第十九章:「返事がないまま」
ひなが、あの日、LINEで送ってきたメッセージを見た時、胸が締め付けられるような思いが込み上げてきた。
『私ももう、いい大人だからこんな遊びは辞めるね。』
その言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
俺は、その瞬間、自分がどれほど無力で、彼女を傷つけてきたのかを痛感した。
彼女が言った通り、俺は自分の未来が描けなかった。
それが分かっていたからこそ、これまで何度も避けてきたのだろう。
ひなの真っ直ぐな愛に、俺は応えることができなかった。
そのことを、今さらになって悔やんでも、もう遅い。
彼女が去った後、俺はひたすら自分を責めた。
(俺のせいだ)
それだけが、脳裏を巡る。
俺が、彼女にふさわしい男になれなかったから。
俺はずっと、大人になりきれない自分がいた。
愛することを知らない。愛されることにも恐れがあった。
それを受け入れる勇気が、どこかで欠けていた。
そのせいでひなを傷つけ、そして、彼女を失った。
だが、そんな自分に嫌気がさす一方で、どうしてもひなを引き止めることができなかった。
その理由は、分かっていた。
俺には、何もできない――
その一言に尽きる。
確かに俺には、お金も人脈もある。
それを持っていれば、どんな人間でも、表面的な部分では満たされる。
でも、それだけではどうにもならないことは、誰よりも自分が理解していた。
その上で、ひながいなくなることに気づいた時、心が空っぽになる感覚が走った。
お金や地位なんて、結局、全てを満たすことはできない。
本当に必要なものは、そこにはなかった。
それは、ひなでしか満たせないものがあることを、心の奥底で痛いほど感じていた。
でも、その言葉を彼女に伝えたとしても、どうせ届かないだろう。
そう思うと、何も言えなかった。
あれから数日が経つ。
ひなのメッセージに対して、俺は何度も何度も返信を考えた。
でも、結局送ることができなかった。
(俺の気持ちを伝えても、もう遅い。)
その思いが、どうしても引きずる。
そして、ある晩、ふと気づくと、俺は何度もひなのLINEを確認していた。
送ったメッセージには「既読」すらついていない。
ひなの返信がないことが、ますます胸を締め付けていく。
(届いていないのか、それとももう、興味もないのか…)
その現実を、少しずつ受け入れ始めていた。
俺は、何もできない人間だった。
ひなに、何一つ与えてやれない。
その事実が、今になって、ものすごく重くのしかかってきていた。
でも、どうしても心のどこかで、まだ期待していた自分がいた。
(もしかしたら、ひなは俺に返信してくれるんじゃないか)
(俺の元に、また戻ってきてくれるんじゃないか)
そんな小さな期待を、俺は無意識に抱えていた。
けれど、既読にならないそのメッセージが、まるで「もう遅いよ。」と、冷たく告げているようだった。
その夜、俺はひなを思い出しながら、ただただ黙って考え続けた。
彼女を失ったことに対する後悔。
そして今、自分がどれほど無力かを感じる。
ここまで大事に想っていたことを、俺はひなを失って初めて気づいた瞬間だった。




