【受賞記念】28-8.5.女子三人寄れば姦し仔猫
謎のアンケート3位、28-8と28-9の間
「おや?」
シアさんがくてっと首を傾げた。
いや、その、えっと、……え?
「あたしリーダーにだる絡みしたらふつーに『じゃー仕事するんでおつかれー』ってぶった切られたけど」
「だる絡みwww」
「それはそれで何したんですか……」
だる絡みって……
「いやこう、あんまりに錬金が話題になっちゃって……いやそれはいいじゃん!セリスの方よ」
「それはそうですね。え、なんか通話切るとか言われました?」
「え?ええと……その、私が眠そうな声だったんだと思いますが、寝ていいんだよ、みたいなことは……」
かなりこう、喋り口調が怪しかった自覚はあるので、普通に心配されていたとは思う。けど、通話切るみたいなことは言われなかったし、実際切られてもいない。
「ほうほうほうほう」
「おやおやおやおや」
「な、なんですか……」
二人が楽しげに視線を交わしている。
「これはあるんじゃないか?」
「これはありますよ」
「なにが……」
言いたいことは、分かるんですけれど、それはちょっと、少女漫画の読み過ぎではないかと……
「実際さー、セリスはどうなの?」
「どう……とは……」
「リーダーのこと。年の差とか」
「年の差……常に共通の話題が隣にあるので、あまり年の差を感じたことはないですね。収入差を感じることはありますが……」
私の持っている勉学以外の話題がEFOとギルド関連に著しく偏るので、話題が合わないと感じることはない。
ゲーム内ではアバターだし、リーダーさん自身実年齢より少し若く見えるので、そういう意味でも年齢差を感じることが少ない。
歴然としたお金の差は感じている。主にアバターの課金額から。
お仕事のことで話すときは雰囲気が変わるけれど、大人の方だと思うと同時に、あれは多分年齢によるものではないとも感じている。きっと十年前でも仕事のときはあの雰囲気だったのではないだろうか。
「ほうほう」
「えー、じゃあ、ギルド的にはどうなんです?」
「ギルドとして、とは?」
「こう、ほら、ギルド内恋愛みたいなのって揉めたりするのかなって」
「もめ?」
「ごと?」
「あ、はいサザンクロスは特殊ですね」
ボス戦の二大柱であるメイン盾とメイン火力がカップルで、パーティの目とメインヒーラーが御夫婦のギルドですからねぇ……。よそのギルドだとあるんですかねえ、そういう揉め事……。
「まー、あたしたちが付き合う時にはちょっとあったけど……」
「あれはあれで、対外的には完全にそういうコンテンツとして消費されてますからねぇ」
「あれって話題作りじゃなくてほんとに揉めたんです?」
「色々すれ違っただけだからもはや揉めてすらない」
ニンカさんがこの話題でもあっさりと返してのけて、それはそれでちょっと寂しさを覚えてしまう。
「むぅ……」
「んだよ」
「ニンカさんが真っ赤にならなくなっちゃいました」
「はったおすぞ」
はー。あの騒動からもう一年ですかー。そーですよねーもう告白騒動の思い出話で顔を真っ赤にして逃げ出すニンカさんはいらっしゃらないんですよねー。はー。
「ということは、ということはですよ。いよいよセリスはどうするんです?」
「どうって……」
どうもこうもないですけれども。
「いつ告白するんです!?」
「いやシアさん何言って……」
「もーギルド内も半公認みたいな感じだもんなー」
「やっぱそうなんです?!」
「いや、そんなことは」
「だってリーダーが拒否ってないもん。そーなんでしょみたいな」
「ニンカさんちょっと待って」
「ロイドさんは?」
「ロイドさんこそ最近ちょっと場所空けてんじゃん」
「きゃー!」
「ニンカさんちょっとまって……シアさんも止まってください……」
まって、本当に、本当に何の話を……
「それはもういよいよセリスが腹をくくるだけなのでは?」
「ほんそれ」
「いやっ、ちょ、ちょっと」
「リーダーからはさー、もしかしたら言いにくいかもじゃん?」
「そーなんです?」
「立場的にはどうしてもリーダーが上役だからさー。ギルドのトップで、配信的には雇ってる側だし。そうすっとパワハラ?っぽくならん?」
「あーなるほど、俺の言うことを聞け〜げへへ〜みたいな」
「…………そんなこと、ないですよ」
なんですか「げへへ」って……。リーダーさんはそんなことしないです。
「ほー」
「へー」
「な、なんですか……」
お二人が楽しそうににこにこ……にやにやと顔を見合わせている。
「いやー」
「そんなことないんだな〜ってだけですよぅ〜」
「……」
「いますぐいってこーいって言いたいんですけど、今いないんですよねえ」
「それな〜」
「…………」
「空港で出待ち?」
「いやー、流石にきついって。空港広いし」
「………………」
「やっぱバレンタインじゃん?」
「やっぱバレンタインですかね?どうですかセリス、今年こそ!」
「……………………」
システムコンソール。ログアウト。いますぐログアウトしますか。はい。
瞬きをするようにふつりと視界が暗転し、ログアウトメッセージが表示される。
VRポッドからベッドに転がり込んで、布団を頭まで引っ張り上げる。
冬の室内の布団が、妙に頬にひんやりと感じた。
□■□■□■□■□■□
「ありゃ」
「ありゃりゃ」
ニンカと楽しくおしゃべりをしていたら、セリスがログアウトしてしまった。
直後に私の方にギルド退室メッセージが届く。
ありゃありゃ。
「ちょっといじりすぎましたね」
「そーね。ま、たまにはいいっしょ」
いいんだ。まあ、一応ごめんねメッセージは入れておこう。
「ま、あたしも落ちるわ」
「あ、はい、きてもらってどーもです。一応ニンカからもフォローしといてもらっていいですか?」
「あいよー。ログアウトしたらメッセ入れとくわ」
「よろしくです」
「おう、じゃ、また遊ぼうな」
「はい、また」
ニンカはさっぱりとそう言って、ひらりとログアウトした。
ギルドの談話室に一人。数秒前までの騒がしい空気が一瞬でなくなってしまうのは、VRのよくないところだ。
「……ログアウトしたらメッセ入れとく、かあ」
つまりあれだ、リアルの連絡先知ってるんだな。まー同じギルドだし、オフ会があったって言ってたしなあ。
「やっぱ私も、連絡先聞いてみようかなぁ」
ぼんやりと呟いた言葉が、談話室に空寒く響いた。
結局全部書いた!




