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センターラインを挟み、両軍の選手が位置につく。六人対六人。両チーム三人は人間、三人はそれぞれの選手の霊体(斎藤さん除く)。
試合開始の笛が鳴る。試合前のコイントスの結果、先攻は相手チーム。ボールを持った選手が一歩、前に踏み出す。
霊球とは要するに、手を使ってよいサッカーみたいなものである。と、個人的には思っている。
あるいは、ドリブルのないバスケットボールみたいなもの、だろうか。タックル禁止のラグビー、と言ってもいいかもしれない。
とにかく、霊球もそれらスポーツのように、縦長のコートの中をボールを持って駆けまわるタイプのスポーツだ。ボールの大きさはサッカーボールよりひと回り小さい程度。そしていわゆる、勾玉を模した形をしている。これを味方同士パスで繋ぎながら、相手陣地最奥のゴールを目指す、というのが主な流れだ。コートに関しても同じくサッカー基準で言うと、一般的なサッカーコートの半分くらいの広さだろうか。
前出の球技と大きく違う点(「霊体の存在」は除いて)といえば、試合終了が時間ではなく得点到達によって決定されるという点だ。具体的には、十七点先取したほうが勝利となる。その点に関しては、バレーボールや卓球なんかに近い。ただし、たとえば五セット中三セット先取のような複数セットを戦う形式ではない。単純に十七点先にとったほうの勝ち。つまり競った展開にならなければ、あっという間に終わる。あたしがどちらを望んでいるかは、言わずもがな。
ピーッ、とホイッスルの音が鳴る。相手チームが三点目の得点を決めた合図だ。一方でこちらはまだ無得点。おなじみの展開。ちなみにゴールは、どこか葬式のそれを彷彿させるような祭壇がそれぞれの陣地の奥に設えられていて、金属製らしき黄金色の平たい皿の上にボールを載せれば一得点。皿はちょうどボールが一個乗るくらいのサイズ感なので、置く際はある程度慎重にならざるを得ない。ゴールの瞬間だけを切り取ると、なにかしらの儀式を行なっている最中っぽくも見えてシュール。
「ご、ごめん、咲ちゃん」
「大丈夫です、まな先輩! むしろいまのは、いい動きでした。ナイスディフェンスです! その調子でいきましょう!」
咲がまなにフォローの言葉をかける。これで相手の三連続得点なのに、前向きなやつ。でも、たしかに、前の二試合に比べると、敵の攻めてくる勢いが少し弱いように感じる。得点を決められるペースも心なしゆっくりだ。実際、まなの動きが良くなっているのかもしれない。相手が一年生というのも、もちろんあるだろうけど。
「頑張ろうね、メメちゃん」
「ぴぃ」
と可愛らしい声で返事をし、まなの霊体・一つ目小僧がこくりと頷く。霊体にはみな名前をつけなければいけないという決まりでもあるのか。
まなは走り、自分のポジションに向かう。キャラ的に意外に思われることが多いが、まなは運動神経がわりといい。ただし足はあまり速くない。体に重そうなボールを二つもつけているせいだ。……いいなぁ。
とにかくまあ、そういうわけなので、まなは今大会――少なくとも本試合において充分、戦力になっていると言える。一つ目小僧も彼(彼女?)なりに頑張っているし、咲と赤鬼はチームのエースだ。つまり、役に立っていないのはあたしだけ。
「いやー、やられてしまいましたな。切り替えて、ここから挽回していきましょう!」
――と、もうひとりいた。斎藤さん。彼はここまで、あたしの望みどおりの活躍を見せてくれている。霊園で本人が言っていたように、斎藤さんは霊球、および運動が大変苦手だ。元々そうであったところに、骨であることが余計にスムーズな動作を阻害しているのかもしれない。あたしほどじゃないにせよ、彼もまたこれといってチームの役に立てていない。
だがこれこそ、あたしが望んだ状況。この状況を作りたくて、あたしは斎藤さんをスカウトした。大会なんてめんどくさい。ならせめて、なるべく早く終わって家に帰りたい。そのためには相手に大差で勝つより、大差で負けることを目指したほうがはるかに楽だし効率がいい。ここまでの二試合はまさにそう願ったとおりの展開になってくれた。この調子でこの試合もさっさと終わらせられるよう頑張りたい。
「ふたりとも、なにやってんですか。早く位置についてください!」
咲から声がかかる。へいへい、と小走りで自分の位置に向かう。
「三試合目にして、みなさんだいぶ動きが良くなってきています。弥里殿、我々もうまくフォローし合っていきましょう!」
はは、そうだね、と苦笑いで返事を返し、それぞれ位置につく。得点を決められたので、こちらの攻撃から。笛が鳴る。試合再開。




