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第二十八章:「変わらなかった日々」
店の照明が、今夜も俺を照らしている。
変わらない空間―――。
変わらない笑顔―――。
変わらない営業―――。
…なのに、あの日から何かが違う。
ひながいなくなって、かなりの時間が経過していた。
店に来ることも、連絡も、全部ない。
あいつらしいな、とすら思った。
言葉にしてしまったら、もう戻れない。
そういう覚悟が見えた、あの最後のLINE。
『私ももう、いい大人だからこんな遊びは辞めるね』
『仁さんの未来には私がいない。』
『元気でね。ずっと応援してる』
読み返したのは、何度目だろう。
俺の返信に、既読がつかないままのトーク画面。
本当は、返信などこないと分かっていた。
それでもたまに開いてしまうのは、
ひなだったらいつか、いつか返してくれる…そう思っていたから。
今日もまた、いつものように画面を開く。
返事がこないままのトーク画面も、なんら変わりない。
でも―――
右下に、いつもなかった文字がついていた。
「既読」
胸の奥が、ドクンと脈を打つ。
時間が止まったような感覚。
あの日から止まっていた秒針が、確かに動き出す音がした。
既読になっただけ。
ただ、それだけなのに。
それでも俺は、スマホを握ったまま、目を逸らせなかった。
――ひなが、俺の連絡を読んだ。
どうやらまた、今夜も眠れそうにない。




