家族
久しぶりの投稿ですいません…
これからもよろしくお願いいたします。
皆に囲まれて服屋にすら寄れなかった私は、シルエラに『仕方ない』という顔で風呂に入れられ、エヴァの服を拝借。
因みに、他の服は全て取り上げられ、やむなく洗濯行きである。
一息ついて、ドキドキしながら自室を開けると、何も…
何も変わっていなかった。
寧ろ、日の匂いがするふかふかなベッドは、『いつでも帰ってきてよかったんだ』と言ってくれているようだった…
そのまましばらく泣いた…四郎がコツコツ、窓をつつくまで…
四郎を紹介する為にシルエラを探すが、兵士と話中だったので、懐かしい、恋い焦がれた屋敷内を回る事にした。
勉強したテーブルを…
かくれんぼした屋根裏を…
背比べの傷跡を…
どれもこれもが小さく見えた…
たった2年…されど2年…
長かった…でも、あっという間だった…色んな事がありすぎて。
エヴァのベッドで勝手に寝転ぶ…
もう忘れてしまったエヴァの匂いにやっぱり癒されて、少しだけ…と目を閉じた。
『カナメ!…ご飯だよっ…カナメっ…』
「ん〜?もう少し…」
「起キロ!起キロ!……腹減ッタ!」
『喋るの!?凄い!!』
「フン!馬鹿ニスルナ」
『ふふふふ…ごめんね。』
うるさいな〜…四郎と……誰だ!?
ガバッと起きて、息が詰まる
『おはよう。カナメ』
「エヴァ!!」
大好きだった笑顔があった
体はあの頃より大きく固かった
嬉しくて嬉しくて、力いっぱい抱きしめた。
『おかえり…そして、ただいまだね』
「ああ、ただいま!…おかえりエヴァ…」
『うん…行こうか?父上が待ってる。』
「うん!…行こう!…四郎、行こっか。」
「早クシロッ」
「ハハハハ!」
部屋から出ると。角から顔を覗かせるウィルナード。
「ふふふ…ウィルナードっ?」
『ハハハ…バレてしまったな。おかえり、カナメ!』
「ただいま。ごめん…出迎えもしなくて…」
『ヨイショ!』
突然抱き上げられて、四郎が飛ぶ
「うわっ」
「…危ネェ!!」
『ん?大きくなったな、カナメ。』
「うん…こんなに待たせてごめん…」
『…漸く揃ったな!家族が全員!』
『そうだね』
『そうねっ』
「みんな…」
私がどうしても欲しかった暖かな場所…
そこに帰ってきたと、万年の思いが漸く報われたと、そう思ったのに…
「腹減ッターー!!」
邪魔するなよ…
ん?…ちょっと待て。何故そこにいる?
なんと、四郎はエヴァの肩に留まっていた…
『『…………』』
ウィルナードの腕の力がスルリと抜け、私も下に落ちた…
「四郎…お前、何でエヴァの肩に…」
「イイ匂イ…コイツ」
『ハハハハ…気に入られたのかな?』
は?
いい匂いって…確かにそれは認めよう。だがしかし!
「私にだけだったんじゃ…ないのか?」
「ン?…腹減ッタ!」
「誤魔化す気かー!!」
『四郎って名前何だね。何が食べたい?』
「ブドウ」
『あるかな〜?聞きに行こう…』
声を弾ませ、スタスタ歩いていくエヴァ…
遠ざかる四郎…
完全において行かれた私達…
ちょっと…いや、だいぶショック大きんだけど…
まぁ、そんなことで落ち込んでる暇はない。
私は今から話さなきゃならないんだから…
私の裏切りを、謝らなきゃならないんだから…
昔と同じ様にエヴァの隣りへ座る。
間に四郎が居るのは、この際ほっておこう…
「ウィルナード…エヴァ…話さなきゃいけないことが」
『それは食後にゆっくりと聞こうか…父さんも、話したいことがたくさんあるんだよ?まずは楽しい食卓を堪能しよう。』
「…うん、わかった。」
『じゃあな…今日は、家族に乾杯だな?シルエラ』
『ええ。これが、本来の形…。分かったわね、カナメ?』
「うん…」
やっと戻れた幸せと、出て行くと言おうとしてる現実で、何とも言えなくて…
『さぁ!家族の帰還に乾杯!!』
『『「乾杯!」』』
始まった食事と会話…
ウィルナードが話す、エヴァへの親バカ話。
それをサラッと否定する、やり手になったエヴァ。
男手が家を空けた間の日々と、今日、私が帰ってきた時の事を楽しげに話すシルエラ。
なんて穏やかな空気何だろう…
なんて幸せな場所何だろう…
ここは昔と変わらない。
変わってない事が嬉しい。
私は変わってしまった…
荒々しい食事に慣れてしまった。
ご飯はかき込み、酒を煽って騒ぐ…それが日常だった。
私には場違いだ…
家族との違いがどうしようもなく悲しい…
家族との距離が、泣けるほどに遠かった…
『カナメ?どうしたの!?』
「いや…何でもない。」
『カナメ…』
「…私、変わったか?」
『…変わった。』
「………」
『大人になった。』
「ハハハ…そうだな。」
『綺麗になった』
「…そんな事ないよ…」
『静かになった…大人になったから?』
「違う…わからないんだ…」
『何がわからいの?』
「私は食事の時どうしてた?前の私は…忘れちゃったよ…エヴァ…」
ごめん…ごめん…楽しい食卓をって言ってたのに…
暗くなるような事言って、甘えられる立場じゃない。私は最低な奴なんだから…
「ごめん…忘れてくれ。…作法、ド忘れしちゃったんだ。うん、もう大丈夫!」
『…教えてあげるよ。』
「ん?…思い出したからもう大丈夫だ。」
『カナメはね…お皿の上全部を空にして、漸く喋りだす。』
『喋る合間に…こうして、俺の肉を横から取る。』
私の皿から、エヴァの口に入り込む…
『騒ぐエヴァに、俺が、こうして肉をあげる。』
今度はウィルナードが。
『そして私がカナメを叱って、おかわりをお願いするのよね。』
シルエラ…
『そういえば、ルードの分も食べちゃった事あったよね?』
『ふふふ…ありましたなぁ。ん?あれは秘密だったのですが…』
『後で聞いたんだよ。皆で分け合ってるの見ちゃったから。』
『そうでございましたか…そういえば、今日の香味焼き豚はその時の物と同じですな。』
じわっと滲んできた視界…
『そうなんだって!良かったね。大好物で』
そうだった。これの日には、料理長が前もって教えてくれてた…
エヴァの笑みが優しくて、眩しくて、…後ろめたい…
それを振り切るようにニヤリと笑って、
「……おかわり…あるの?」
『もちろんですよ!3人分の予備は完璧です!』
使用人マイヤのドヤ顔に笑みを向ける…
「なら、残さないように食べなきゃな!」
『いや、俺が食べるから大丈夫だよ?』
「いいや。気を使わなくてもいいよ。私のだからっ!」
『無理しなくていいよ!』
『「………ハハハハハッ」』
「ありがとう。思い出したよ……でもさ、エヴァ、ずる賢くなったんじゃない?」
『失礼だな…ずるくはないでしょ…』
「金髪策士みたいにならないでくれよ?」
『ん?誰?』
「サルバルート家の三男坊…口が上手いんだ。手紙で書いてたろ?ヴィルって。」
『ヴィルって、ヴァリウスさんなんだ…』
「お、名前がわかるなんて、ちゃんと勉強してんだな!…まぁ、アイツには注意しとけよ?いつの間にか乗せられて、誘導されてるなんてザラだから。」
『………』
「…ふっ。そんなビビんなくて大丈夫だよ。嘘はつかないから、隠してる事を探れば何とかやり込める。」
『そ、そうなんだ…』
「うん。」
『そう、カナメ…ひと月程前な、お前を訪ねてきたハンターがいたんだが…』
「ん?誰?…私、仲間内にしか事情話してないけど…」
『名はなんと言ったかな?ん〜…シスルに聞けば分かるんだが…カナメによく似た青年でな。もしや兄弟かと』
「マキシム!マキシムだろ!?ケイナーって奴は居た?」
『そうそう!ケイナーかは知らんが、5人程一緒に居た中に居たのかもしれん…』
「マジか…これは殴りに来たんだな…」
『殴る?』
「いや、私は悪くないんだよ?アイツの復讐を止めたから、私を恨むなら殴りに来いって書き置きを残したんだ。…しっかし、ハンターになってるとは…くくくく…」
『カナメを恨んでるの?その人…』
「さぁ?…でも生きてるならいい。私だけを狙うと思うし、負ける気しないし。」
『ええ?駄目だよ…』
『全く…この子は危ないことしかしないんだから…』
「ごめんって…え、エヴァはどうなんだ?友達は」
『うん…友達は出来たよ。』
「どんな奴?仲よくしてんのか?」
『そうだね…面白い人ばかりだよ。』
「そうか…良かった。」
話には聞いていたけど、エヴァの表情を見て確信出来た。
勝手なイメージだけど、貴族社会は厄介事の巣だからと心配したが、エヴァも良い奴に出会えたんだろう。私の為に動いてくれたってシルエラも言ってたから、本当に迷惑かけちゃったな…。
しかし、自分から友達を作る…
エヴァみたいな奴に友達が出来ないかもなんて、少しでも考えた私が馬鹿だったな…
嬉しいな〜、人見知りで引っ込み思案だった弟の成長は。
『……カナメは変わってないね。』
「え?」
『都合の悪い事では無理矢理話を変えるし…』
「…アハハ…」
『人の事で喜ぶ所も変わってない。笑顔も変わってない。無茶することは変わってても良かったのにね。』
「……あ…い、嫌味も言えるようになったのか…」
『俺だって大人になったんだよ。』
私とさほど変わらない体は、固く引き締まっていた。
幼さが抜けてた端麗な顔は、もう弟なんて言えないなと思わせる…
落ち着いた声色は、もう大人のそれだ。
例えるなら、ビビりな子犬が、立派なゴールデンレトリーバーになった様な感じか?
「…そうだな。もう子供なんかじゃない。立派な男になったな。」
エヴァは驚いた顔をして、フワッと笑った…
昔と変わらない、輝くような笑顔で……




