16話 誤算
ボスは一丁の銃を腰につけているホルダーにしまう。
ギチッ
高密度の筋肉が嫌な音を鳴らす。
あんなので殴り飛ばされたら一溜まりもないな。
龍は絶対領域を拡大し腰を下げ相手に動きが生まれるのを待つ。
相手の動きを見てから対処する、さあ、どう動く。
ドッ
龍の額から血が流れる。彼は壁に打ち付けられていた。
はやっ、全く持って反応できなかった!!
動けっ動け、僕の口!!このまま全滅するよりも早く!!
展開が早すぎる、ありえないレベルの誤算だ。僕の求めた勝率を言う暇さえないなんて。
こいつの能力は――
ない。
ひたすらに鍛え上げられた一般人。気配を感じない、それもそのはずだ。
こいつは一般人程度の魔力量しかもってない。
そして銃に込められている絶対領域も他人のもの。
全部、全部わかってるのに。
言葉にする前に全滅する。
ドコッ
ボスの顎に何かがクリーンヒットする。
それは迅そのものだった。
「この程度で倒した気になるとは想定が甘いな。俺の能力の前ではそんなの無意味なんだよ。」
ここから復帰するとは、さすが成瀬さん、想定より硬いな。
「鉄也さん、気をつけて。こいつ能力者じゃないです。筋肉でこの世界を生き抜いてきた化物。」
完全に理解した。成瀬さんの今の動き。加速どころか動ける状態ですらなかった。完全に成瀬さんは静止していた。そこから超加速して突撃してみせた。異能力は慣性を自由自在に操る能力。確率は93%。
「そしてすべての情報は出揃った。」
心音さんは腰を抜かしている。まともに戦力にならない。慣性を操れる右足を負傷した成瀬さんと五体満足のの鉄也さん、そして心音さんの耳によれば近くに味方は潜んでいない可能性が高い。そしてボスの手の内も割れた。不意打ちはないと考えて問題ない。それならば――
「勝率97%。」
嬉しすぎる誤算だ。




