1章―1
冒険者としての登録をするには、冒険者支部がある『リケミナ』という街に行く必要がある。
そこは村から一番近い支部だが、馬車で数時間かかる。
リベアは商人の馬車に乗せてもらい、朝靄の中リケミナを目指した。
「嬢ちゃん、リケミナに行くんだってな」
「うん! 冒険者になるの!」
「じゃあ、ナルの森には気を付けろよ。特に最近は、魔物の動きが活発になってるらしいからな」
「そうなんだ……。ありがとう、おじさん!」
それから他愛もない会話をしながら馬車に揺られていると、大きな街が見えてきた。
「もうすぐリケミナに着くぞ!」
馬車は門の前で停まり、商人ギルドカードを見せると、何の問題もなく街へと入った。
商人は冒険者ギルドの前でリベアを降ろした。
「元気でな!」
そう言って、人混みに紛れていった。
リベアはその姿が見えなくなるまで、大きく手を振った。
◇◇◇◇
リベアはギルドの中へ入ると、受付嬢の所へ行った。
「冒険者登録をしたいです!」
「かしこまりました。では、こちらの水晶に手をかざしてください」
水晶へと手をかざすと、淡く光った。
「これで登録は完了です。こちらが冒険者カードです」
カードを受け取ったリベアは、依頼板を見る。
「王都に行く馬車はあるかなぁ」
冒険者は魔物討伐だけではなく、馬車の護衛依頼もされる。
「あった!」
リベアはその依頼書を持って、受付嬢の所へと行った。
「この依頼を受けたいです!」
「はい。こちらの水晶にカードをかざしてください」
カードをかざすと、水晶が淡く光った。
「これで、依頼受注完了です。依頼主が来るまでは、ギルド内で待機してください」
待っている間暇なリベアは、2階にある図書室へと行き、そこで適当に本を数冊読んだ。
「お腹空いた……何か食べよ」
1階へ下りて、食堂でパンとスープを頼む。
孤児院を出発するときに銀貨を数枚渡されたが、1枚でもお釣りが出るほどに安かった。
食べ終わって少しゆっくりしていると、何やら建物の外が騒がしくなっていた。
「何かあったのかな……?」
その時、ギルドの扉を勢いよく開けて、1人の冒険者が駆け込んで来た。
彼は血相を変えて、息を切らしたまま言う。
「す、スタンピードだ……スタンピードが起こった!!」
「――っ! 魔物の種類や規模はどれくらいですか」
その報告に一瞬驚いた表情をした受付嬢だったが、すぐに冷静になり、状況把握に進んだ。
「先頭集団にゴブリンとオークがいる。その後ろには、ウルフとオーガが見えた。規模は……ゴブリンだけで300は超えてる」
「おい、300ってヤバくねぇか」
周囲の冒険者たちがその報告にざわめく。
だが、彼は震えた声でさらに続ける。
「それと、見間違えかもしれないが、一瞬……フェンリルが見えた」
「フェンリル、だと!?」
「A+ランクだぞ!」
それには、リベアも大きく目を見開く。
ふと、カウンターの奥から足音が響いた。その音を聞き、冒険者たちは静かになっていく。
やがて、1人の男性が姿を現した。
「支部長」
受付嬢に声をかけられ、男性――リケミナ支部長は頷く。
「街にいる冒険者を全員、緊急招集しろっ!」
その号令に、受付嬢たちはギルドの外へと飛び出していく。
それから数分もしないうちに、街中の冒険者がギルドへと集められた。
「スタンピードが確認された! 前衛はゴブリンを中心に、後衛はオーガを中心に討伐しろ! 防御は各自でしつつ、回復師は常時全体に治癒をかけろ! Bランク以上はフェンリル討伐に向かえ!」
支部長が冒険者たちに指示を出す。
それから一際声を上げて言う。
「良いか、絶対に街に入らせるな!」
冒険者たちが雄叫びを上げて、ギルドから出ていく。
だが、リベアは恐怖で足が動かなかった。
そんなリベアに、1人の受付嬢が声をかける。
「冒険者になったばかりでごめんね。でも、街を守るために、あなたにも手伝ってほしいの」
「まちを、まもる……」
「えぇ。もし怖くなったら、後ろに下がってて良いから」
リベアはふと、シオンが冒険者になりたいと言った理由を思い出した。
『最初は大切な人を守れたら良いって思ってたんだ。でも、それだけじゃなくて、もっとたくさんの人を守って、笑顔にしたいんだ』
『騎士だとダメなの?』
『だって、騎士だと自由に動けないだろ』
そう言って笑った瑠璃髪の彼の表情が脳裏に浮かぶ。
「こわくない……怖くない! 私も、街を守るために戦う!」
そう言うと、リベアもギルドを飛び出し、先に行った冒険者たちを追いかけて行った。
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次回更新は8月7日(金)です。
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