「今はまだこのカードの出番じゃない」
ユギト ライフ:8→6→4
ライフ差はかなりある……速攻寄りのこのデッキはダメージは序盤に稼げるだけ稼がないといけない。
向こうの場は空っぽで"ギアスモンスター"もいないから動いてくるとしたらここから……どう来る?
「さて、そろそろ頑張らないとマズイですね……先程破棄された【ベリアル】の効果でデッキの【邪聖天の嫉妬レヴィアタン】を破棄してデッキから【天魔襲来】を手札に加えます。そして私のターン、ドローせずにカウンターブースト!」
ユギト 第三ターン
ライフ:4
手札:5 ターンカウンター:6
明らかに大型のモンスターを墓地に仕込まれて警戒態勢に入る私に対し、白掟優義徒はくすりと笑ったかと思うと二枚のカードを手札から切る。
「【堕ちたる導師】をサモンし、その効果でコストを1下げた使徒モンスター【神聖なる使徒ウリゾラス】をサモンします」
薄汚れた修道服を纏った女性の隣に、作り物めいた容姿の黄色がかった白いローブの男性が立つ……黒メインじゃなくて白との混合?慌てていたのは"ギアスモンスター"を間違えたせいで色の兼ね合いが悪くなった辺りだったのかもしれない。
「【万魔殿】の効果で手札を一枚デッキの一番下に送り、デッキの上から五枚を確認……一枚を手札に加えて残りを破棄しターン終了です」
……累計で十二枚の墓地肥やし。
実質的な攻撃不可という強烈なデメリットはあるけども、黒を混ぜられているのならばその墓地肥やしは脅威だ。
……アーティファクトに触れるカードを引けていないから放置せざるを得ないのが歯がゆい。
「小官のターン、ドローであります!」
レジーナ 第三ターン
ライフ:10
手札:3 ターンカウンター:3
引いたカードは……【モンザエモン】
正直、このファイト中は引けないと思っていたけども今はこのカードの出番じゃない。
「【KITERETU】自身の効果でネジマキカウンターを乗せるであります!【撥条兵士メイ壱式】をサモン!【KITERETU】にネジマキカウンターを乗せ、【メイ壱式】の効果発動!ネジマキカウンターを一つ取り除いて、デッキから【撥条兵士マーチ壱式】を手札に加える!その後、【メイ壱式】はデッキに戻る……そして手札に加えた【マーチ壱式】の効果発動であります!」
黄色のラインが入ったおもちゃの兵士が笛を吹き、青いラインの入ったおもちゃの兵士を遊園地のバックヤードから呼び出している……その呼び出されたおもちゃの兵士がさらに自分に似た姿の同僚を呼んでくるという連鎖。
トークンを呼び出してネジマキカウンターの収支はこれでこのターンは0……でも、五個までは貯めたので現状は悪くない。
「ネジマキカウンターを二つ消費して【撥条マーチ一号トークン】を場に出すであります!そして、バトル!!白掟優義徒に攻撃であります!」
長銃を構える【マーチ一号トークン】……引鉄を引く前に【ウリゾラス】がいつの間にか両の手に握っていた二丁拳銃が二度火を噴く。
一つ目の弾丸は長銃を撃ち抜き、爆発。そして二発目が【マーチ一号トークン】の頭部パーツを撃ち抜いてその機能を停止させた。
「【ウリゾラス】で防衛、この子は黄のモンスターからダメージを受けません」
「くっ……でも、ここでスペルカード【撥条報復機構TO-YAMA】を発動!!」
【撥条報復機構TO-YAMA】
黄 コスト:3 スペル・カラクリ
自分の場のモンスターが破棄された時に発動出来る。
以下の効果から一つを選んで良い。
自分の場に【ハルカゼ】と名のつくモンスターが存在するならば、全ての効果を選んでも良い
・自分の場と相手の場の差分だけデッキからカードを引く
・自分のライフと相手のライフの差分だけ自分の場にA:0B:1の【撥条零号トークン】を場に出す。
地面が二つに割れ、そこから腕に桜吹雪のマークが刻まれたちょんまげの着いたロボットがせり上ってくる。
ロボットがその手に持った、扇子を開くとそこに刻まれているのは『増産』の二文字……どこからともなく真っ白なラインの入ったおもちゃの兵士が六体場に出てくる。
「効果により【撥条零号トークン】を互いのライフの差分、つまり六体場に出すであります!これでターン終了!!」
大量のトークンは単なる数合わせ、次のターンには大量のトークンによってコストが軽減した【モンザエモン】を出して後は一気に攻め落とす。
そうプランを建てたのは良いけども……嫌な予感がしてならない。
「これはまた壮観ですね……でも、一手遅かったですね、ソコロワ嬢。私のターン、ドローせずにカウンターブースト」
ユギト 第四ターン
ライフ:4
手札:3 ターンカウンター:8
ターンカウンターが8となった瞬間に【ウリゾラス】が祈りのポーズを取る……そして彼の全身を覆い隠すかのように黄色い光の柱が天から降り注ぐ。
「ターンカウンターが8となった時、私の場の【ウリゾラス】は天使へと昇華するのです……覚醒しなさい【神聖なる大天使黄のウリエル】!!」
【神聖なる大天使黄のウリエル】
白・黄 コスト:8 使徒・天使
A:6 B:6
このモンスターは【神聖なる使徒ウリゾラス】の効果でのみ場に出せる。
相手の場または墓地に黄のカードが存在する場合一ターンに一度、デッキまたは墓地から天使モンスター一体を場に出せる。
このモンスターは相手の黄のカードの効果を受け付けず、黄のモンスターとのバトルでダメージを受けない。
このモンスターが場に出た時、コストが8以下になるように相手の場の黄のカードを封印する事が出来る。
光の中から現れるのは六枚の機械の翼を広げた【ウリゾラス】……否【ウリエル】が大量の銃火器を浮かべ、その全てが発砲を始める。
為す術もなく撃ち抜かれて色素を失っていく自軍のモンスターを私は呆然と見詰めるしか出来ない……
「【ウリエル】の召喚時効果です、相手の場の黄のカードをコストが8以下となるように封印します……ちょうどモンスターが八体、全て封印させていただきましたよ」
「そんな……」
「さらに【ウリエル】の効果発動です。デッキから天使モンスターである【神聖なる使徒ザドキエル】を場に出します」
【ウリエル】がその右手を分離させ…………分離って何、ロボなの?とにかく、右手だけをどこかへと飛ばすと桃色の髪の少女の服の襟を掴んだ状態で戻ってくる【ウリエル】の右手。
そっと彼女を降ろすと何事もなかったように手は元通りになるけども連れてこられた本人も私も腑に落ちないという気持ちで心が繋がった気がする。
「【ザドキエル】の効果でデッキから【神聖なる神使ルシフェリオン】を手札に加え、そのままサモンします」
あっという間に場に並ぶ天使の軍団……最後に出てきた仮面の天使の顔面を思いっきり平手打ちしていたように見えるのは多分事故なんだろう。
「これでターン終了です、さてさてどう返して来るか楽しみです」
私のターンになったけども腕は動かない……真っ黒な絶望が心を染め上げていた。
私のデッキにはこの状況をどうにかするカードがない……完全に手詰まりだった。
「ソコロワ嬢、貴女のターンですよ。ソコロワ嬢?」
声が遠くなる……急に頭痛がして、手で額を抑えて目を瞑る。
そして、痛みが引いてから目を開けると……金色が目に眩しい、ファンシーな世界が広がっていた。
「なんでありますかこれは!?」
メリーゴーランドに観覧車、ジェットコースター……まるでというかまさに遊園地、そして働いているキャストは見慣れた撥条モンスター達。
【撥条機工砦HIRAGA】……その中に私はいた。
「『なんでありますか』だぁ?見て分からねぇのか?遊園地だよ、遊園地!オレ様の傑作の一つであるなぁ!!」
……ガラの悪い男性の声が園内にあるスピーカーから響く。そしてキャスト達が一斉に道を作るように二列に分かれて並ぶと、そのど真ん中をふんぞり返ってやって来るのは顎髭が床に着きそうな程に長い老人……【モンザエモン】
「【モンザエモン】……なんで実体化しているでありますか?"ギアスファイト"はどうなったのでありますか!?」
「キンキン喚くんじゃねぇよガキ、ここはアレだ。テメェのイメージの中みてぇなもんだ。だから、現実じゃあ今も"ぎあすふぁいと"は続いてる」
『めんどくせぇけどなぁ』とボヤきながら、呑気に欠伸をする【モンザエモン】……つまりはここは力のあるモンスターが持つ固有の空間という事なのだろうか?
教本で見た覚えがある。
「むむ……なら、何故小官をここに呼んだでありますか?」
「これが最後の機会だからだ。次に負けたらオレ様はテメェの所を離れる」
はなれる……?はなれるって離れるという事……?
「な、なんで……?」
「仏の顔も三度までって言葉聞いた事ねぇか?今は試用期間なんだよ、テメェが"ぎあすふぁいと"で三回負けるまでのな」
そう言った【モンザエモン】が指を鳴らすと、先程整列していた撥条モンスター達が一斉にこちらに向き直って長銃を向けてくる。
「証を示せ、救黄神の救いが必要であるか否か?」




