1章―3
街に入ると、どの家も固く戸を閉ざし、そんな家々の間を受付嬢たちが歩き回っている。
彼女たちは冒険者の姿を見つけると、一様に深く礼をした。
その様子を見ながら、リベアはギルドへと入る。
ギルドには、他の冒険者たちもすでに帰っていた。
やがて、支部長と受付嬢たちが戻ってきた。
「勇敢なる冒険者たちよ。この街を守ってくれたこと、感謝する。ありがとう」
支部長のその言葉に、ギルド職員たちが一斉に、冒険者たちへ深く礼をする。
「……私も君たちとともに、戦えたら良かったのだがな……」
支部長がどこか後悔を帯びたように、小さく呟いた。しかしそれは、誰にも聞こえない。
「さて、冒険者たちよ。この後、支部長室へ1人ずつ来て欲しい。それまでの間はぜひとも、食事でも振る舞わせてくれ」
◇◇◇◇
賑やかな食事が始まった。
冒険者たちは盛大にジョッキを傾け、肉の塊にかぶりつく。
その騒ぎの中心から離れたところで、リベアはパンをちぎって食べる。
その時、1人の冒険者が近づいてきた。
「ほら、肉だ。肉も食べな!」
そう言いながら、リベアの前に肉の盛られた皿を置いた。
「それにしても凄いな、お前。あんなに魔法を一気に出せるとか。それじゃあ、ちゃんと食えよ!」
それだけ言うと、彼はすぐに離れていった。
それと入れ替わりに、女性がやって来た。先ほど一緒に帰ってきた冒険者だ。
「みんな、あなたが気になってるのよ」
「なんで……?」
「あなたがとても頑張ったからよ。今日のことを忘れないでね。たとえ怖くても、あなたは勇気を出して戦い、街を守った。これは誇るべきことよ」
そう言い、女性はふわりと微笑んだ。
リベアは辺りを見てみる。全員が心から楽しそうに笑っている。
それはリベアの、『彼』の小さな夢がひとつ叶った光景だった。
それから彼女と話していると、受付嬢に呼ばれた。後ろを付いて行き、階段を登ると支部長室へと着いた。
中に入ると、支部長と1人の受付嬢がいた。
支部長に促され、リベアは向かいのソファに座った。
「冒険者リベア。まずは改めて感謝を」
2人はリベアに礼をした。
「さて、リベア。君が今回使用した魔法だが、あれは氷球で合ってるか?」
「はい……」
リベアは小さく頷いた。
「なるほどな。もしかして、魔力量が多いと言われたことはないかい?」
何も心当たりのないリベアは、首を横に振る。
「そうか。回復師が口をそろえて言っていたよ。君にはほとんど魔力回復の治癒をかける必要がなかった、と」
支部長の後ろに控えていた受付嬢が、机の上に水晶を置いた。
「ナルの森での魔物討伐及び、フェンリル討伐への貢献。魔法操作技術を称えて――」
支部長はリベアの碧い瞳を真っ直ぐに見据えて、宣言する。
「リベアをCランクへと昇格する」
そのことに、リベアは僅かに目を見開いた。
「冒険者カードを出してください」
受付嬢に言われるままに、リベアはカードを出して水晶にかざす。
水晶は淡く、だが、強く輝いた。
受付嬢は支部長の隣のソファに座り、話を切り出した。
「今日受注された依頼ですが、依頼主は明日以降に回しても大丈夫だと言っています。どうしますか?」
もう空は暗くなっており、今から王都に行っても彼を探すことはできないだろう。
「明日にします」
リベアはふと、あることが気になった。
「半年前に、シオンって名前の男の子が冒険者登録をしましたか?」
「シオン……あぁ、あの青髪の少年ですね。彼なら登録をした後、王都に行きましたよ」
受付嬢はリベアが聞きたかったことも含めて、教えてくれた。
「依頼主には、こちらから伝えておきますね」
◇◇◇◇
1階に下りたリベアは、相変わらず騒いでいる冒険者たちへと近づいて行った。
そして、自分から話しかけた。
彼らは嫌な顔ひとつせずに、リベアを迎え入れてくれた。
賑やかな食事会は、冒険者全員の聞き取りが終わり、ギルドが閉まる時間になるまで続いた。
ギルドを出たリベアは、数人の冒険者と一緒に宿へと向かった。
宿の部屋に入ったリベアは、すぐに眠りについた。
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次回更新時はXと本編まえがきにてお知らせします。
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