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10+1(イレブン)ナイン  作者: あまやすずのり
そして、11となる
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そして、11となる 04

「チェンジアップにスピン……」

「そうか、だからあの時ノビたのか」

 慎吾が脳裏に浮かぶ苦い情景を引きずり出す。

 打ちにいく直前、沈むと思った球が真っ直ぐ向かってくる。

 それは、まるで浮かび上がるような軌道であった

「1球とはいえ、遅い球の軌道をインプットしていた俺は」

「バックスピンを利かせ、空気抵抗による落下を抑制した遅い直球に即座に対応できなかった、って事だ」

 腕を組み、満足そうに話を終えた昌也に慎吾が吐き捨てる

「チッ、あのど真ん中もブラフだったって事か」

 より打ちにいく確立を上げ、なおかつ、油断するように。

 現に慎吾は絶好球と思い、その隠された本質に気付くのが遅れた。

 しかし、その考えは意外な答えで引っくり返される。

「いや、あれはど真ん中しか現状投げれなかったからそうしただけだ」

「「はっ?」」

 予想の範疇の中にはなかった昌也の言葉に

 慎吾も悠人も目を点にし、顔を向けられた昌也は慌てて弁解した。

「元々、投げ方自体が異常なんだあの棒球は、更に無理して指先の力だけで速球並みのスピンをかけようとするのにコントロールなんて出来やしないぜ」

 つまり、どういう事か。

 梢は棒球を投げる際も指先の力を抜き、球へとかける回転も速球よりかからないようにしている。

 それを逆にスピンだけかけようとすれば、難易度は各段に上昇する。

「抜いてるはずの力を一部分だけ逆に入れようとするんだ、変なところで力めば失敗するから、身体への負担も考えてとにかく何処に行ってもいいから投げれるようにだけ練習したんだよ」

「なるほど、な」

「しかし、それでも良く投げれたね」

 悠人がもう笑うしかない表情で尋ねると、昌也は小さく息を吐きながら答えた。

「まぁ、フォークで鍛えた指先の力やコントロールはあったから、ってのも大きいが」

 言いながら、肩を竦め視線を空へと投げる昌也。

 広がった青空に薄く膜引いた白い雲が風に乗りながらゆっくりと動くさまを見ながら、締めくくる。

「出来れば、もう投げる事がないようにしたい、な」

 何かに懺悔するかのように、少し格好つけた言い方は、

 慎吾と悠人を思考に落しながら口を紡ぐには十分な効果であった。


「んじゃ、時間もないしこっちの問いにもこたえてもらおうか」

「分かった、早くしろ」

 鼻を鳴らしながら不機嫌を解かない慎吾に悠人が窘める最中、

 昌也は意に解する事なく、尋ねた。

「なんでチェンジアップだってわかった」

「……ほぉ」

 途端に険しい顔を勝ち誇った表情に変化させた慎吾。

 だが、その問いを差し出したのは当然ながら横にいる悠人だった。

「あれは……雰囲気、かな」

「……はっ?」

 今度は昌也が意味不明な顔を作り、二人へ問いかける。

「気付かなかった?投げる時、ストレートやフォークは人が変わるというか、威圧感が出る、みたいな」

「いや、それは知ってるが……」

 実際、始めて球を受ける時も何かスイッチが入ったかのようにマウンドから向かってくるプレッシャーが違った。

「なら、誰よりも球受けてきたせいで分からなかったんだね」

「……なるほどな」

 横にいた慎吾は理解したようで、

 だが、目の前にいる昌也には未だ答えが見えず頭の中で梢のピッチングを具現化させる。

 振りかぶり、スムーズに動く重心移動から放たれた一球に、

「……まさか」

「気付いた?チェンジアップの時だけ違うの」

 コクリ、と静かに頷きながら昌也自身で納得させる。

 元々梢は感情がそのままピッチングに影響を与える厄介な投手。

 だが、一度波に乗せれば、

 それこそ心から楽しむようになれば、手が付けられないほど、彼女の投球は冴えわたる。

 心がそのままボールの力になる。

 だから、

「あいつ……棒球にするために力を抜くから」

「そう、あからさまに圧が無くなるんだよ、それも投球動作開始直後から」

 極端に言えば気がぬけたような投球。

 モーションは同じでも打者へと迫る気迫が全く違えば、何となく気づく。

「最初はこれも作戦なのか、とも思ったけど、よくよく考えれば投球練習でも同じだった事に気付いたんだ」

 ニッコリ、人懐っこい笑顔を浮かべながら横へと視線を上げると

 了解したように慎吾が言葉を拾う。

「それを聞いて、あの特大なファールと三振につながったんだよ」

 自らを弄るように吐き捨てながら放たれた話は、なぜか慎吾にスッキリとした微笑をもたらしていた。

「……そうか」

 そして、昌也も理解した。

 大山男子にとって、悪い言い方で単なる遊びでしかないはずだったのが、

 少なくとも二人にとってはあらたな収穫を得られた試合になった事を。

 来年、最後の夏に向かう慎吾と悠人にとっての糧になれた。

 その事実は昌也は微笑みをもたらし、

 ただ目の前の二人には悟られまいと、再び空を見上げ、その顔を隠すのだった。

こんばんわ、作者です。


前回に引き続きの説明会となります。

とりあえず、この後はもうラストに向けてって感じになります。

……いつも通り、予定から1ヵ月遅れの完結になりそうです(笑)

そして、誰も期待してないであろう(笑)新連載について、ですが

現状、どうしようか迷っています。

リアル関係はそれほど忙しくなく、至って普通ではありますが、

問題は何を連載するか、です。

今まで書いたものの続編をやるか、はたまた全く新しい物を書くか、

正直決めかねており、多分1ヵ月ほど、音沙汰なしに、もしくは永遠……。

まぁ出来るだけそうならないように決めたいとは思ってます。

とりあえず、まずはこの連載を全力でしっかりと終わらす事を念頭に更新していきますので

もうちょっとだけお付き合いください。


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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