミト嬢」
「っ!そんな強がってても、そっちのフィールドがガラ空きなのは変わんないんだから!アタシはこれでターン終了!!百火、決めちゃって!!」
「お、おう!俺の……ターン!!」
そうだ、俺は一人で戦ってる訳じゃない。
目の前のユギトのフリをしていた誘黒神がいつから入れ替わっていたのか分からないけど……今は、関係ない。
【ルシフェリオン】は世界全ての支配が目的だって言っていた、そんな事させてたまるか!!
頭の片隅で何かが引っ掛かったけども、それを振り払うように俺はカードを引く。
「ドロー!!」
百火 第二ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:3
引いたカードは【獄炎刀:カイエン】
前のユギトとのファイトで決定打になったカードだけど、今は使う事は出来ない。
でも、使う為のルートは見えている!
「【|炎熱の鍛冶師カリン】をサモン!!」
【|炎熱の鍛冶師カリン】
赤 コスト:1 人・火
A:1 B:1
このモンスターが場に出た時に、デッキの上のカードを一枚破棄して発動出来る。
手札のユニオンカードを一枚見せ、そのカードに書かれたモンスター名を持つカードを一枚デッキから手札に加える。
火柱が立ち上る。そこから出てくるのはデッカイゴーグルを付け、包帯で上半身をぐるぐる巻きにしている半裸のオレンジ色の髪のねーちゃん──【カリン】
その手に持っている金槌を振り上げると、俺のデッキの一番上のカードがいつの間にか置かれていた金床の上に乗る。
そのまま叩かれたカードは熱を帯びた光の玉になって、俺の手札の【獄炎刀:カイエン】にぶつかる。
「俺のデッキの一番上のカードを破棄して【カリン】の効果発動!手札の【獄炎刀:カイエン】を見せて、そこに書かれているモンスター名を持つモンスターをデッキから手札に加えるぜ!俺が手札に加えるのは【未来の大英雄ゴウエン】!!」
「ほー……新しい【ゴウエン】モンスターですか、良いですね。そして【獄炎刀:カイエン】……ここからどう攻めてくるのか楽しみです」
「その遊び気分もこれでおしまいだ!【未来の大英雄ゴウエン】をサモン!!」
【未来の大英雄ゴウエン】
赤 コスト:2 勇者・炎
A:2 B:2
このモンスターが場にいる限り、ユニオンカードのコストは-1される。
ユニオンカードをユナイトしているこのモンスターのAは+1される。
再び立ち上る火柱。それを切り裂いて現れるのは、真新しい鎧兜を纏った俺の相棒【ゴウエン】
こっち向けてくる視線に頷き、ユニオンカードを切る。
「【未来の大英雄ゴウエン】が場にいる限り、ユニオンカードのコストは1減る!【獄炎刀:カイエン】を【ゴウエン】にユナイト!!」
何も持っていなかった【ゴウエン】の手の中に、吸い込まれるように飛ぶのは紫色の炎を纏った刀【獄炎刀:カイエン】
握り締めた瞬間、前に使った時のように【ゴウエン】の全身を紫色の炎が包むけども前とは違う。
炎を完全に制御しきり、【獄炎刀:カイエン】を包み込んでいた炎の色が赤に変わる。
「バトル!!【カリン】でユギ……誘黒神を攻撃!!」
勢い良く持っていた金槌を投げつける【カリン】
アイツの影の中から真っ黒な腕が伸びたかと思うと、金槌が体に直撃する寸前に受け止めてそのまま軽く【カリン】へと投げ返す。
投げ返された【カリン】はソレをキャッチし、困りながらも渋々一礼をしている。
誘黒神 ライフ:8→7
「これで……トドメだ!!スペルカードW発動!!【再点火】!!【継承する火炎】!!」
【継承する火炎】
赤 コスト:2 スペル・火・犠牲
自分の場の赤のモンスター二体を選択する。その内の一体を破棄し、もう一体のモンスターに破棄したモンスターのAを加える。
【カリン】の全身が炎に包み込まれ、炎の輪に姿を変える。さらに、地面の亀裂からも火の玉が飛び出して同じように輪となった。
【ゴウエン】が刀を構え、走る。
「【再点火】の効果で墓地の【炎熱の猟犬】のA:2を!【継承する火炎】の効果で【カリン】のA:1を【ゴウエン】に加える!!さらに、ユニオンカードをユナイトしている【ゴウエン】のAは+1されて【獄炎刀:カイエン】の効果でさらに+1だ!!」
これで合計Aは7!アイツのライフを削り切れる!!
「いっけぇ【ゴウエン】!!!!」
二つの火の輪をくぐり抜ける度に、刀に宿っている炎の勢いが増していく。
大きく刀を振りかぶり、ソレが振り下ろされる刹那
「炎……私の弱点の一つです。流石にソレを喰らえばこの体はまた燃え尽きてしまう……
そろそろ、遊びの時間は終わりにしましょうか
墓地の【邪聖天の嫉妬レヴィアタン】の効果発動」
【ゴウエン】の一撃を防いだのは【ゴウエン】が握っている物とよく似た刀だった。
【邪聖天の嫉妬レヴィアタン】
黒・赤 コスト:8 悪魔・使徒
A:6 B:6
このモンスターをサモンする時に自分の場の赤のカードを一枚破棄しなければならない。
相手モンスターの攻撃で自分のライフが0以下となる時に発動出来る。手札から赤のカードを一枚破棄する事で、このモンスターの効果を無効にして墓地から場に出す。その後攻撃してきたモンスターとバトルし、バトル終了後にアタックフェイズを終わらせる。
このモンスターがいる限り、元々の色が赤を含むモンスターをコントロールしていないプレイヤーはアタックフェイズを行えない。
刀を持っていた奴を一目見た時の印象は巨大な蛇……その額から伸びている角が刀だった。全身から赤い液体を滴らせ、丸々と太ったその赤黒い蛇の口が開くと思わず悲鳴が喉の奥から漏れる。
【ゴウエン】によく似た、でも【ゴウエン】よりも淀んだ目つきの男がその体の大部分を溶かした状態でこちらを睨みつけていた。
「【邪聖天の嫉妬レヴィアタン】は手札の赤のカードを破棄する事で効果を無効にして場に出す事が出来ます。手札の【神聖なる使徒ミカエリス】を破棄したのです。そして【レヴィアタン】と【ゴウエン】でバトルを行い、アタックフェイズを強制終了させます」
蛇の叫びなのか男の叫びなのか、悲鳴のようにも聞こえる咆哮と共に【レヴィアタン】が【ゴウエン】に向かって飛び掛かる。
幾度も振るわれる【ゴウエン】の一太刀を受けても【レヴィアタン】の勢いは止まらない。何度目かの交錯で、それまで突進をかわし続けていた【ゴウエン】がとうとう捕まった。
何度も炎の斬撃を受け続けていた蛇の全身は炎に包まれていて……それでも【ゴウエン】に尾が巻き付き、俺の耳にまで【ゴウエン】の骨が折れる鈍く呆気ない音が響いた。
『いっシょに……イコう』
気持ち悪い笑みを浮かべ、蛇の中にいた男がその溶けて骨だけとなった腕で【ゴウエン】を掴む。
そのまま、蛇の体内に引きずり込み……蛇は燃え尽きた。
「コスト:8以上のモンスターが場に出ましたので【強壮なる使者】にCカウンターを一つ乗せます。さあ、ターンを続けて下さい」
「……バトルフェイズが終わったから、ターンを続けるも無いだろ。くそ、ターン終了だ」
勝負を決める絶好の機会を逃してしまったのが痛い……沈黙が俺達三人の中に降りる。
次のターンが……誘黒神のターンが来てしまう。
「私のターン、ドローフェイズの前に約定アビリティにより、デッキからを【堕天聖堂ーアンチ・バイブルー】を手札に加えます。そして、ドローをスキップしてカウンターブースト」
誘黒神 第三ターン
ライフ:7
手札:3 ターンカウンター:6
約定 【強壮なる使者】 CC:7
「アーティファクト【堕天聖堂ーアンチ・バイブルー】を発動」
【堕天聖堂ーアンチ・バイブルー】
白・黒 コスト:2 アーティファクト・建造物
一ターンに一度、手札の白のモンスター一体を破棄して発動出来る。墓地から黒のカード一枚を手札に加える事が出来る。
辺りの景色は……変わらない。
でも、アイツの雰囲気がさっきまでとは違う……
「手札の白のモンスター……【神聖なる使徒ウリゾラス】を破棄し、【堕天聖堂ーアンチ・バイブルー】の効果を発動です。墓地から黒のカード……【邪聖天の憤怒サタン】を手札に加えます。黒のカードである【堕天聖堂ーアンチ・バイブルー】を破棄して、【邪聖天の憤怒サタン】をサモン」
『ベリリンとかザドっちゃんも忙しいと思うけど、サタンも十分に過労死枠だと思う。労基が来い』
馬の頭でも分かるくらいに嫌そうな顔をしながら【サタン】がボヤきながら、場に出てくる。
「残念ながらモンスターに労基は有りません。コスト:8以上のモンスターが場に出ましたので【強壮なる使者】にCカウンターを一つ乗せます【サタン】の効果を発動、デッキから【神聖なる使徒カマエイドス】を破棄して、墓地から【黒き神の印】を回収します」
またあのコスト軽減カードが手札に加わった……!!それに約定カードとかいうのにもカウンターが大分溜まってきたし……ヤバいかもしれない。
「バトルです。【サタン】で【スノーホワイト】を攻撃時に効果発動。【神聖なる使徒レミュリエス】をデッキから破棄して【神聖なる使徒ミカエリス】を墓地から手札に加えます」
【スノーホワイト】の吐息が吹雪となって【サタン】を襲う……でも、何度も死を経験してきた悪魔は寒さ程度では止まらない。
吹雪の白の中を黒い稲妻が走る、振るわれた大鎌が【スノーホワイト】の首を刎ねた。
「【スノーホワイト】!!!」
「これでターン終了です」
水兎の"ギアスモンスター"がやられたけど、三対一の戦いによるアドバンテージの差が着いてきた。
誘黒神の手札は三枚……一回は攻撃を【レヴィアタン】の効果で止められるけども、使えるスペルも無いしライフも少ない。それに、切り札も失っている。
このまま押し切ればいける……でも、さっきから悪寒が止まらない。
何かが怖くてたまらない。
「ここが正念場だっぺ!わたすのターン!!」
──残念ながら、マイバラ嬢のターンは来ませんよ
誘黒神が指を鳴らすと同時に、牢獄の壁が震える。
「【強壮なる使者】にCカウンターが八個以上乗っている時に、ターンの初めに効果発動です。このカードを裏面にひっくり返します」
ザワザワ、カサカサと何かが動くような、音がひっきりなしに聞こえる。
「約定履行。契約に基づき、第六の恐怖はここに顕現する……さあ英雄たち、乗り越えるべき悪はここにいますよ。現れよ
【誘黒神】




