「質問が多すぎますよ」
「私のターン、ドローをせずにカウンターブースト!さあ、第二幕の始まりです!」
カタル 第二ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:3
カタルさんの手札は潤沢、二枚の内容は確定してます……水奇術というテーマは初見ですが、アーティファクトをデッキや墓地から出してその効果で妨害しつつ展開……という感じでしょうか?
しかし、それだけのギミックではないかもしれません……デッキ外から手札に加えたカードも気になります。
「【水奇術の円形劇場】の効果を発動!第二演目は古式ゆかしいカードマジック!【水奇術演目TRUMP】!!」
手札のカード……位置的に先程手札に戻した【セリーヌ】を再び墓地へ仕込むと天井のスポットライトが私とカタルさんを照らしてきます。
眩しさに目を細めていると、彼の前口上が響きます。
「私が宣言した数字と同じコストのモンスターが彼の手札にあれば、どうぞ皆様拍手喝采を!宣言するのは4!!」
【水奇術演目TRUMP】
青・黒 コスト:1 アーティファクト・奇術団
一ターンに一度、1から10の数字を宣言する。
宣言した数字と同じコストのモンスターが相手の手札に存在すれば、このアーティファクトを破棄してそのカードを破棄する。複数枚存在するならばその内一枚を相手は選択して破棄する。
その後、自分の墓地から破棄したモンスターのコストより低いコストのモンスター一体を場に出す。この効果で出されたモンスターはターン終了時に手札に戻る。
コスト4のモンスターはいます。複数枚抱えた内の一枚、【カマエイドス】を破棄すればスモークが炊かれて【セリーヌ】が一礼をしながら姿を見せて再びカードをカタルさんに手渡しています。
「見事に的中!さらに【セリーヌ】のもう一つの姿をお見せしましょう……スペルカード【水奇術の真骨頂】を発動!!」
【水奇術の真骨頂】
青・黒 コスト:2 スペル・奇術団・怪盗団
自分の場の水奇術モンスター一体を選択し、発動する。
そのモンスターを手札に戻し、デッキ外から水奇術名称を除く同じ名称を持つモンスター一体を場に出す。
全ての照明が消え、何事かと辺りを見渡すと背後に気配を感じました。
次の瞬間、風が吹いたと思ったら手札が一枚だけとなりしかもそのカードが【カマエイドス】ではありませんか……嫌な予感がして墓地を確認すれば手札に抱えていたカード達がそこには存在しています。
そしてカタルさんの場には目元を黒いマスクで隠し、真っ白なタキシード姿となった【セリーヌ】がいます。
「華麗なるトリックスター【水奇術怪盗セリーヌ】の鮮やかな手際により、互いの手札の内容が墓地のカードと入れ替わったではありませんか!なんということでしょう!」
【水奇術怪盗セリーヌ】
青・黒 コスト:3 怪盗・奇術団
A:2 B:2
このモンスターはデッキに入れられない。
このモンスターが場に出た時に互いの手札と墓地がそれぞれ一枚以上ある時に発動出来る。
互いに自身の手札と墓地のカードを入れ替える。
このモンスターはターン終了時にゲームから取り除かれる。
「なるほど……その為の【TRUMP】でしたか」
「フフフ……さらに、手札に加わった【ESCAPE】と【TRUMP】を再発動してバトル!【怪盗セリーヌ】は今度は彼のライフを頂戴するようです!!」
アクロバティックな動きをしながらこちらに向かってナイフを投げてくる【セリーヌ】。直撃しそうな物は"ギアスディスク"で弾きましたが……まさか実体化しているとは思いませんでした。ヒヤヒヤしますよこれは。
ユギト ライフ:10→8
「これにて第二幕は終了……ターン終了と同時に【水奇術怪盗セリーヌ】はゲームから取り除かれます!」
バイバーイとこちらに手を振って煙のように姿を消す怪盗姿の【セリーヌ】……ゲームから取り除かれるというのはそのままの意味です。墓地に存在している訳でもなく、デッキにも、もちろん手札や場にも存在しない……個別にゾーンが有るとかそういう事もありません。
因みに元々デッキに加わっていたカードがゲームから取り除かれた結果、デッキ枚数が規定値より下回ったとしてもジャッジキルをされるとかそういう事はありません。
「さて、困りましたね……私のターン、ドロー」
「おや、カウンターブーストはしないと?」
「この状況でしても、【ESCAPE】の効果で展開とドローをされるだけですからね」
ユギト 第二ターン
ライフ:8
手札:2 ターンカウンター:3
彼の手札の内容は【新人】と【真骨頂】の二枚だけですからね……下手に展開するよりも手札を増やした方が良いです。
引いたカードは今はまだ使えないスペルカード……まあ、仕方ないですね。
「これでターン終了です」
「なるほど、それが彼の選択のようです!些か消極的なその姿勢……本当に裁刃徒を倒したとは思えませんね」
カタルさんの声のトーンがいつもの物に戻ります。
鋭く睨みつけてくる彼にくすくすと笑いながら答えてやります。
「父の使用するテーマは知っていましたが、貴方の使用する水奇術は初見ですからね……探り探りになるのも当然ですよ」
「初見?おかしいですね……幼い頃、何度もファイトしたと記憶していますが?」
「十年前の事故以前の記憶が曖昧でして……仕方ないですよね?」
小首を傾げて、真正面から目を見ますがカタルさんは私の視線から目を逸らさずに睨み続けることを継続してきます。
「曖昧と言う割には裁刃徒とファイトした事は覚えているようですが?……下手な芝居はそろそろ終わりにしたらどうです?優義徒様のフリをするのはやめませんかね?」
「……フリとは心外ですね。お父さんが色々してきたから、私はもう前の自分が分かりません。もはや植え付けられた優義徒としての自分しか残っていないというのに」
「……裁刃徒を傷つけたのはお前ですね」
今更過ぎる発言に思わず噴き出し、顔を隠すように左手で顔を覆いながら大笑いをしてしまいます。明らかに流れ的に私がしたと分かっていたのに改めて聞くなんて本当におかしいですね。
「アッハハハハ!!ええ、そうですよ!お父さんをあんなにしたのは私です、でもあそこまで酷いことになったのはお父さんの自業自得ですよ!……あんなになるまで刃向かって来るなんて、親が子供の為ならなんでもするってああいう事なんだなぁって見てようやく理解出来ましたよ」
「教団聖剣士達に命じて辻ファイトをさせているのは何故です」
「質問が多すぎますよカタルさん……でも、私は優しいので答えてあげます。"サモンエナジー"を集める為ですよ、アレは物を実体化……つまりは創造することに長けたエネルギーですからね。今度の全国大会でも沢山の強者サモナー達がいっぱいファイトをしてくれますからさらに集められる筈です」
「全国大会まで利用する気ですか……!」
「ええ、有効活用ですよ。どうせ結果が決まっているつまらない物ですし」
時期的にヒャッカくんが参加して優勝するでしょう……順調に実力を上げていっていますからね。
そして、優勝したヒャッカくんと私が再度戦ってこの物語は終わる……というのが流れでしょうね。一年の締めくくりに相応しいですし。
「何をする気かは分かりませんが、ここで止めさせていただきましょう。私のターン!第三演目を飛ばして最終演目とさせていただきましょう!!カウンターブースト!」
カタル 第三ターン
ライフ:10
手札:2 ターンカウンター:5
水柱が五本、カタルさんを覆うように立ち上ります。
スポットライトが照らす中、水を切り裂いて現れるのはカタルさんの"ギアスモンスター"です。
「誓約サモン!今宵の演目、フィナーレを飾るのはこの男!水奇術一座の花形スター【水奇術の座長アルセーヌ】!!!」
【水奇術の座長アルセーヌ】
青・黒 コスト:5 人間・奇術団
A:3 B:3
このモンスターが場に出た時、自分の場のアーティファクトを任意の枚数破棄してその枚数分カードを墓地から手札に加える。
自分の墓地に【水奇術演目TRUMP】【水奇術演目HYDE】【水奇術演目IMAGE】【水奇術演目ESCAPE】【水奇術演目FAKE】が揃っている時にゲーム外から【極大水奇術The THIEF】を手札に加える。
燕尾服を纏った細面の青年はステッキをくるりと一回転させると、場に出っ放しだったマジックボックスを一瞬で消失させました。
そして、代わりにステッキの先から花束が出たかと思うとそれをカタルさんの方に優しく投げました……投げられていく最中にそれは一枚のカードに姿を変えます。
「【ESCAPE】を破棄し、代わりに【真骨頂】を手札へ!さあ、文字通りのメタモルフォーゼ……瞬き厳禁の早変わり!」
舞台の真ん中にいた【アルセーヌ】にどこからともなく投げつけられるナイフの雨。その全てが突き刺さり、ハリネズミのようになってしまった姿に思わず息を飲みます。
ですがそう思ったのもつかの間、全てのナイフが舞台上に甲高い音を立てながらこぼれ落ちていきます。
【アルセーヌ】の姿も見えずに、キョロキョロと辺りを見渡しますがどこにもいません。
「さあ、出番ですよ【水奇術の大怪盗アルセーヌ】!!」
【水奇術の大怪盗アルセーヌ】
青・黒 コスト:5 怪盗・奇術団
A:3 B:3
このモンスターはデッキに入れられない。
このモンスターが場に出た時、自分の手札を一枚、場のアーティファクトを一枚破棄して発動出来る。
自分の墓地から水奇術モンスター一体を場に出し、このモンスターはこのターン二回攻撃宣言を行えるようにする。
このモンスターはターン終了時にゲームから取り除かれる。
スポットライトを向けられ、客席の最上段にいるのは真っ白な燕尾服を纏い、同じく真っ白な仮面を被った【アルセーヌ】の姿にどことなく、【ルシフェリオン】を思い出して後ろを振り返ってしまいます。
彼が指を鳴らすと、スポットライトの一部が消灯してから水柱が立ち上り……その中から【セリーヌ】が姿を現します。
「【大怪盗アルセーヌ】の効果により、場のアーティファクトを一枚破棄して墓地から水奇術モンスター一体を場に呼び戻します……この効果を使用した【大怪盗アルセーヌ】はこのターン、二回攻撃が出来ます!」
「これはまずい……」
「バトル!【セリーヌ】そして【大怪盗アルセーヌ】で攻撃、そしてこれでフィナーレです!」
投擲される投げナイフの雨、そしてその間を掻い潜ってこちらに走り込む【アルセーヌ】
その手に持ったステッキによる殴打……初撃は止められませんが、二撃目は真っ白な羽根が受け止めます。
「っ!何が起こったのです……!?」
「……破棄されていた墓地のスペルカード【神聖なるご加護を】の効果です。残りライフが5未満の時に直接攻撃を受けた時一度だけ、このスペルを墓地からデッキの一番下に戻す事でその攻撃を無効にします」
【神聖なるご加護を】
白 コスト:3 スペル・使徒
このスペルはファイト中に一度だけ、墓地からデッキの一番下に戻す事でも発動出来る。
自分の残りライフが5未満の時に直接攻撃を受けた時、その攻撃を無効にする。
その後、自分の手札または墓地から神聖なるモンスターを任意の数だけデッキに戻して次にサモンする使徒モンスターのコストをその数だけ減らす事が出来る。
【神聖なるご加護を】の追加効果の使用を宣言して、墓地から【ザドキエル】手札から【カマエイドス】を手札に戻していく私に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらカタルさんはターンの終了を宣言しました。
……その後は【ルシフェリオン】を誓約サモンし、制圧。
青のスペルで【ルシフェリオン】が退かされますが【ルシフェル】へと姿を変えさせた所でカタルさんは投了しました。
「ここでやめるのですか?」
「そのカードを排除する手段が無いですし、水奇術モンスターはAが4以下のモンスターしか存在しません」
それは……詰みですね。
私の哀れみの視線に気づいたのかメガネを掛け直したカタルさんは鼻を鳴らします。
「嫌になりますよ本当に……美禍がそのモンスターを手に入れてから勝てなくなりましたし」
「…………美禍、ですか」
多分、優義徒の母なのでしょうね。
父と【ルシフェリオン】が口走っていたのを聞いた覚えがあります……その人について訪ねようとしますがカタルさんは足早に去っていきました。
……ところで、何故あの人は私にファイトを仕掛けてきたのでしょうかね?
雨が降り続く中で思考を巡らせますが、寒気を感じたと同時にくしゃみが出てしまいます……今は考えるより先に雨宿りをしましょうか。
カード紹介
【大怪盗アルセーヌ】
水奇術一座の団長の真の姿、その正体は闇夜を駆ける義賊。
効果は派手だが、水奇術の低Aとコストの重さがネック。
富者からのみ奪い、不正を暴く姿は弱者の守護者とも言われていたが……今は行方知れずである。




