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要の意味  作者: かなりあ
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幸せになる決意 

…………急に体が傾き、手を突っ張って事態を把握しようと見回す…


『うおっ』

「なんだ…ライネルか……」


私は机で寝てしまったようだ…


『折角負ぶってやろうとしてんのによ…』

「ごめんごめん。もう他は帰ったのか?」

『今闘王を見送りに行った。お前は俺らんとこに帰るだろ?』

「ん?当たり前だろ?」

『ほらな?だから言ったろ、マッド?』

『だがな…今日の内に話さなきゃいけねぇ事、あるんじゃねぇか?』

「…そうだな。…早い方がいい…かもな〜」

『…もうアイツに渡さなきゃいけねぇのか?』

「は?」

『……いや、いい…行くぞ…』



「マッド…ライネルはどうしたんだ?」

『兄貴ぶってんだよ』

『マッド!!』

「……ふふふ…ライネルっ。直ぐに戻るから待っててくれよ!」

『ふん…行ってこい行ってこい!先に寝とくからな!』

「駄目駄目〜、ライネル達にも話がある。」

『…なら、しゃあねぇな。早く戻れよ!』

『くくくくっ』

「はーい!了解で〜す。」




玄関先に立つ見送り勢…その中にいるアルのお父さんに、お礼ともう一度謝罪を…


アルとヴィルに『お疲れ』と声をかけ、玄関に押し込み、ライネル達にも手を振って分かれた…


「ギル…話をしようか」

『…ああ。部屋へ…』


歩き出したギルに付いていく…


「1人部屋なのか?」

『ああ。』

「ぐっ……」


それは助かるんだけどな…

助かるんだけど…緊張で胸が苦しい…

な、何で私が男の部屋に入るくらいで緊張しなくちゃならない!?

普通…普通だよ。何もおかしいことなんかない。

話をするだけだからな!他の用事なんかねぇから!

他のって……馬鹿が!ありえねぇ!



『…入れ。』

「も、もう着いたのか。お邪魔します…」

『…誰もいないぞ?』

「分かってる!ギルに言ったの!」

『そうか』

『うん、そうだ。そうだぞ…?』


うん、何気なくソファーに座ってだな…


「よいしょ」


………普通ってどんなだ?


『くくく…』

「な、何笑ってんだ!座れよ!話だ、話!」

『…ん。』


「何で横に座るんだ!前だ前!ほらっ、狭いだろうが。」


軽く押すが腰を上げないギル。

近いってば!落ち着かん!


『話しを聞かせてくれ』

「いや、向こう行ってくれ」

『話しを…』

「ああ!もう、わかったよ!…ホントに、何なんだよ…はぁ」


諦めて三人掛けのソファーの端に体をずらす。




『…エヴァンシールの話なんだろう?』

「うん…」


一息吐き出して、体ごと向き直る…


「…会える条件は満たしたんじゃないかと思う。」

『…何と話す?』

「最初から全てを話す…王都の屋敷から脱走した頃から今までを…。そして、約束を守れないということを…」

『…あの事で守れないと言うのか?』

「いや……お前のせいで守れないと言う。…いいか?」


逸らした顔を手で覆い隠すギル…


ええっと…夜の出来事で確証を持てた筈だが…

…いやあんな派手に告っといて今更なしとか?

引き止める為の嘘?

勘違い?……じゃないと……思ってたんだけど…


沈黙が……怖い……



『………』


ふと、動きをみせた…

見た目と反して、力なく、頼りない片手が私の方に伸ばされ…


「…ん?」


もうすぐ私に届くかというところで長さの限界が来たようだ。

何だかよくわからなくて、手を見ていると、腫れている事に気づいた。

咄嗟にその手首を持ち上げ、甲を見るために裏返す…


「お前、っ…」


その痛々しい手は急に力が入り、私の手首を掴んで、強引に引っ張った…

グラッと傾く体を逆の手が掴み、そのまま懐に収まる…


ビクッと肩が跳ねて、手で押し返しそうになった。が、思いとどまった…




『…やっと…やっと、俺のものになってくれるのだな?』



掠れた、濡れている声が、しっかりと私の耳に届いた。




「そうだ…私はお前のものだ。お前も…私のものだ……」




私の目からも雫がこぼれた…


私の肩に隠れた顔が数度頷く。




「好きだよ…ギル。………私、頑張ってくるから…もう少し待っててくれ。」


『ああ…待っている…』




ギルの顔が近付いてくる…


スッと目を閉じた


軽いリップ音が鳴り、目を開けて、飛び込んできた微笑みに吊られるように、私も微笑んだのだった……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー



ギルと別れ、兵舎へ走る…

走る!走る走る!変な火照りを冷ます!


迷いに迷って、1人机で眠るライネルを発見し、肩を叩いた。


「ライネルっ、待たせたな。」

『ん、お…おう…どうだったんだ?』

「どうって…まぁ…うん、ハッキリさせてきた。」

『俺にもハッキリ教えてくれ。』

「…待っててくれって言った。だから近々ナハルに行きたい…そして…その後の事はまだ話してないけど、ギルの領で住むところを探すと思う…」

『つまり…』

「…剣聖を抜ける」

『そうか…だよな……』

「うん。…ライネル…」

『ん?』


「私は、ライネルにしてもらったこと、何も返せてない…夜の事だって、お前が居なきゃここにはいなかった…どう返せばいい?どうすれば報いることが出来る?」


「馬鹿だな〜。返す返さないじゃねぇの。俺も、団の奴らも、皆お前の身内なんだ。お前が幸せになればそれでいいんだぜ?カナメ。」



『……カッコ良すぎだお前……』


何だろう?何の涙だろう?…何で私は泣いている?


ライネルが横に座るのを感じ、抱きつく。


『よしよし…お前が思う最高の幸せを手に入れろ。』


言葉にならなくて…それでも、そう言ってくれるとわかってたような気もしてて…それが嬉しくて…何度も頷いて返す。


『…それが俺の幸せだ…なんて言ったらクサいか?』

「…うっ…クサい…クサすぎ……」



私は……寂しいんだ。

辛く当たっても、しつこいくらいに構ってくれた…

何かあると直ぐ駆けつけてくれた…

どんな時でも笑って側にいてくれた…

私を甘えさせてくれた…


離れるのが寂しいのだ……



「私…幸せになるよ…」



『ああ。…またおかしなことになってやがったら、殴りに行ってやっからな…』

「…うん。ずっと…私の兄ちゃんでいてくれ…」

『当たり前の事言ってんじゃねぇよ…一生涯、お前は俺の妹だよ。』



もう既に、私は幸せだ…


だけど、まだ、大事な家族が残ってる。

受け入れてくれるかわからない…それでも会いたいと思う。

ウィルナードの親バカ発言を聞きたい…

シルエラのおかしな発想を聞いて笑いたい…

エヴァのキラキラした笑顔が見たい…

何気無いことを、私はずっと焦がれていた。

今度こそ諦めずに…自分の手に!


「必ず…幸せ全部、手に入れる!」


『おう!この機会、絶対逃すな。一つ残らずやっちまえ!お前なら出来る!』


お互いに、ぐしょぐしょな顔で向かい合って、笑った。


ライネルも、私の家族だよ。



大好きだ






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


夕方まで眠りこけたその晩、功労賞授与式が行われた。

まぁ、そんな物は名ばかりで、傭兵だけのゴロツキ連中だ…厳かな物ではない。

将を落としたチームの代表者が特別報酬の紙を受け取り、後は契約通りの報酬をハンター組合から受け取る手筈になっていた。その辺の管理には私は関与していないので「へぇ〜こんなもんなのか〜」ぐらいの話である…

まぁ、団の名前が呼ばれた時はテンション上がったけどっ!


そして、宴会になだれ込んだ。

わいわい言いながら闘王の乾杯を待っていたら…やっぱり余計なことをして腐った闘王おっさん


『剣聖団カナメ!こっちに来い!』


「は?」


私でなくてもそう言う筈だ。


だが仕方がない…ハンター界のトップ直々の呼び出しだ。行かなきゃいけないんだよ…例え何か企んでると分かっていても…


『コイツが今回勝利の要!』

「…………」

『敵、総大将を討ち取った!…いや、捕らえた。王から褒美を賜るだろう!』「………」

『名はカナメ。黒蛇の魔女!!皆、覚えたか!?』

「はぁ?ありえねぇ!!やめてくれ!!」

『小尚な二つ名にしてやったんだ。感謝しやがれ!ハハハハッ』

「何処が…何処が小尚だ!?嫌だーーー!!」

『此度の戦勝を祝って…乾杯!!』



ーーーーーーーー乾杯!!!!ーーーーーーーー



私の抗議は祝杯の声にかき消され、私は地に落ちた…


終わった……

がむしゃらに飲んで、酔って、忘れたかった…

無かったことになればいい…

そんな都合のいい事を願って酒に縋った夜だった……






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