謝罪
深夜にも関わらず、ギャーギャー大騒ぎで北門へ引き返して行く…
アル達は、余分に二頭の馬を引いて来ていた。
3人居るというのにふざけているとしか思えない…言わなくても分かる気の回し様に殴りたくなるが、既に私は一頭手に入れた!奴の悪巧みを回避したのだ。奴とアルの二人乗りを笑いながら『許してやろう』そう思った。
最後尾で門をくぐり、1人馬から下りる。
「先程はすみませんでしたぁぁー!!」
門番の騎士に頭を下げ、キリッと真剣な顔を作る…
『……後に連絡があったから良いものの、今後一切許さんからな!さっさと行け。』
「誰から?…いえ、誰から連絡があったのでしょうか?」
『ハリストン様だ。温情を感謝するように…』
「ありがとう御座いましたぁ!!」
『うるさい!時間を考えろ!』
「ハハッ、了解です。お仕事中失礼しましたっ!」
『うむ…』
『ねぇ、何したの?』
「べっつに〜」
『………』
『明日聞けばわかることだぞ?言っちまえ!』
「別に言っても良いけど、大したことじゃないぞ?…走って、木の棒を立てて飛び越えたんだ。そん時門番が怒ってたから謝っただけ。」
『ん?木の棒でどう乗り越えられるってんだ?』
「木の棒って言っても長いぞ?あの門に足をかけれたからな…でも、なんであんな棒が落ちてたんだろ?」
『…門に足をかけただ?……お前…』
『…あれは長柄槍の柄だ。門番が呆気に取られるのも無理はなかった…』
『ギル、見たのか?』
『…ああ。毎度の事だが肝が冷えてしょうがない…』
「いや〜、あれは良くしなったね〜。いい木を使ってるよ。全然槍には詳しくねぇけど!ハハハハッ」
『柄が…しなる?…門に?……全然意味わかんねぇ…』
「棒があるなら明日やってやるよ!」
『やめろ…闘王から目を付けられているのだろう?』
「……はぁ…めんどくせぇ…」
何でもないように戻ってきたが、アルやヴィルの慰めなどさして意味はなかった。何故なら、私はそれを目の当たりにしているのだから…
それは、玄関脇に立て掛けられていて、私がやった行いを再確認させられた…
「……アルのお父さん、ホントに怒ってないのか?」
『大丈夫だって言ってんだろ?ほら行くぞ!』
『すげぇ!足形ついてやがる!ハハハハッ…カナメ、足でかいな!』
「ライネル!そこじゃねぇだろ!ああ…すいません、すいません…」
『扉に言ってどうすんだ。馬鹿が』
『…俺も謝らなければならない…共に頭を下げよう』
「ギル…何した……?」
『………』
『実際に見ればわかるんじゃないかな?ふふ』
「……どうしても行かなきゃいけないのか?」
『『『駄目!』』』
「…わかったよぅ……」
コンコンッ
『只今戻りました…』
ーーーー入りなさいーーーー
『失礼します。』
続々と後に続き、最後に息を吸い込んで踏み込んだ。
ガバッとアルのお父さんへ頭を下げる…
「数々の無礼や御迷惑をおかけし、更には扉を壊した事…誠に申し訳ありませんでした!…」
『私も立場を考えず行動を起こしてたこと…卓を破損させ、申し訳ありませんでした…』
ん?卓を破損?
…ま、まあ、平謝りするしかない。
怒鳴り散らし、扉をぶっ壊し、門番にも話を通すその手間も…普通であれば、そのままお縄に着く事は必至。それを許してくれると言うのだから、誠心誠意の謝罪を御領主様に……
『良く戻ってきてくれたね…カナメ殿。ギルには男気を見せてもらって嬉しかったよ。さぁ、今度はゆるりとしていなさい。』
肩に手を回され、起こされる…
間近にある優しい顔にコクンと頷いた。
そのまま椅子まで促され、腰を下ろす。
『おい、カナメ…グラスを取れ。』
目を合わさないようにしてたというのに、名指しで命令する、態度がデカいこの闘王…
言われるままに手に取るが、無言を貫く…
並々と注がれるワイン…
コイツは馬鹿かと思いつつ、傾ける手の動きだけを見ていた。
『飲め!』
「頂きます…」
少し辛いが旨い。いや、カラカラの喉には何でも良かった…喉を鳴らして飲み干すと、もう一度と催促する。
もうコイツには敬意も糞もない!
「おかわり!」
『ガハハハハ!飲め飲め!』
「私ニハ、無イノカ?」
『おお!』
「四郎!待ってろって言っただろ!?」
「フン!知ルカ!」
窓から肩に飛んでくる
「腹減ッタ!」
『ブハハハハ!何が食いたい?…どれがいい?』
爛々と皿を差し出す闘王と、テーブルに飛び移った四郎の絵…
1人を除いて、それをクスクス笑い、見物するその他…
「はぁ〜…もう、勝手にしろっ」
言った途端にチーズを咥えた四郎だった…
『父上は……どれぐらい呑まれましたか?』
『5杯程かな?いつもより早く潰れたね。今日はお父上も心労のかかった日だったのだよ…そして嬉しい日でもあったのだ…もう少しそのまま寝かせてあげなさい…』
『………ありがとう御座います』
アルのお父さんは何て…何ていい父親なんだ!!
と、感動していると、私にも目を合わせてきた…
『今日はすまなかったね…』
「いえ…私がしたことの方があまりにも…」
『だなっ。お前は破天荒過ぎる。ククク』
チッ!割り込んで来やがって!闘王!
「…どんどん掘り下げてくるからだろ?」
『カナメっ』
『ククク…まぁ飲め。飲み干せ!』
「…酔わせて吐かせる気?」
『くくっ…なぁ?他にもなんか知ってんじゃねぇのか?俺らの知り得ない話とかよぉ…』
「なっ!?アル!お前…」
『言ってねぇ!…ホントだぞ?前に旅の事を話しただけだ!』
『ほーら、お前にはなんかある…くくく…』
「……何にもねぇよ!」
『どう手懐けてやるかなぁ…楽しみだ!ハハハハッ』
「ほっといてくれないか?私は只のハンターだから。」
『只の、ねぇ……今回の事で、お前がなんて言われてんのか知ってっか?』
「…何て?え?」
『くくく…黒髪の戦乙女、白黒の雷、白一点の黒大蛇は良い方で、狂乱魔女、黒鬼の生贄…後は、』
サッと血の気が引き、机につっ伏し、顔を隠す…
二つ名…私に…私が…二つ名……
「やめてくれ〜!!恥ずかしすぎる…人生最大の汚点だ…」
『聞かせてやる聞かせてやる。くくく…どっから漏れたのか知らねぇが、爆破神やら、爆裂女魔導士なんてのもあった。ハハハハッ』
闘王と一緒になって笑っている男共…うん、アルのお父さんだけ許す!!
しかし…他人事だからって!くそっ…
ライネルの二つ名が可愛く感じるのが悔しすぎる!どこの暇人が考えてるんだよ…
「…中二病だよ、この世界の奴ら…」
『??…この世界た〜大袈裟だな』
「………ソウッスネ…」
大袈裟でもねぇんだけどな…理由は絶対言わないけど。
『ま、只のハンターだった剣聖カナメは、今回盛大に名を売っちまったわけだ!俺は狂乱魔女を推しとくぜっ』
』
「いやいや、闘王の影響力考えて?それで決まっちまうから!どうせなら二つ名禁止令だしてよ、バズフロール様ぁ〜…」
『こんな時だけ媚び売るかっ!誰が聞くかよっ、ハハハハ!』
「そんな〜…町歩けねぇよ…」
『バズフロール様!黒鬼の生贄って、カナメなんですよね?それじゃあ黒鬼って…』
ヴィルの言葉で、皆のニヤついた視線がギルに飛ぶ
『そうだ。ギルは黒鬼らしい。ハハハ、ガルディーが喜んでたぞっ』
「………生贄…」
『そんなに間違ってはいないよね〜?アル。』
『だな!』
「………」
盛り上がり始めたアル達をほっといて、スバルの所に行く…
「スバル…こんな遅くまで待たせてごめん。…皆の被害はどうだった?」
『カナメ殿……』
「ん?」
『…聞かずともよいのです…貴女は我々の為、死力を尽くして下さった。感謝の言葉に絶えません…』
「そ、そんな…まぁ…頑張ったよっ。…スバルもメシアム捕ったんだろ?やったな!」
『ジグルード殿のおかげです…』
「そっか…良かった。まだ王との決戦があるんだ…会うまでに、口の巧さを鍛えないとなっ!ハハハ」
『ハハハハ…カナメ殿はもう少し使い方を習われた方が宜しいでしょうな!』
「失礼な奴だな〜。自覚はしてるんだぞ?…カッとなると出ちゃうんだよな〜。」
『クックックッ…』
「あのさ、スバル…」
『…はい』
「今だから言うけど、私は御使い様じゃないんだ…」
『…ええ、存じております。』
「…やっぱりな。でも…最初から?」
『…最初からといいますか…確かめてみようと思ったのです。…もし始めにお会いした時、救うと仰られたら直ぐにお連れして試すつもりでしたし、』
「こ、恐っ!」
『ふふふ…ここだから言いますが、私も意図して、信仰し、盛り立てている立場でしたので、とても現実的に思えなくても、そう周りに言い聞かせて来ました…。それが、我々の存亡をかけた時に現れた…本当に居るのだと驚きましたし、感動と同時に疑いました。』
「だよな…だってアレが神の鳥なわけだろ?……ないな。私もこんなんだし。」
『私はあの時、カナメ殿を信じましたぞ』
「…皆の手前だろ?」
『いいえ…貴女からあの時、鬼気迫るものを感じました。…そして何より、その髪でハンター達と共に笑う姿が、今後の自分達になるのではと思い、私の諦めた心に光が差した…。やはり同族贔屓なのでしょうね…ムリード殿に良くして頂いたというのに…』
「私は、本当に助かったよ…もし説得出来なかったら、この国で生きる事は諦めなきゃってな…。ムリードな……都合良く、処刑されなかったとかいう旨い話…ないわな…」
『………』
「でもさ…私は自分の事の方が大事だ。アイツの分も生きていくさ…」
『ですね……カナメ殿は今後どうされるのでしょうか?』
「今後ね……まだわかんないな〜。私を育ててくれた家族次第かな…」
『あの方とは…』
「わからない…私、結構モテモテだから。ふふふ…」
『……聞かれておりますぞ』
「えっ?……地獄耳」
睨むギルが眉をピクリとさせた。
「くふふ…あぁ〜あ、もう今日は私もいっぱいいっぱいだ!」
と、言ってるのに、スバルやアルの兄ちゃん達、他の貴族が出ていっても、帰らせてくれることはなかった…
全てアイツのせいである。
闘王バズフロールの……




