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要の意味  作者: かなりあ
56/63

残された男達

『糞野郎ーー!!!』



バーンッ!!


ガンッ!


ーーーー何事だ!?ーーーー

ーーーーーおい!!待て!ーーーーー

ーーーー御無事ですか!?ーーーーー



『……嘘だろ?アイツ…ブッ壊しやがった……』





『ふざけるな!!!!』





キーンと耳に痛みが走る…俺の主…ギルが叫んだんだ。


『カナメを…女一人を追い詰め…その上馬鹿にするなど…貴様ら許さんぞおぉぉーー!!!』




拳を叩きつけ、めり込みミシリと鳴いた頑丈である筈の卓…



静まり返った空間に、ボソリと何かを言い始めたヴィル……


『……ギル…ギル…追いかけて!こんな事で手に入れたって嬉しくない…気持ちわかるよね!?早く!間に合わなくなる!!』


大きく訴えるその言葉に、過去に一度見た、怒りと辛さを窺える感情を露わにした…

瞬時に扉があった筈の場所に駆けたギルが、殺気を纏って振り返った…



『これで捕まえられなかったら、親父を殺す!!」



『…俺?…ああ、行っちゃったなぁおい……』


あっけらかんとした親父っさんの言葉に、ふと力が抜け、親父っさんに乗っかった自分に後悔の念が押し寄せる…


『…ああ!!俺も行ってくる!』

『ライネル!!……お前が行ってもな…』


剣聖の団長の発した言葉に、自分が探しに行く事は意味のない事だと言われたようだった…



『…何だ?…アイツら取り合ってんのか?』

『はぁ…違います…カナメは妹分なんです。特にアイツは溺愛してて…。闘王…いや、バズフロール様…どうかカナメを見逃して下さい!私情ですが、アイツも色々あって、やっと立ち直った所なんです!仲間をこれ以上苦しめないで頂きたい!!』


『俺からもお願いします!俺も知りたかったけど、これ以上カナメに辛い思いをさせたくありません!まだ追い詰めようとするならば、俺の何を使っても、バズフロール様を止める所存……どうか今回だけは、目を瞑って下さいませんか……?』


二人と同様…立ち上がって頭を下げる…

大切な仲間。アイツらの為なら!!



「お願いします!共にハンターをしていた仲間なんです!…俺はあの時何もしてやれなかった…何も持ってない俺は、命しか賭けるものはありません!俺の命と引き換えに」



『馬鹿か。そんぐれぇで命捨てんなよ…。久々胸踊ったっつーのに、お預けってわけか…まぁ、俺も女虐めんの趣味じゃねぇしよ…』


『『「では(じゃあ)?」』』


『ああ。…お前らめんどくせぇし、諦めてやるよ…』


『『「ありがとう御座います!!」』』



『でも俺は目を付けた…しばらくつきまとってやる。くくく…』



『ええ?…そっとしておいて下さいよ…やっとギルと一緒になれるのに…』


唖然としちまったが、激しく同感だ…


『別に邪魔はしねぇよ。遊んでやるだけだ…はぁ、面白ぇ…それより、あの馬鹿力なんだ?あの体でよく吹っ飛ばせたな……おお!足形付いてやがる!ハハハハッ』


『…本当ですな…これ、防火扉ですぞ…中にほら…鉄板が…』


『おお!俺、蹴られてたらヤバかったかもな!くくく…』


『俺も見せてくれ!…おお!俺の息子は見る目ある!そう思うだろ?バズ!』

『おうおう!ぜってぇ捕まえろよ?あんな娘何処探したっていねぇぞ?』

『今度ばかりはあのヘタレ息子もやるだろうよ!』

『俺を睨む面見たか?ギルもあんな顔すんだなぁ。』

『ギルは感情を我慢しているだけでしょう。ヘタレではないですよ。』

『俺みたいにかっさらう気概をみせろってんだよ。』

『お前のは本当に誘拐だぜ?』

『あれは賛成できませんな』

『リヴィまで言うか!?』

『『ハハハハッ!!』』

『ローゼは幸せだと言ってるぞ!』

『『今は、だな(ですね)』』

『チッ…』


盛り上がっている父上と闘王とギルの親父っさん…

まぁ、和やかな雰囲気になったことでホッと一息ついた。



『良かったな…ヴィル、アル…マッドもな…よくやった!』

『兄さん…親友だよ?いくらだって頭下げれるよ…』


『お前は命賭けるとか言ってんじゃねぇぞ!!』


頭をはたかれ、二の兄の久しぶりのそれに、ガキの頃の苛立ちが湧き上がる…


「いってぇな!仕方ねぇだろ…俺が持ってんのはそれだけなんだよ!」

『はいはい、いつもの卑屈が始まった…もう、それ治ったかと思ってたのに。』

「うっせぇな…ジグルードさんみてぇに兄貴らしいこと言えよ!」

『久しぶりだな、弟よ!!』

「離せ!抱きつくな、気持ち悪ぃ!」


次期当主何だぞ兄貴!威厳も糞もねぇ!

兄2人に絡まれ、揉みくちゃにされていると…




『…本当に聞かずとも良いのでしょうか?』


皆の殺気が、事を蒸し返す言葉発したランディル男爵に集中する…


『あ?』


闘王がゆっくり歩み寄り、俺までも恐怖を感じる圧迫感…


『…お前な…話は終わったんだ。…もし、アイツになんかしてみろ?一族郎党皆殺しにしてやるからな…覚えとけ!!』

『ヒィッ…』


『それとな…今日の事、どっかに漏らしても殺っちまうからな!!カナメの話した方法で通せよ?…』


『ハイ!…わかりました…』


『よし。』


闘王の威圧感が消えはしたが、ニヤリと笑う顔は顔面凶器だ…

ふと、さっきまでやりあっていたカナメがすげぇ奴だと思えてきた。

なんであれを前に言えるのか…恐いもの知らずだと思ってたが、そんなもんじゃあそこまで頑なになれはしない…

暴言はなんとも言えねぇけど、心底カナメを尊敬するぜ…


『カナメ殿は…大丈夫でしょうか?イベルナ族総員で』

『大丈夫ですぞ。明日までに戻らねば、騎士総動員しますからな!安心して下され。』

『そうですか……我らはどうしてカナメ殿に報いる事が出来るのでしょうな…』

『笑ってたら良いんですよ!幸せそうにしてたら喜んで飛んできますよ!たまに跳び蹴りされますが…』

『ふふふ…あれには驚きましたな!』

『お前、アイツの喰らったのか!?よく無事だったな!』

『落ちた衝撃が痛かっただけなんで、手加減してたんでしょう。』

『いや、それにしちゃあ飛びすぎだろ?あん時は俺らも笑わせて貰った!』

『どんぐらい飛んだんだ?』

『うーん…このぐらい?』

『ちげーよ!こんぐらいだ!』

『ブハハハハ!』



カナメの話をつまみに、酒を呑みながら帰りを待つ父上達…


2人で戻って来るように、柄にもなく月に願ってみたりした…


俺なんかよりよっぽどいい人間なんだ…

アイツらは、幸せにならなきゃいけねぇ…


どうか2人の想いが通じますように…







……ん?ちょっとまて…アイツら、戻ってくんのか?


『やべぇ!!』


『なに?どうしたの?』


『アイツら、聞き出さない事知らねぇ!』

『あ…』

『どうすんだ!?2人で国外逃亡なんかしやがったら…俺行ってくる!!

『待て。…うっかりしてましたな〜ちょっと失礼を…』


窓を開け、二度手のひらを叩くとサッと影が落ちてきた。


『黒髪の娘は何処か…』


ボソボソと聞き取れない声がして、父上が頷き振り返る…


『ふふふ…北門を飛び越えて行ったようだ…ギルも神風も通ったと。そこの馬を使っていいぞ。』

『俺も行ってきます!』

『俺もいいですか?』

『行ってこい。カナメ殿に待ってると伝えてくれよ。』

『わかった!!』



まだ居てくれよ!


遅すぎる出発に不安はある…


でも、俺に何も言わずに行く様な奴じゃない事に確信を持っている。


馬に跨がり、3人連れ立って走り出したのだった……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー



『何処行きやがった…はあ、はあ…』



不甲斐ねぇ…

情けねぇ…!

守るべきカナメを、守るどころか、何も言えやしなかった…


カナメの苦悩の意味がわからなくて…

何故広まったらと思うんだ?それほどの物を隠し持ってたのか?いや、身近な物って言ってたな…

だが、それは誰も知り得ない事だという確信持った発言…

何故そんなことを知ってんだ?灰は臭い消し?医療用の酒?なんだよそれ!!知らねぇぞそんなこと!!


そんな事を考えちまって…

俺の事も信用してないと言われてるようで…


カナメが詰められてるっつーのに、俺は!!

俺は何してんだよ!!

カナメがどう思おうが、味方で居なきゃ行けねぇのに…

何が兄ちゃんだ!



『くっ……カナメーーー!!』



アイツならどうする?

俺がカナメの立場なら…何処に行く?

領主館で貴族や闘王相手に怒鳴り散らし、扉を蹴破って逃げた…

状況的にマジやべぇ…

追われる事必至。国には居られねぇ…

居られねぇ?なら、アイツは国を出るつもりか!?

んなことさせねぇ!このまま別れるなんてありえねぇ!


国を出るなら北に行くか、船しかねぇ…

船?……肌身離さず持って行く荷物!アイツ積んだままだ!!

やむおえず置いて行ったあれを、明日取りに行くって言ってた筈だ。

俺なら取りに行く!そんだけ大事にしてるもんが入ってんならな!

絶対船に居る!!


夢中で走る…

だいぶ距離のある場所だ…馬がねぇから着くまで時間がかかる…

だが、神風の名に賭けて追いついてみせる!!

あの頃みてぇに戻らないでくれ…

どうか変な事考えないでくれ!!!




町を漸く走り抜け、門番に詰め寄り、荒れた呼吸を飲み込んで叫ぶ。



「黒髪の女が通らなかったか!?」


『またか…俺らを飛び越えて出て行きやがったぞ!』


「すまん!助かった!!」


言いながらまた走り出す…


『もう1人も行ったぞーー!』



ギルの野郎に越されたか…

アイツの事、わかってんだな……


もしや俺は邪魔なだけ?帰るべきか?


いや、最悪、あの時みたいに手放す真似しやがったらどうすんだ!

そん時俺が行くべきだ!居場所になってやるべきだ!

兄貴ならどんな厄介事を抱えた妹でも、側にいるべきだ!




川岸を走っていると、声が聞こえた…


月が丸い今日は良く見える筈が、動く草木しかわからない…


『ーーー!ーー』


あっ…叫ぶような甲高い声…

何と言ってるかは分からないが…あっちだ!


巨木が一本ポツンと立つ、そこから聞こえる話し声…

盗み聞きなんか駄目だと思いつつも、調度近くに丈の長い草の中に潜んでしまった…



兄の特権だと言い聞かせ、耳を澄ます……




「ここで決めなきゃカナメは渡さねぇぞ…ギル…」





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