「一気に攻め落とす!!」
「「スタートアップ!!」」
目の前の男白掟優義徒は何か慌てふためいていたけども勝負が始まってからは真剣な眼差しを向けてくる……その真っ赤な瞳が気味が悪くて思わず目を逸らすのは私が弱いからだ。
……手札はいつも通りに動ける内容ではあるけども、それが私の心を締めつけてくる。
【モンザエモン】がいてもいなくても変わらない……私は【モンザエモン】を手に入れる前と後も自身の"ギアスファイト"の腕が成長しているとは思えない。
私は、成長出来ていない。
「先行はいただきます、ドローフェイズをスキップしてカウンターブーストです」
ユギト 第一ターン
ライフ:10
手札:5 ターンカウンター:2
「アーティファクト【幽獄の万魔殿ージェイルオブデモリエルー】を発動します」
【幽獄の万魔殿ージェイルオブデモリエルー】
黒 コスト:2 アーティファクト・悪魔
このアーティファクトが存在する限り、自分は相手プレイヤーとモンスターにダメージを与えられない。
一ターンに一度、手札を一枚デッキの一番下に置く事でデッキの上から五枚を確認し、その内の一枚を手札に加えて残りのカードを破棄する事が出来る。
自分の墓地にコスト8以上の邪聖天モンスターが七体以上存在する時に発動出来る。自分の墓地からカードを七枚選択し、それらのコストを4減らした状態で手札に加える。
聖堂が石造りの寒々しい刑務所のような場所に変わる……牢の中には誰もいないけども誰が入るのかは既に決められているようで、動物などのマークが横の壁に刻まれている。
「【万魔殿】の効果を使います。手札を一枚デッキの一番下に送り、デッキの上から五枚を確認します」
デッキに手をかけ、そこから五枚めくって確認して……迷うこと無く一枚を手札に加えて残りを破棄している。
「その後、一枚を手札に加えて残りのカードを破棄します。これでターン終了です」
モンスターは出してこない……黒メインのデッキなのは分かるけども今の所は堅実な動きしかしていないのでどういうデッキなのかが分からない。
……ここは慎重に行こう。
「小官のターン、ドローであります!」
レジーナ 第一ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:1
「スペルカード【撥条兵起動】を発動するであります!」
宣言と共に手札を破棄すれば、デッキから一枚のカードが飛び出す。
それを"ギアスディスク"にセットすると、巨大なゼンマイ──【撥条絡繰KITERETU】が私のすぐ近くに落ちてくる。
「手札を一枚破棄する事で、デッキから【撥条絡繰KITERETU】を発動!しかも、ネジマキカフェカウンターを一つ乗せるであります!【KITERETU】自身の効果でネジマキカウンターを乗せ、さらに【撥条兵士エイプリル壱式】をサモンするであります!」
ぐるりと一回転した巨大なゼンマイを守るように赤いラインの入った服を着たおもちゃの兵隊が一体出てくる。
ソレが首から下げていた警笛を鳴らすと、似たような姿の同じく赤いラインの入った服を着たおもちゃの兵隊が現れる。
「先ずは【KITERETU】の効果でネジマキカウンターを一つ追加!さらに【エイプリル壱式】の効果でネジマキカウンターを二つ取り除いて【撥条エイプリル一号トークン】一体を出すであります!」
「お決まりの動きですね、安定した初動が有るのは良いテーマの証です」
……本当に安定した初動なのだろうか。
自分の中では最善の動きをしているとは思うけども、もしかしたら他の人がこのデッキを使ったらもっと盤面と手札が強くなるのかもしれない。
素直に彼の言葉を受け止められない自分が嫌になる……薄ら笑いを浮かべているのもあってか、皮肉にしか聞こえなくて仕方がない。
でも、そんな内心を出してしまえば見下される……やっぱり子供だと侮られる。だからこそ、私は強くならなければならない。強く正しいIGPの捜査官、それが私なのだから。
「当然であります、小官が選んだテーマなのでありますから!トークンが出たのでさらにネジマキカウンターを追加、そしてバトルであります!【エイプリル壱式】とそのトークンで攻撃するであります!」
長銃を並んで構える赤のおもちゃの兵隊達。私が腕を下ろすと同時に引き金が引かれる。
放たれた弾丸は直撃はせず、白掟優義徒の手足を掠めるようにして通り過ぎていくが硝煙の匂いと掠めた手足から垂れる血にモンスターが実体化していることが分かる。
私は実体化させる意図は無かったのに……特別なカードを所持している者同士が戦うと、勝手にカードが実体化する事がある。もしかして……白掟優義徒が所在不明の六英雄カード二枚の内の一枚を所有している?
ユギト ライフ:10→9→8
「これでターン終了であります」
「容赦ないですね……ふふ、何か聞きたそうな顔をしていますけどダメですよ。そういう質問を出来るのは勝者の特権なのですから」
そう言ってターンが回ってきた彼はカウンターブーストを宣言し、困ったように人差し指で自分の顎をとんとんと軽く叩いている。
ユギト 第二ターン
ライフ:8
手札:4 ターンカウンター:4
「うーん……先ずは落ちを確認しましょうか。【万魔殿】の効果発動です」
五枚を確認し、今度は少し悩みながらも一枚を手札に加えている。
「……まあ、仕方ないですね。誓約サモン!底より響け、慟哭の叫び!【邪聖天ベリアル】!!」
戦場に降り立つのは白掟優義徒の"ギアスモンスター"……ハルバードを一回転させてからこちらに向けてくる少年天使は何かを思い出したように彼のデッキをハルバードで優しく触れていた。
「【ベリアル】の効果、場に出た時にデッキまたは墓地から使徒モンスターを手札に加えます。デッキから【神聖なる使徒ウリゾラス】を手札へ」
【万魔殿】の効果でダメージを与えられないからこれ以上動かない白掟優義徒……不意に近くで爆発音が聞こえ、恐らくは百火とあの金髪の男のファイトの影響で起きた風圧に吹き飛ばされる私。
「おっと……大丈夫ですか?」
心配そうな声を掛けられ、カッと頬が熱くなる……恥ずかしい、見下された、他の人間にこの私が心配された!
乱暴に服に着いた土埃を払い、すぐさま立ち上がって気恥ずかしさを誤魔化すように噛み付く。
「小官の心配をするよりも自分の心配をする方が良いであります!」
「ふふ、元気が良いのは良い事です。ではこれで私はターン終了です」
いちいち苛立つような言葉を選んでくるのが腹立たしい……乱暴にデッキからカードをドローしてターンを始める。
「小官のターン、ドロー!」
レジーナ 第ニターン
ライフ:10
手札:4 ターンカウンター:2
「アーティファクト【撥条機工砦HIRAGA】を発動!効果により【撥条エイプリル一号トークン】を破棄し、デッキから【撥条撃墜王エイプリル参式】を場に出すであります!」
【撥条撃墜王エイプリル参式】
黄 コスト:1 カラクリ
A:1 B:1
このモンスターは撥条カードの効果でのみ場に出せる。
一ターンに一度、自分の場にトークンが存在しない時に発動出来る。
A1、B1の撥条エイプリル一号トークン一体を場に出す。
このモンスターが場にいる時、自分はトークン以外では攻撃出来ずトークンでの攻撃宣言を二回行える。
牢獄の壁をぶち破り、違法建築されていくゼンマイ仕掛けの遊園地。そのメインストリートを真っ赤な鎧に身を包んだおもちゃの兵士が重々しい足音……というより最早駆動音を立てながら移動してくる。
立つことすら困難なようで足を止めた瞬間に倒れそうになっているのを【エイプリル壱式】が支えている。
「先ずは【KITERETU】にネジマキカウンターを一つ乗せるであります!そして【エイプリル参式】の効果であります!場にトークンが存在しないので【エイプリル一号トークン】を場に出すであります!ネジマキカウンターを追加!【KITERETU】自身の効果で追加して……ネジマキカウンターはこれで四つであります!」
ここで呼吸を整える……【モンザエモン】はまだ手札にはいない。だからこそ、ネジマキカウンターを貯めておくか使用するかの判断が難しい。
……カウンターブーストを多用している事から、重量級デッキなのは間違いない。
制圧される前に、一気に攻め落とす!!
「スペルカード【撥条の再利用】を発動するであります!」
【撥条の再利用】
黄 コスト:2 スペル・カラクリ
自分の場の撥条モンスター一体を破棄して発動する。
破棄したモンスターのコストと同じ数だけネジマキカウンターを自分の場のカードに置き、同じ数だけA2、B2の撥条二号トークン一体を場に出す。
この効果で場に出たトークンはターン終了時に破棄される。
【エイプリル壱式】がクレーンで摘まれたかと思うと、遊園地の裏側まで移動させられていく。そして耳を抑えたくなるような破砕音が響いたかと思うと、ツギハギだらけのパーツで構築されたおもちゃの兵士が出てくる……デモリッション、つまりはそういうこと。
「バトルであります!【エイプリル一号トークン】で【ベリアル】を攻撃!」
長銃を構えたおもちゃの兵士をくすんだ茶髪の少年天使がその手に持ったハルバードで縦に一刀両断する……生物相手ならばそれだけで動きは止まっていただろうが相手はカラクリだ。
トリガーに掛かったままだった指先が動き、そのまま【ベリアル】を撃ち貫く。信じられないという表情のまま崩れ落ちる少年天使の亡骸が破壊されたおもちゃの兵士の爆発に巻き込まれて消失していった。
「【撥条二号トークン】で攻撃!この時、【エイプリル参式】が場にいるので小官の場のトークンは二回攻撃が行えるであります!」
ツギハギだらけのおもちゃの兵士が見た目とは裏腹に俊敏な動きを見せて、直接白掟優義徒に殴り掛かる。
モンスターの力という物は人間に比べれば遥かに強い物だ。痛みや衝撃はライフが多い状況ならば少ないけども、それでもその直接攻撃を避けたり逸らすならまだしも正面から受け止めるのは普通ならば無理だ……《《普通ならば》》。
あろう事か、白掟優義徒は殴り掛かる【二号トークン】の一撃を自らの左掌で受け止めて見せた……もちろん、受け止めたからといってダメージが無くなる訳ではないけどもそれにしたってありえない光景だ。
「なっ……!?」
「いてて……流石に、機械は硬いですから受け止めると痛いですね」
そういう問題じゃない、この男はなんなんだ?
……昨夜も確か【マーチ弐式】でやむを得ず腹部を貫いたが今の彼はピンピンしている。
本当に……コイツは人間なのだろうか?
カード紹介
【幽獄の万魔殿ージェイルオブデモリエルー】
邪聖天の本拠地にして、彼らを閉じ込める監獄。
強烈なデメリットの代わりに、デッキトップ五枚からのサーチ及び墓地肥やしが行える。
第二効果で神聖なる使徒を手札に加えることが出来たらちょっとしたお祭りになる。




