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【書籍化準備中】「そんなの、ムリです!」 ~ソロアサシンやってたらトップランカーに誘われました~  作者: 高鳥瑞穂
廿九章 天才の先生

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29-1.宿題の成果

お待たせしました!!!


ぽんすけ視点

時系列少し戻ります

 

「あの、ぽんすけさんは…」


 柄にもなく予選を一日だけ頑張った週明け。日曜日はギルド観戦もせず休みを入れたけれど、休日が終わってもなんとなくぼんやりする頭は冴え切らず、これは本格的にもう試合数に上限のないタイプの大会は無理だなと自分の歳を実感した12月11日月曜日。

 藍色の髪に黄色の瞳。ギルドの最年少の少女は、少しばかり目を彷徨わせながら言った。


「うん、どった?」

「予選は、もう出ないんですか?」

「出ないよー。普通に仕事も忙しい時期だし、もう辞退連絡しちゃったしね」

「そう、ですか。あの……もし、可能でしたらという話なんですが」

「うん?」

「稽古を、付けていただけませんか」


 まっすぐにそう問われ、ほうと思う。セリスちゃんがそういうことを言い出すとは、正直思っていなかった。


「なんで僕?」

「大会不参加が確定している中で、私の知る限りPvPが一番お強いのがぽんすけさんだと思っているのと」

「それはなんとも……まあ、ありがとう?」


 そこまで言われてしまうと流石にくすぐったい。

 けどまあ、確かに僕より強いような人たちは今はまだ大会不参加が確定していないのは、事実だろう。なんたって8日ある予選は、まだ2日しか終わっていないから。


「あと、ぽんすけさんはこう…理屈で動く方なので」

「まあそうだね」

「勝てない部分がどうして勝てないかを、一緒に言語化していただけそうで」

「なるほどねえ。ちなみに目標としてはどのあたりになる?」


 まあ、動きの言語化とかは僕は比較的得意な方だね。

 教師役としてそういう面を求めているのなら、確かに合っているかも。

 あとは大会でどこまで行きたいかという話になる。


「あの……あの、笑わないで聞いていただきたいのですが」

「うん」

「本気で、リーダーさんに、勝ちたいんです」


 冷たい石をぽんっと背中に投げ込まれたような気分になる。

 僕の技術で育った弟子の刃がリーダーの首まで届けば、それはそれは気分がいいだろう。

 だけど、僕の技術をきちんと信頼してくれている彼女にだからこそ、ここで安請け合いはできない。


「セリスちゃん」

「はい」

「僕の持てるすべての技術を君に短期で教え込むことは、多分できるよ。暗記によるところなんかは、まあ今ちょうどそっちも学校ほぼ休みだろうし、時間捻出としてもちょうどいいと思う」

「はい」

「ただ……僕の技術をすべて覚えても、リーダーには勝てない」

「それは…」

「厳密には、リーダーには勝てるかも知れない。だけど、リーダー戦まで行くことができない。僕は……今回の大会ルールで、トラキチに勝つ方法が分からないんだ」


 こればかりは本当に、本当に分からない。

 どうやったらトラキチに――圧倒的な聴覚を有するVR過剰適応者に勝てるのか。視界を遮る迷路というマップ上で、視界に一切左右されずこちらを捕捉し続ける最強のファイターにどうやって立ち向かうのか。どうやったら彼の背後を取れるのか。あるいは逃げられるのか。

 まったく、全然、一欠片も、思いつかなかった。

 僕は今回、公式戦では初めて、トラがリーダーから一本取ると予想している。


「だから、PvP練習に付き合うのはもちろんいいし、知識も細かい仕様ももちろん教えてあげられる。可能な限り時間を取ってくれって言われたら可能な限りやるよ。だけど――優勝できるとは、言ってあげられない。先生役はそんな感じの人間でも大丈夫?」


 これはかなりモチベーションの維持にかかる内容だ。

「強くなりましたか?」には「強くなったよ」と言ってあげられるが、「勝てるでしょうか?」には「勝てないと思う」と答えてくる先生役。率直に言ってクソだと思う。


 彼女はしばらく悩んでから、こくんと頷いて――――そして翌日に、またよくわからないことを言い出した。





 ―――――

 ―――

 …



 そんな話をしたのが一ヶ月前。

 年末年始は本業が普通に忙しいので、彼女には完全にメインと見た目を揃えたサブキャラのレベル上げを行ってもらっていた。


「レベルはそろそろカンストかな」

「はい」

「じゃあ、宿題の方を見せてもらおうか」

「はいっ」


 根本的に、セリスちゃんはPvPが弱い。

 弱いという言い方は良くないか。トップ勢の戦い方ではない、普通なんだ。


 ゲームを普通に(・・・)遊ぶなら、「ゲーム仕様」は別に詳しく知らなくても遊べる。


 例えばスキルのレベルを上げるための経験値は「スキルが終わったとき」に入るから、持続時間が長いスキルを使っている途中で死亡するとスキルは成長しない。

 だけどスキル途中で死ぬことは稀だし、使っていればそのうちレベルが上がる。一回にどれくらい経験値が入っているかなんてRTAでもやっていない限り特に気にすることはないので、大半のプレイヤーは気にしていない。


 例えば目視ターゲットスキルで特定箇所が視界に入っていないと、対象選択が失敗して不発する。杖のでかいヘッドで視界が埋まるとヒールできない、みたいなことが稀にある。

 だけど全体回復スキルの場合対象選択が自動なので、ヘイト管理を細かくやる必要のあるトップ勢以外ではあまり問題にならない。


 ――例えば、スキルを発動すると武器の位置が「現在位置」から「スキルの初動位置」まで自動で移動するスキルアシストが働くのだけど、このスキルアシストでの移動はダメージ判定がない。

 手動でスキルの初期位置まで腕を上げればその間も通常攻撃判定が存在するので、本来であればその方がダメージが高くなるけれど、普通に遊ぶ分にはそんなミリのダメージのためにスキル初期位置をすべて覚える、なんてことは必要がない。


 特にセリスちゃんのポジションは回避タンク。持っている武器も短剣なので、多少剣を振ってもどうせ敵には当たらない。今までこの知識は全く必要なかった。


 だけどPvPで勝ちたいのなら必須だ。自分のジョブだけでなく、当たる可能性のあるすべてのジョブのスキル初動位置を暗記して、相手の腕が動いた瞬間に発動スキルを絞り込めなければいけない。


 というわけでおすすめの動画を10本ほど渡して、すべて暗記しろと宿題を出していた。



 目の前にはカカシ君普通人型位置固定。セリスちゃんはこちらが指定した順にスキルを使っていき――――うん、合格。全部のスキルで「初動位置への移動中」もダメージが出た。完璧だね。


 ……完璧すぎて涙が出そうだよ。これ一ヶ月そこそこで出来るようになっちゃうんだね……。


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― 新着の感想 ―
こういう言い方おかしいんですがリーダーさんって普通の人ですよね?! なんでトラキチさんに勝てるのだろう? 今回の話で改めて疑問に思いました(・・。)ん? リーダーさんはリーダーさんで意味不明な人ですね…
秘中の秘(廃人向け)を刷り込みつつ磨き上げ……予想の何倍もやべー事始めちゃいましたね_(:3」∠)_w 対トラ対リーダーとか、それこそ想定立案とか得意分野だろうし、二人のコンビは酷い事しかしなさそうw
これは俄然楽しみになってきたぞ! いや、もともと楽しみなんだけどさらに!
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