第二十七章:「本音」
ベッドに寝転がり、天井を見つめていた。
部屋は静かすぎて、時計の針の音が妙に大きく響く。
スマホには通知が1つもなかった。
それが落ち着くようで、こんなにも寂しいとは思わなかった。
彼と別れてから、心は不思議なくらい穏やかだった。
後悔はしていない。
自分の気持ちに正直になれたことに、むしろ少し誇らしさすらあった。
でも、その代わりに――
胸の奥に、ずっと押し込めていた感情が、静かに顔を出してきた。
「…仁さん。」
声に出すと、胸がぎゅっと締めつけられる。
最後に会ったのはいつだっただろう。
最後に話したのは―――。
あれから、何日が経ったのだろうか。
季節が変わり、私の生活も少しずつ変わり、それでも…。
心の中でずっと、変わらずにそこにいるのは仁さんだった。
傷ついたこともある。泣いたこともたくさんある。
何度も諦めようと思ったし、実際に諦めた“つもり”にもなった。
でも、それでも――どこかで、ずっと待っていた。
忘れようとしても、忘れられなかった。
彼がくれた香水。
彼がふとくれたコーヒー。
彼が見せてくれた、不器用な優しさ。
全部が、ちゃんと私の中に残っていた。
もう、代わりの“誰か”じゃなくて、私は、仁さんに会いたい―――
会って、今の私の言葉で話したい。
ちゃんと今の自分として、あの人に会いたい。
ただの“お客さん”でも、“彼女”でもなく。
私という1人の人間として、彼の目を見て、声を聞いて、
ちゃんと、ちゃんと伝えたい。
もう逃げない。もう誤魔化さない。
それがどんな結果になったとしても――
仁さんに会いたい。




