「相応にデメリットも大きいですけどね」
"ギアスディスク"にセットされたデッキを操作し、"ギアスモンスター"の変更と何枚かのカードの入れ替えを行います……今は【ルシフェリオン】を十全に扱える自信がありません。
「「"ギアスファイト"レディセット」」
私が選択した"ギアスモンスター"は【神聖なる使徒ザドキエル】……消去法で選んだのですが本人はやる気十分なようでブンブンと腕を回してからファイティングポーズをしていますが……貴方、A0なの忘れていませんか?
対する父の"ギアスモンスター"は【神聖なる焦土天機メタトロン】、こちらの神聖なるモンスターと同じ名前を冠している超級のモンスターです……【ザドキエル】の方も格が違う事に気づいたのかやる気満々だった姿はどこへやら……今は私の背に隠れています。
「……いつものモンスターではないのか」
「ええ、そういう気分なので」
「気分か……負けて後から文句は言うまいな?」
「えー、言おうと思っていたのに……冗談です、笑ってください」
父の眉間のしわがさらに深くなりましたね……小粋なジョークのつもりだったのですが。
ユギト【■黒神の使徒】
VS
白掟 裁刃徒【焦土天機実行】
「「スタートアップ」」
先行は……私ですね。
手札はかなり重たいです、辛うじてモンスターは出せますが妨害札がありません……どうしましょうかねこれ。
「私のターン、ドローせずにカウンターブーストです」
ユギト 第一ターン
ライフ:10
手札:5 ターンカウンター:2
「【浄罪の白鴉】をサモン、これでターン終了です」
白い羽のカラスがちょこんと【ザドキエル】の肩に止まります。そのカラスの頭を撫でようと手を伸ばす彼女の指をカラスはつついて追い払いますね……かなりのショックを受けたようで【ザドキエル】は涙目で指を抑えていますね。
「……私のターン、こちらもカウンターブーストだ」
裁刃徒 第一ターン
ライフ:10
手札:5 ターンカウンター:2
「アーティファクト【焦土天機律動】を発動。その効果でコスト2の【焦土天機の炸裂機】をデッキから場に出す」
……一番出されたくないモンスターが最速で着地しそうですね。
この部屋は洗脳装置のサイズの関係で天井が高く設計されていますが、その天井に当たるギリギリの位置に燃え盛る炎の輪が展開されてそこから【焦土天機の炸裂機】が出撃してきます。
「【焦土天機の炸裂機】の効果で【焦土天機律動】を破棄して互いに一ダメージ……破棄された【焦土天機律動】の効果でデッキからコスト8の【焦土天機ケルビム】を場に出す」
ユギト ライフ:10→9
裁刃徒 ライフ:10→9
ばら撒かれる爆弾は敵味方の区別なく降り注ぎます……爆炎に怯みそうになりますが、心配そうな【ザドキエル】が背をポンポンと撫で叩いてきて何とか醜態を晒さずに済みました。
父の方は慣れているようで火に炙られようとも眉ひとつ動かしません。そして炎の中から一番見たくない巨大な機械天使がゆっくりと歩いてきます。
「【焦土天機ケルビム】の効果発動、全ての相手プレイヤーのターンカウンターを一つ取り除き、その数だけ全て相手プレイヤーにダメージを与え、私のライフを回復する」
身構えた瞬間に、【ケルビム】の目が光りました。
放たれた閃光は次の瞬間爆発を起こします。ターンカウンターの減少効果は早期にソレを貯めてしまいたい私にはかなりの向かい風となります……だからこそ、父はこの勝負をうけたのでしょう。八割……いえ、九割がた勝てるのですから。
ユギト ライフ:9→8
裁刃徒 ライフ:9→10
「バトル、【焦土天機の炸裂機】で【浄罪の白鴉】を攻撃」
広範囲にではなくたった一羽のカラスに向けて放たれる爆弾の雨。一つ二つはかわせても三つ四つ……十、二十と放たれるそれは避けきれない。真っ白だった羽根は黒焦げとなりながらも私の手に降りてきます。
「【浄罪の白鴉】は破棄された時に使徒カードを手札に加えます。私は【邪聖天の強欲マモン】を手札に加えます」
邪聖天カード……今は触れても何も変わったような気はしません。
「…………【ケルビム】でプレイヤーに攻撃」
先ほどは私の場に向けられた視線が直接私に向けられました。
瞬間、生じた爆風に二〜三回地面を転がされますが痛みは少ない……というよりは無いですね。
服についた砂埃を払い、立ち上がって微笑んでみせれば父は気に食わないようで不機嫌そうにターンの終了を告げてきます。
ユギト ライフ:8→6
「私のターン……ドローをせずにカウンターブーストです」
ユギト 第二ターン
ライフ:6
手札:5 ターンカウンター:3
出来ることならばこのターンで【ケルビム】を処理したい所ですね……出たとこ勝負はあまり好きではありませんが、仕方ありません。
「【堕ちたる導師】をサモンします」
【堕ちたる導師】
白・黒 コスト:3 信者
A:2 B:2
このモンスターが場にいる限り、手札の使徒カードのコストは1少なくなる。
この効果は同名モンスターが複数体存在しても重複しない。
薄汚れた修道服を着た、見覚えのある金髪の少女が祈りを捧げた体勢のまま現れます。閉じられていた彼女の瞳が開くとドロリと濁りきった暗い瞳が天へと向けられます。
「スペルカード【届かざる祈り】を発動します」
【届かざる祈り】
黒 コスト:2 スペル・犠牲・使徒
手札の使徒カードを一枚破棄する事で発動出来る。
デッキの上からカードを二枚見て、一枚を墓地へ破棄しもう一枚をデッキの一番下へ送る。
手札からコスト8以上の使徒カードを破棄した場合、デッキの一番下に送る代わりに手札に加える事が出来る。
「【邪聖天の強欲マモン】を破棄して先ずはデッキの上のカードを二枚確認します」
恐る恐るめくった二枚のカード、一枚は【邪聖天の怠惰ベルフェゴール】……今手札に来られても困りますねこの子は。
もう一枚は……ふふ、面白いことになりそうですねこれは。
「【邪聖天の怠惰ベルフェゴール】を破棄し、コスト8以上の使徒カードを破棄したのでアーティファクト【黒き神の印】を手札に加え、そのまま発動します」
【黒き神の印】
黒 コスト:4 アーティファクト・神器
このアーティファクトが存在する限り、自分の墓地の使徒モンスターの数だけ、手札の使徒モンスターのコストを下げる。
更に、邪聖天モンスターが墓地に存在するならば、自分の手札の
コスト4以上の黒のモンスターのコストをその数だけ下げる。
このアーティファクトはデッキに一枚しか入れられず、場に存在する限り自分はカードをドロー出来ない。
私の影の中から出てくるのは奇妙な形の箱に収められた黒光りする宝石……それに手をかざせば手札の一つが怪しい光を放ちます。
「このアーティファクトが存在する限り、私の手札の使徒モンスターのコストは墓地の使徒モンスターの数だけ少なくなり、黒のモンスターは邪聖天モンスターの数だけコストが下がります」
「……つまり、黒の使徒モンスターのコストは大幅に減るというわけか」
「ええ、相応にデメリットも大きいですけどね……【黒き神の印】の効果によりコストが4減って0となった黒の使徒モンスター【邪聖天ベリアル】をサモン!」
【邪聖天ベリアル】
黒 コスト:4 使徒・天使
A:3 B:1
このモンスターがサモンされた時または邪聖天モンスターか信者モンスターが破棄された時にデッキまたは墓地から天使または使徒モンスター一体を手札に加えることが出来る。
このモンスターが場を離れた時、手札またはデッキから邪聖天モンスター一体を破棄する事でデッキから【天魔襲来】を一枚手札に加える。
くすんだ茶色の髪をなびかせて降りてくるのは黒い翼の少年天使……私の背後に隠れていた【ザドキエル】に気がつくと指を指して笑っています。それに対して【ザドキエル】の方も頬を膨らませて私の背中を八つ当たりでポコポコと殴ってきますが全く痛くないので微笑ましい光景として受け入れましょう。
「【ベリアル】の効果を発動させます、デッキから使徒モンスターである【神聖なる使徒ミカエリス】を手札に加えます。そしてバトル、【堕ちたる導師】と【ベリアル】で【ケルビム】を攻撃します」
三度目から放たれる怪光線、爆炎による煙が晴れた時に見えたのは【堕ちたる導師】が祈りを捧げたまま一人で消えていく姿……【ベリアル】はその手に持ったハルバードを用いて天高く飛び上がっていて、第四射が来る前にその頭部に分厚い刃を叩きつけました。
そのまま【ベリアル】を巻き添えにするように爆発が起こり、場には誰もいなくなりました。
ほんの少し寂しそうな表情を浮かべる【ザドキエル】ですが、その置き土産のカードを見つけると私の方に拾って手渡してきました。
「【ベリアル】が場を離れたのでデッキから【邪聖天の暴食ベルゼブブ】を破棄し、【天魔襲来】を手札に加えます。これでターン終了です」
「……場をガラ空きにするか」
「下手に置いても焼かれるだけですからね……そちらこそ【ケルビム】を失ったのは痛手ではないです?」
「…………ただのモンスター一体を失った程度で痛手になるものか」
淡々と言い放つ父の言葉にその背後の【メタトロン】の翼である炎が少し揺らめいた気がしました。
カード紹介
【黒き神の印】
黒の神にまつわる神器の一つ。
二重のコスト軽減効果により、黒の大型の使徒モンスターが場に出やすくなるがデメリットとしてドロー封じがある。
大型のモンスターという確定した未来を引き寄せる代償として、ドローカードという無限の未来を切り捨てる黒の神の臆病な性質を表した一枚。




