3-2-3
咲から、あたしにパスが出される。マークについた茶髪がすかさずプレッシャーをかけてくる。霊体同様、本人もなかなか素早い動きをしてくる。逆サイドに目をやるが、この状態から斎藤さんにパスは出せない。しかたなく赤鬼へと繋ぐ。
「ウォォォォォ――」
雄叫びを上げ、ゴールへ向かう赤鬼。しかしティーシャツ男子の反応が速い。「斎藤さんに!」と後ろから声をかけるが、パスを出そうとしたところをカットされてしまう。
「速攻!」
相手のカウンター。双子の茶髪にボールが渡り、さらに白ケモ子へ。そこへ、すぐわきから一つ目小僧が現れる。
白ケモからさっとボールを奪い返し、咲へと素早く繋ぐ。咲から、まだ前線にいる赤鬼へ。相手ディフェンスは前に出ている。今度は悠々とゴールを決めた。
「ナイス、るっくん、メメ!」
ハイタッチを交わす三人。コートわきのスコアボードに目をやる。
七対五。接戦ながら勝っている。この七点のうち大部分は、一つ目小僧の働きによるところが大きい。いまやったような、ワープを利用したディフェンスからのカウンターが奏功している。
「メメちゃん、やったね。またお手柄だ」
駆け寄ってきたまなに、一つ目小僧が笑顔で応える。ただ同時に、ふたりの頭にはある懸念も浮かんでいるはず。
ホイッスルののち、敵の攻撃が始まる。双子とケモ子ズ、四人が息の合ったパスワークでボールを前線に運ぶ。
茶髪から黒髪へ。サイドから黒髪が灰ケモ子に視線を送る。パスだ。それを彼(彼女)も感知したのだろう、一つ目小僧がすっと姿を消した。
それとほぼ同時だった。黒髪が、後方の河童のほうをちらと見た。彼女の手からボールが放たれる。直後、一つ目小僧が灰ケモ子のそばに現れるが、彼女はボールを持っていない。ボールはそのわきを抜け、奥にいた白ケモ子に渡った。
「……もしかしたら、察知されてるのかも」
まながそう言ったのは、五分ほど前にとったタイムアウト(一回六十秒。一試合に三回まで要求できる)のとき。
「察知?」
と咲が訊き返す。
「メメちゃんがワープするタイミングで、相手選手たちの視線が一瞬、河童ちゃんに向くときがあるの。もしかしたらあの河童ちゃんが、メメちゃんの移動先を他の選手に教えてるんじゃないかって思えて……」
「……なるほど。ありえますね。同じ浮遊型ですし、もしかしたらあの河童、メメの移動先を検知できるのかも……」
なにそのピンポイントな能力。咲が言うには、あるいはあの河童、一つ目小僧が昨日突然ワープ能力を体得したように、この試合中にそういったレーダー的な能力を新たに発現したのでは、とのことだった。なんと都合のいい。ううむ、霊体道いまだ以下略。
黒髪からボールを受けた白ケモは颯爽とゴールを目指す。まな一人によるディフェンスは、灰ケモとのパスワークによって簡単にかわされる。一つ目小僧は間に合わない。いま使ってしまったワープもすぐには使えない。最終的にボールを持った灰ケモがゴールを陥れた。
ホイッスル。スコアボードを見る。
これで得点は七対六。序盤は完全にこちら優位だったのが、着実に追い上げられてきている。河童レーダー説はおそらく当たってる。
「大丈夫、まだリードしてます! 切り替えていきましょう!」
咲の声かけ。頷くまなと一つ目小僧。
たしかに、一点とはいえまだリードはしている。ワープも、敵がそのタイミングで常に河童の指示を仰ぐ余裕があるとはかぎらないし、状況によってはまだ使いどころはあるはず。
ただ――
「ナイスオフェンス、カザリ」
「あと一点。押してるよ、一気に追い付こう!」
双子を中心に、敵選手たちが声をかけ合う。客観的に見て、いま勢いがあるのは明らかに相手。一つ目小僧の能力が事実上ナーフされてしまったと考えると、チームとしての総合力はむこうが上だろう。双子とケモ子ズの息の合った連係とスピード。特にケモ子たちに一度ボールを持たれてしまうと、奪うのが難しい。特に――
「頑張ろうね、メメちゃん」
「ぴぃ」
頷き合うふたりに、ちらと目をやる。




