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キンコンカンコン――。
そう聞こえないチャイムが鳴る。「キンコンカンコン」とは、いったい誰が言い出したものなのだろう。他のみんなの耳にはどういうふうに聞こえているのだろう。脳内にふと湧いた疑問は、バッグを持ち教室を出たころには雲散霧消している。
階段を下り、部室棟に向かう。つまり霊球部の活動日なのである。週三の練習日は週四に増えた。週七を主張する咲と、せめて土日は休ませろというあたしの主張の両方を退け、グラウンドを借りられる日数的に週四日が限界ですとまなによって決定された日数だ。
部活が盛んな蔟西において、校内のグラウンドは常にいずれかの運動部によって使用されている。後発組の我々霊球部にそこに割り込む余地があるはずもなく、だから普段は校外にあるグラウンドを利用して練習を行なっている。のだが、そこを借りられる日数が四日より多くはどうしても難しいということらしい。ちなみにそういった部の事務的な仕事はほとんど、まなが担当してくれている。いつもありがとう。
部室棟の階段を下り、地階へ。これから部室で着替えを行ない、三人でグラウンドへ向かう。霊球に男女の別はないが、男子部員のいない蔟西高霊球部としては、部室で気兼ねなく着替えができて便利だ。グラウンドに着いてからでもよいのだが、向こうには着替えられる場所がトイレくらいしかないし、所詮あたしも一女子高校生として、女同士、その日あったことなんかを無造作に語り合いながらの着替えが案外嫌いではない。
そういうわけで、もしいまこの場面を覗いている方が仮にいたら、これからJKたちの着替えが始まるので、即刻お帰り願いたい。無理やり覗いてみたところで、そもそも見る価値があるのなんてまなの着替えくらいだ。……うっ。自分で言って傷ついた。
「おーす」
部室のドアを開ける。まなと咲は先に来ていた。が、まだ着替えを始めていない。待っててくれた? という雰囲気ではなさそうだ。
「どしたの?」
声をかける。咲が振り向いて言った。
「問題発生です」
「問題?」
「はい。一か月後に大会があるんですよ」
「え、また? 前の大会のときあんた、『これを逃したら次は当分先』とか言ってなかったっけ?」
「言いましたよ。実際、そうじゃないですか。前回大会から数えたら、次の大会は約二か月後。毎週のようになんらかの試合や大会をやってる野球部に比べたら、充分少ないですよ」
そりゃむこうはどメジャースポーツなんだから。比べる相手が間違ってるだろ。まあいいや。またあるのね、大会。
「……それで? 問題ってのはなんなの? テスト期間と日程が被ってるとか?」
「テスト? そんなもん、どうだっていいですよ」
「どうだってよくはないだろ」
先日あった中間試験で、入学早々さっそく一科目赤点を叩き出した咲が、腕組みをして言った。
「人数が足りないんです」
「人数?」
首を傾げる。明らかに足りない咲の説明を、まなが補足する。
「あのね、次の大会では選手が三人じゃなく、四人必要なんだって」
「え、そうなの?」
「そうなんです!」
と話を引き取った咲が、ぐいと顔を近づけてくる。
「前の大会と違って、次の大会は公式主催の大会なんです! つまり大会では公式のルールが適用されます。霊球は本来、四対四、霊体を含めれば八対八で戦うもの。……自分としたことが、うっかりそのことを忘れていました」
それはだいぶうっかりしている。なるほど、たしかにこれは赤点も取……まあ、とにかく――
「……つまり、最低でも一人、部員を増やさないといけないってこと?」
うん、と二つの頭がこくんと下がる。
そういうことか、たしかにこれは問題だ。ただでさえ知名度のほぼないマイナースポーツ。部員数三人。そこに、いまさら入ろうという人などいるのだろうか。全校生徒なんらかの部活動に所属することが原則義務付けられている本校において、この時期に所属先が決まっていない新入生などおそらく皆無だろう。他の学年を含めて考えても、少なくともあたしの知るかぎり、そんな生徒は一人も――
「あ」
「どうしたの、みーちゃん?」
「……まさか、新入部員の候補が?」
「いや、まあ……」
いちおう一人、その条件に合致する人間がいるにはいる。個人的に、呼びたい相手ではないが……まあ、選り好みができる立場でもないし。
声だけ、かけてみるか。




