表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10+1(イレブン)ナイン  作者: あまやすずのり
そして、11となる
91/94

そして、11となる 03

 昼休み、一通のラインによって忙しなくさせられた昌也。

 昼食もそこそこに、廊下へ出ると、目的地へと向かった。

 階段を昇り、開かれたドアをくぐると、

 そこには既に二人の客人が佇んでいた。

 あの日、転校初日に絡まれた二人は以前とは違っていた。

「悪い、遅くなった」

「大丈夫だよ、僕らも今来たところだ」

「……フンッ」

 穏やかな顔で迎える悠人とは対照的に

 厳つい顔を崩さず鼻を鳴らした慎吾。

 数日前に行われた試合を思い出す。

 最後まで気が抜けない勝負でこちらに軍配が上がった。

 だから、直ぐに打ち解けるのは難しだろうとは考えていたが

 予想以上に嫌悪感を隠さない慎吾。

 何となく昔の自分を思い出し、

 苦笑しながら昌也は二人の元へと足を向ける。

「よっ、新沼、もう疲れはとれたか」

 とりあえず自分なりにフランクに話しかけると、

 慎吾は怪訝な顔をしながら反論してきた。

「慎吾でいい、それよりも今日はちゃんと聞かせろ」

「あぁ、僕も悠人で」

「そっか、なら俺も昌也で、んで聞きたいのはラストの球、だよな」

 コクリと二人が同時に頷く。

 試合後、教頭や理事長が居たため、その場はすぐに解散となった。

 グラウンドには真澄と実松両軍監督含めた4人の大人がその後をしっかりと確認、話し合い、

 結果、グラウンドは守られ、昌也は晴れて大山女子硬式野球部のコーチとして入部が確定し、退学は免れた。

「ただ、こっちも聞きたい事あるんで後で質問いいか?」

「構わん、それより早く聞かせろ」

 相変わらず高圧的な態度な慎吾に少々癪に触った昌也ではあったが、

 悠人がクッションとなった事で少しずつ語り始めた。

「とりあえず、ラスト1球な、あれはストレート、だ」

「……だろう、な」

 ある程度は予想はしていたのだろう、

 だが、全く納得していない顔つきの慎吾に昌也は肩を持ち上げながら続けた。

「大方予想はしているだろうが、あれは単なるストレートではない」

「……もったいぶらずに核心部分を話せ、捕手連中の悪い癖だぞ」

 痛烈な指摘に流石の昌也も悠人へと顔を向ける。

 これには長年の付き合いがある悠人も苦笑いしかできなかった。

「……そうだな、慎吾はストレートを投げる時何を意識してる?」

「意味が解らんが……まぁ、球のリリースや体の使い方、だな」

 彼方へと視線を飛ばしながら放った慎吾の単語に

 昌也はズバリ、指摘するように指を突き付けながら言った。

「そう、体の使い方、それがあのストレートの答えだ」

「……答、え?」

「分からん」

 イライラが頂点に達しそうになる慎吾と微妙に納得した悠人に向けて昌也は続けた。

 佐々木 梢が最後に投げた一球の真実を。


「そもそも球速を上げるために必要な事ってなんだ?」

「それは……如何に球へと力を伝える、か?」

 悠人の答えに昌也は頷く。

「そう、じゃあその球へと力を伝える方法は?」

「そりゃ球をリリースする際のピッチングフォームで」

「……まさか」

 慎吾の答えに光明を得たように悠人が驚愕する。

 その姿は昌也をニヤつかせるには十分だった。

 だが、一方で慎吾には未だ理解が追い付いていないため

「どういう、事だっ!」

 一人除け者となった慎吾が喰ってかかるように説明を求め、それに昌也は答えた。

「つまり、あれは遅いストレートなんだ」

 果たして、

 ピッチャーにとって一つのバロメーターである球速。

 それを上げるには様々な方法がある。

 押し出す筋力を鍛えたり、リリースの仕方を変えたり、はたまた球の回転を変えたり。

「あいつ、梢はチェンジアップのようなストレートを持っていた」

 過去のショックによって生まれた棒球のストレート。

 梢自身は、全力のストレートとフォームが変わらない、

 だけど受けても痛くない球を目指した結果が思わぬ副産物を生んでいた。

「あいつのストレート、まぁチェンジアップは投げる動作で生まれるエネルギーが無意識に除外された球だったんだ」

「なん、だと」

 この答えに流石の慎吾も驚愕を隠せなかった。

 一般的なチェンジアップは握りを変える事で球への力を伝わりずらくし、

 より空気抵抗でブレーキがかかるようにする変化球。

 そのため、必然的にストレートと同じフォームになりやすく、

 速球と見誤る事でタイミングがずれるため、打者の空振りを誘う。

 しかし、梢の場合は違った。

「恐らくの推論だが、あいつは同じフォーム内で発生するエネルギーを球へ伝える前に逃がして放る事が出来る」

「それって……」

「ありえん……」

 前代未聞だった。

 通常であれば球へと伝える投球動作は一定の中で一定の力が発生し、

 それを白球へと伝える事で力となり、球速やスピンに影響を与える。

 もちろん、力んだり、緩めたりする事で力のコントロールは可能だが、投球フォームへの影響は否めない。

 すぐに見破られる材料となるのは明白。

 なのにそれを実践レベルで可能にしているのが梢のチェンジアップだった。

「もちろん梢のチェンジアップは球へのスピンも抑制していた、だから打者の手前でお辞儀するような所謂棒球になる」

「……待て、まさか」

 そこまで聞いた慎吾も答えが見えたようで、驚愕で顔が強張っている。

 その姿に昌也は満足しながら言うのだった。

「そう、だから回転を、ストレートと同じバックスピンをかけた事で生まれたのが最後に投げたストレート、ってわけさ」

こんばんわ、作者です。


最初に言っておきます。様々なツッコミあると思いますが、全部にお答えできる自信ありません。

まぁ、正直今回の話で梢の球について語っておりますが、完全に空想状態です、ハイ。

こんな非常識な事そもそも出来るはずない、とも思ってますので。

ただ、そこは、いわゆる現代風のお話として、受け入れて頂けるとすごくありがたいです。

いえ、本当に『ほ~ん、そうなんだぁ』で流して頂けると……マジで感謝です。

なに逃げ道作ってるんだよ、って後ろ指刺されそうですが、それで許されるのであれば……えっ?許さない?ごめんなさい許して下さい。

そんなわけで、ラストの章でやらかし気味にはなりますが、もう少しだけお付き合い頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ