6話 一時撤退
「まだ油断しないで!!敵の足音が2人、3人、いや、もっと大勢!!」
「それはまずくね?」
「俺でもその人数からお前らを守り切るのは流石にキツい。」
鉄也の額に汗が浮かぶ。
「ここは引いたほうがいい。無理に突っ張って確実に勝てる保証はないわ。」
「そうですね。このまま無理して突っ張って負傷する確率。86%。」
「分かった。総員、撤退!!」
こいつの指示は聞いてない。俺は心音の判断に賛同しただけだ。この判断にこいつの影響はない。大丈夫だ。俺達は3人でアウトローズなんだから。
鉄也は腰に巻き付いているワイヤーを取り出した。そしてそれを思いっきり投げる。
ビュルッ
ワイヤーは勢いよく直線的に飛んでいき電柱へと絡みつく。
「お前ら、しっかり捕まってろよ?」
鉄也がそう言うとワイヤーは一気に縮む。アウトローズの3人は即座にヤクザのアジトから抜け出した。
「クソッ!やっぱこうなるのかよ!!」
少年は全力でダッシュするもののすぐに息切れが起きる。階段、エレベーター、別の通路。ありとあらゆる方向や可能性を考慮し最適解を導き出す。
見つかれば殺られる!!何が何でも逃げ切らないと。来た道は危ない。ただそうじゃない道は情報が出揃っていない!!ただ、すでに建物の大きさやヤクザの組の規模から今このビルに何人のヤクザがどの程度の配置をされているのかはある程度把握している!!あとは賭けだ!!
ビルから出ても安心はできない。少年は夜の静かな街を一人駆け抜ける他なかった。
「はあっ、はあっ。なんとかっ。」
普段から直射日光を浴びることのない色白で軟弱な体にはかなりハードな運動だった。
真っ暗な部屋の中で少年は倒れ込む。
「今度こそ、今度こそは。僕の人生の彩りのために。」
光を遮断しきったはずの部屋。しかし少年にはカーテンの小さな隙間から月の光が漏れ出しているように感じる気がしてならなかった。




