第四十一章:「あの場所は私の”モノ”だから」
仁の視線を独り占めにした夜が、いくつあったかなんてもう忘れた。
でも、それでもいいの。
私は“太客”。
何百万円を使った夜の記憶が、仁と私をつなぎ止めてる。
仁は、いつもスマートで、冷たくて、でも時々やさしい。
その“時々”がたまらなく嬉しくて、どんなに心が荒れても、またお店に通った。
他のホストじゃダメ。私は仁がいい。
ずっとずっと、そう思って生きてきた。
もちろん、わかってる。
私と仁の関係なんて、お金があるから成立しているということくらい。
それでも、彼の一番でいる自信はあった。
けれど。
あの女が現れてから、何かが変わった。
初めてその子を見たのは、仁がやけに穏やかな顔をして席に戻ってきた日。
あの表情を、私には一度も見せたことがなかった。
ずっと気になっていた。
周囲に聞いて、噂を拾って、何度もSNSを探って――ようやく“ひな”にたどり着いた。
彼女は、私と違って普通の子だった。
地味で、目立たなくて、私とは正反対。
でも…仁の隣で笑ってたことは変わらない事実。
なんで。
なんであの子なの?
お金も、ステータスも、何も持ってないじゃない。
それなのに、なんで私じゃないの。
ーーねぇ仁、あなたが“守ろうとする誰か”がいるって、私は初めて知ったよ。
私がどんなに求めても、あなたは冷静だった。
でもその子には…その子には心を開いているのね。
仁の隣は、私のものだったのに。
ずっと、私が一番だったのに。
私はあなたのために、何千万も使ってきた。
そのたびに一喜一憂して、あなたの言葉ひとつで生きてこれた。
だから、今さら“隣”まで誰かに奪われるなんて、認められない。
たとえ、お金でしか繋がれない関係でも。心が私になくても。
私は、仁の“誰よりも価値ある客”でいることに誇りを持っていた。
でも、隣という”居場所”まで奪われたら…もう、何も残らない。
だから。
私は、ひなを壊す。
仁の大切なものを壊せば、また戻ってくる。
きっと彼は気づいてくれる。
一番は私だったって。
一番あなたを愛してたのは――私だって。
そう信じてる。
信じてるから、私は何だってする。
ねぇ仁、あなたも気づいてよ。
私はまだ、あなたの一番になれるって。
心を奪っていいのは、私だけだって。




