第十八章:「終わりの時」
数か月後、私は仁さんの誕生日を祝うためにお店を訪れていた。
その日は、私にとっては特別な意味を持っていた。
長い時間をかけてようやく私は彼に想いを伝え、彼と過ごすことができる、そう思っていた。
でも、現実はそう甘くはない。
時間が経つにつれて、どこかでその思いが薄れていくのを感じていた。
そして、その日を迎えた時、心の中でもう答えが出ていることに気づいた。
誕生日のお祝いを終えて、私はお店を出る時、ふと立ち止まり、深呼吸をした。
今日は、私にとっても“最後の時”だと感じていたから。
これ以上、私と彼の関係が縮まることはない。
それはお互いにとっても良い関係とは言えないと思っていた。
帰り道、私はスマホを取り出して、迷うことなくLINEを送った。
「私ももう、いい大人だから、こんな遊びは辞めるね。
将来のことを考えて、これからの人生をちゃんと歩んでいこうと思う。」
送信ボタンを押した瞬間、胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。
でも、それが私の決断だった。
お金で繋がれた関係、今後のことを考えずに1日に20万、30万と使う夜。
そんな遊びはもう辞めにしよう。
しがない会社員の私にはきつい金額だった。
「仁さんの未来に、私がいないことくらい、もうとっくの昔に気づいていたよ。 それでも、私は離れられなかった。」
それでも私の気持ちは本心で本物だった、そう伝えたかった。
「今日、最後に仁さんの誕生日を祝えたこと、すごく嬉しかったよ。」
仁さんがどう思うかは分からないけれど、私の心はもう、ここで終わりだと思っていた。
「仁さんには、人脈もお金もあるから、私一人いなくなっても、きっと変わらないんだろうね。」
その現実が、胸に突き刺さる。
私がいなくなっても、きっと仁さんの世界は回り続ける。
それが、私にとっては悲しい現実だった。
「元気でね。一人で抱え込みすぎる癖は良くないよ。これからもずっと、応援してる。」
その言葉を最後に、私はLINEを送った。
送信ボタンを押した後、しばらくその画面を見つめた。
そして、心の中で何度も繰り返していた。
(さよなら、大好きな人)
その言葉が、私の中で最後の決断だった。
仁さんがどんな反応をするのか分からない。でも、もうそれに頼る必要はない。
私は私の人生を、これから歩んでいく。
彼に何かを求めることは、もうしない。
私は今までで一番好きになった人を、自ら手放した…。




