表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/48

第二十章:「愛を知るということ」

静かな朝だった。

窓から差し込む光に、フウが黄昏ながら丸くなっている。

私の心も、少しずつ穏やかさを取り戻し始めていた。


仁さんと出会って、たくさんのことを学んだ。

恋をする気持ち、心を寄せることの切なさ、そして、愛することの尊さ。

最初はただの「癒し」だった。

慣れない仕事と都会の孤独の中で、彼の存在が少しずつ心の支えになっていたことは間違いない。


でも、いつからかその存在は、私の中で少しずつ色を変えていった。

優しさが嬉しくて、言葉に一喜一憂して。

そして気づけば、私は本気で仁さんを想っていた。

見返りなんて求めなかった。

好きだから一緒にいたい、ただそれだけだった。


でも——

愛を伝えるということは、時に残酷だ。

伝えることで壊れてしまうものもある。

伝えないことで守れる距離もある。


私は仁さんを好きだった。今も、その気持ちに変わりはない。

でももう、それを彼にぶつけたりはしない。


愛とは、形にすることじゃないのかもしれない。

ただ、その人の幸せを願えること。

それが「愛すること」なのかもしれないと、今なら思う。


仁さんはきっと、自分の中の葛藤と戦っていた。

それを分かっていて、私は待った。

でも、どこかで私も疲れていた。

誰かに「愛されたい」と願うより、私は「愛することを知った自分」を大切にしたい。


だから、仁さんのことはずっと心にいる大切な人として

——思い出にしよう。


忘れるなんてできない。

忘れたくもない。


だって、あの時間があったから、私は成長できた。

たくさん泣いて、たくさん笑って、

心が締め付けられるような夜もあったけど、

それもすべて、大切な人生の一部だった。


(ありがとう、仁さん)


その言葉を、声に出さずに呟いた。

もう、届かなくてもいい。

この気持ちは、誰のためでもなく、私自身のために。

大人になった私は、ようやく過去と優しく手を振れる気がした。


窓の外は、少しずつ春の気配が近づき、仁さんと初めて会った日から二年弱が経過していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ