「大好きな父親に敵意を向けられるなんて」
「……私のターン、ドローせずにカウンターブースト」
裁刃徒 第二ターン
ライフ:10
手札:3 ターンカウンター:4
ライフは正直危険域ですね……あと二点押し通されれば【メタトロン】が出てきます。
少し手札を眺めていた父は一枚のカードを切ります。
「互いの場にモンスターがいない時にこのスペルは発動出来る。スペルカード【極彩色の未来】」
【極彩色の未来】
赤・青・緑・黄・白・黒 コスト:4 スペル
このスペルは互いの場にモンスターがいない時に発動できる。
全てのプレイヤーは手札が五枚になるようにカードをドローし、五枚以上持っているプレイヤーは五枚になるように手札を破棄する。
「っ……やってくれますね」
「互いのプレイヤーは手札が五枚になるようにドローする……」
「……【黒き神の印】がある限り、私はドロー出来ません」
一気に補充される手札……バーンデッキ相手ですと向こうの手札はそのまま火力と考えないと一気に削り切られます。五枚もあれば何かしらのバーンカードが来る筈です。
「【焦土天機の哨戒機】をサモン、効果によりデッキの上から五枚を確認し、その内一枚を手札に加える」
【焦土天機の哨戒機】
白・赤 コスト:4 天使
A:0 B:4
一ターンに一度このモンスターが場に出た時、または他の焦土天機モンスターが場に出た時に発動出来る。
デッキの上から五枚を確認し、その中から一枚を手札に加えて残りをデッキの一番下に送る。
一ターンに一度、自分の手札を一枚破棄する事で全ての相手プレイヤーに一ダメージを与える。
デッキのカードを確認した父は直ぐさま一枚を手札に加えて、残りをデッキの下に戻しました……よほど欲しかった札だったのでしょう、他のカードを確認してませんでしたよあれは。
「さらに、手札を一枚破棄して全ての相手プレイヤーに一ダメージを与える」
【哨戒機】はプロペラの付いた飛行機の姿からボーイッシュな印象の機械天使の姿に変わると、父から投げ渡されたカードを光の玉に変換してこちらにぶつけてきました。
ユギト ライフ:6→5
……ミシリと体の奥から嫌な音が聞こえましたが、痛みはやはりありません。
そんな事よりも父が破棄した手札は先程サーチしたカードでした……破棄する事で意味があるカードが焦土天機にありましたっけ?
「……ターン終了」
「それでは私のターン、ドローせずにカウンターブーストです」
ユギト 第三ターン
ライフ:5
手札:5 ターンカウンター:5
思いのほか向こうの行動は重いです……今の内に場を整えましょう。
「誓約サモン、天の福音を響かせよ、神の愛し子!【神聖なる使徒ザドキエル】!!」
【ベリアル】の散る姿に思う所があったのでしょう、真剣な眼差しで場に現れた【ザドキエル】が歌声を響かせるとデッキがほのかに光りました。
「【ザドキエル】の効果発動です、デッキから【神聖なる信徒ラファルガ】を手札に加え、そのまま【黒き神の印】の効果でコストが3減った【ラファルガ】をサモン!」
最初に現れたのは緑がかった白のローブを来た禿頭の老人【ラファルガ】、その手に持った身の丈ほどの大きさの棍棒を地面に向かって叩きつけると緑色の波動が広がります。
「【ラファルガ】の効果でターンカウンターを一つ増やします。そして、神聖なるモンスターが場に出たので【ザドキエル】の効果により【神聖なる使徒レミュリエス】を手札に加えます」
これでターンカウンターは6、減った分は取り返せました。
「コストが3減った【神聖なる使徒ミカエリス】をサモン、相手の場に赤のモンスターがいるので相手の場の全てのモンスターと相手プレイヤーに二点のダメージを与えます」
深紅の髪を振り乱して【ミカエリス】が灼熱の炎を纏った剣を振るいます。炎の波が【哨戒機】と父を飲み込みますが、直ぐに振り払われます。
裁刃徒 ライフ:10→8
「っ………」
「バトルです、【ミカエリス】で【哨戒機】を攻撃」
炎から逃れはしたものの深い火傷を負った【哨戒機】に追撃の刃が迫ります。
「……スペルカード【大火傷】を発動、【ミカエリス】のAを0にする」
起死回生を狙って放たれた光弾が【ミカエリス】の剣を砕きます。愛用していた剣を折られたのがショックなのかやる気を失ったように【ミカエリス】は肩を落としながらこちらの場に帰ってきます。
「ふむ、でしたら【ラファルガ】で【哨戒機】を攻撃します」
ホッとボーイッシュな機械天使が息を吐いた瞬間を見逃しませんでした。
稲妻のような速度で中空を駆け抜ける【ラファルガ】の棍棒がその顎先をかち上げ、無防備になった腹部に回し蹴りが叩き込まれます。くの字に曲がった体のまま地面に叩きつけられる【哨戒機】……【ラファルガ】も歳を考えずに行った無理な挙動に呼吸を乱していますね。
「ターン終了です」
ライフ差は少し縮ませましたが、予定よりも少ないです。
「……私のターン、カウンターブースト」
裁刃徒 第三ターン
ライフ:8
手札:4 ターンカウンター:6
ターンカウンターが6ともなれば大体のデッキの切り札級カードが飛んできます……
父のデッキの主な大型モンスターは三種、その内【ケルビム】は破棄して【メタトロン】は"ギアスモンスター"として存在しています……残る一体【焦土天機の殲滅機】はまだ見ていませんが……下準備は終わっていますので出されても問題はありません。
……覚えている父のデッキのままならば
「墓地の【偽りの神聖なる邪聖天魔ルシファー】の効果発動」
「!?」
地面が激しく揺れ、地割れが起きたかと思うとそこから黒焦げの翼をはためかせて【ルシファー】が場に降り立ちます。
邪聖天の名を冠しているという事は……以前に【レヴィアタン】が言っていた言葉を急に思い出しました。
──流石は《《あの方》》の召喚者だ
それに事ある毎に【ルシフェリオン】は私のことを召喚者と呼んでいました。なるほど、伏線回収というやつですね。回収まで長かったですが。
「私のライフの半分を支払い、墓地のこのモンスターを場に出す」
【偽りの神聖なる邪聖天魔ルシファー】
白 コスト:8 英雄・天使・使徒
A:4 B:4
このモンスターは自身の効果または【神聖なる神使ルシフェリオン】の効果でのみ場に出せる。
このモンスターが墓地にいる時に発動出来る、自分のライフを半分(切り上げ)支払うことで場に出せる。この効果は相手ターンにも発動でき、このモンスターが破棄されたターンには使用出来ない。
一ターンに一度、自分のライフを半分(切り上げ)支払うことで発動できる。コスト8のモンスターを手札または墓地から場に出せる。
自分のライフが四点以下の時、このモンスターはカード効果では場を離れず、戦闘でダメージを受けない。
このモンスターが場に存在する限り、自分は敗北しない。
このモンスターの効果は無効にされない。
裁刃徒 ライフ:8→4
忌々しい輝きを放つ【ルシファー】は茫洋とした瞳のままゆっくりと右手を上げると空気が震えた。
「【ルシファー】の効果発動、私のライフを半分支払うことで手札またはデッキからコスト8のモンスター一体を場に出す……戻ってこい【ケルビム】」
空間をねじ曲げるように右掌が回されたかと思うと、初めからそこに存在したように大型の機械天使……【ケルビム】が彼のすぐ近くにありました。
そして、ライフの半分という私にとっては慣れた対価を支払った父の体が崩れ落ちます。
裁刃徒 ライフ:4→2
「ぐ、ぅ……」
たかが半分、されど半分……外傷とはまた違う、その苦しみは例えるならば体の芯を握られて何かを無理矢理絞り出されるような痛み。人の身では……いえ、命あるものならば耐える事が出来ない事の多いその痛みを味わっても尚、父は悲鳴をあげること無く呻き声を上げるだけに留まっていました。
その精神力は素直に褒め讃えたいものです。
「……これを、美禍とお前は受けていたのか」
「結構痛いですよねそれ……無理せずに座っても良いのですよ」
「…………断る」
強がりとしか思えない言葉を吐いた父が脂汗を滲ませながらも立ち上がります……不思議です。
「そこまでして私を封じ込めたいのですか……」
「……お前のような存在を自由にさせる訳にはいかない」
「……それは、神聖制約教団の総主教としてですか?」
「………………無論だ」
いつもよりも間の取られた父の言葉はいつもと変わらない感情の無いものでした。
ギュッと胸の奥が痛みますが……気のせいでしょう。それに、私のような存在にするには当たり前の正しい行動です、そうなのですが、しかし
「……この体は貴方の息子の物でしょう?それでもよくそんな事が言えますね」
「お前が、それを言うか……」
「言いますよ、だって可哀想ではありませんか……大好きな父親に敵意を向けられるなんて」
心の底から同情しますよ優義徒には……でも、そうなってしまった原因の半分くらいは私ですし……いやでも、そうしないといけなかった理由があった筈なのです……覚えていませんが。
「可哀想な優義徒……彼が生きていたらなんて言うのでしょうか」
「もういい、黙れ……【ケルビム】の効果発動。お前のターンカウンターを一つ取り除き一ダメージ、そして私のライフを1回復する」
ユギト ライフ:5→4
裁刃徒 ライフ:2→3
ターンカウンター事焼き払われます……何度も爆炎を見てきましたが慣れませんね、まだ体が震えます。
じりじりと追い込まれては来ましたが、向こうもまたライフ半減効果の乱用でそのライフは危険域になっています。
「バトル、【ルシファー】で【ザドキエル】に攻撃」
黒い光を束ね、槍の形にしたソレを【ザドキエル】に投げつけてくる【ルシファー】
それを止めようと【ザドキエル】が咄嗟に貼った光の防壁は紙のように容易く破れ、彼女の体を光が貫きます。
最後に小さな声で呟いた言葉の内容は聞き取れませんでしたが……私の手札の一枚が熱を持ちます。
「【ザドキエル】が場を離れた事により効果発動、手札から【神聖なる使徒レミュリエス】を場に出します」
白い髪の少女が怒りの感情を剥き出しにして場に出てきます。怒りのままに振るわれたその力により【ケルビム】の色素が失われ、封印されました。
「【レミュリエス】の効果で【ケルビム】を封印します!」
「ならばターン終了だ」
追撃は防ぎましたが……さて、ここが勝負です。
「私のターン、カウンターブーストです」
ユギト 第四ターン
ライフ:4
手札:2 ターンカウンター:7
「スペルカード【神聖なる再臨】を発動します、【ラファルガ】を手札に戻してデッキから【神聖なる使徒カマエイドス】を場に出します。そして【ラファルガ】を再召喚して効果発動!」
鐘が鳴り響く中、【ラファルガ】と入れ替わって現れたのは黒ずんだ白いローブを着た【カマエイドス】……そして直ぐさま帰ってきた【ラファルガ】に怪訝そうな表情を浮かべますが直ぐに正面を向きます。
「ターンカウンターを一つ増やし……覚醒しなさい、神聖なる達!!」
降り注ぐのは四色の光の柱。
【ミカエル】【ラファエル】【レミュエル】【カマエル】の四天使が各々の武器を構えて降臨します。
「【レミュエル】の効果で【ルシファー】を封印します」
「【ルシファー】は私のライフが4以下ならばモンスター効果を受け付けない」
「くっ!しかし【ラファエル】の効果で私のライフを8回復!」
ユギト ライフ:4→12
このまま押し切れる、そう思った瞬間に父の手札が切られます。
「スペルカード【焦土の福音】発動」
【焦土の福音】
白・赤 コスト:4 スペル・天使
このスペルは焦土天機カードとしても扱う。
相手の場にモンスターが二体以上一度に出た時に発動出来る。
自分はモンスターを一体サモン出来る。
その後、相手プレイヤーは出したモンスターの数だけ場、手札、デッキのいずれかよりモンスターを墓地へ破棄しなければならない。
「相手の場にモンスターが二体以上場に出された時、私はモンスターを一体サモン出来る」
「まさか……」
「神聖なるモンスター……そのエース達の覚醒は場に出す効果だ、何度そのデッキと戦ってきたと思う?対策は出来ている」
間違いなくここで出されるのはあのモンスターしかありません……!
「誓約サモン、君臨せよ【神聖なる焦土天機メタトロン】」
ゆっくりと場に出てくるのは超級のモンスター【メタトロン】……その翼の炎が激しく燃え盛りながらこちらに向けられます。
「……そしてお前は場、手札、デッキのいずれかからモンスターを場に出した数だけ破棄しなければならない」
「……デッキから【神聖なる使徒ガブリリス】、【神聖なる使徒ウリゾラス】、【邪聖天の嫉妬レヴィアタン】、【邪聖天の色欲アスモデウス】を破棄します」
……これは、行けるか?
「場に出た【ミカエル】の効果を発動させます」
「その前に【メタトロン】の効果だ、【カマエル】を封印し他のモンスターを全て破棄してもらおう」
「【ミカエル】と【レミュエル】はそれぞれ白と赤のモンスター効果を受けません」
「だが、【ラファルガ】は効果を受ける。そして一ダメージだ」
ユギト ライフ:12→11
先程までの比じゃない炎の熱が私の身を襲います……やはり、私は炎が苦手なようです。
「ですが構いません、【ミカエル】の効果で相手の場のモンスター全てに二ダメージを二回与えます、やりなさい!!」
二度振るわれる炎熱の波が【ルシファー】をすり抜けて全て【メタトロン】に襲い掛かります……これで確殺圏内です!
「バトル!【ミカエル】で【メタトロン】に攻撃です!!」
超級の天使である【メタトロン】も赤の力を持っているならば【ミカエル】にとっては敵ではありません。
その炎全てを奪い取り、一本の大剣としたまま一撃で【メタトロン】を真っ二つに断ち切りました。
「【レミュエル】でダイレクトアタック!」
そしてもはや守る者の居なくなった父の体を光が何度も貫きます……ライフは残り3でしたしこれで……え?
裁刃徒 ライフ:3→-3
"ギアスファイト"が終わらない?
カード紹介
【神聖なる焦土天機メタトロン】
焦土天機モンスターの統括機にして、最強の機械天使。
高コスト、高ステータス、強力な効果と分かりやすく強い一枚だが、相手プレイヤーへの攻撃が行えないデメリットがある。
このモンスターを補佐する三体のモンスターが存在しており、それらと同時に使うことで強烈なコンボが発動するらしい




