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要の意味  作者: かなりあ
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鬼だった筈のセシルと隠れたまま様子を見ていると、イベルナ族達がゾロゾロと定位置に戻りだした。

内心気合いを入れて立ち上がる。そしてゆっくりと歩き出した…


スバルは私に気付くと、心なしかホッとした表情を見せた。

横に居るジグルードさんとの間で、何か困るようなことがあったのだろうか?

肩に飛び乗ってきた四郎と、服を未だに掴んでいるセシルを引き連れて、スバルの所へ向かった。



『おぉ〜これが噂に聞く青蘭鳥!』

「ヨ!待タセタナ〜」

「四郎…」

『おう!…あ?今、今…』

『隊長…それは後で…』

『………す、スバル殿…話を進めて……いいや、ちょっと待て。喋ったよな?』

『そうですが、皆、待っておりますから!』

『そうですがと言ったな?聞き間違いではないんだな?!』

「ウ〜ウ…ウルセェッ」

「……四郎!シィー…」

『…うるせぇ?クハハハハッ』

『隊長!』

『いや、くくっ、すまん…ふふふふ……ん。スバル殿…この姿ならなりきれておりますかな?』


両手を広げて、じーじと似た茶目っ気たっぷりの笑みを見せたジグルードさん。


「…………皆!認めるが、よいな!?」


ーーーー御意!!!ーーーー


思わぬ大音量にビクリと震えた。スバルと目があったので、見られてしまったと苦笑いで頷いた。



『では…今一度、力を合わせ、戦いましょう!!』


「はい!!」





それから、出動時間だけを皆に言った後、各自思い思いに休息をとり、主立った者達が松明を囲んで話し合いを始めた。

私もその輪に黙って参加している。


話の内容は、明日の細かな作戦…

とりあえず、イベルナ族と私以外濡れては即バレするので、川に落ちれば最悪だ…なので、スバル達の乗ってきた帝国船を川岸に付け、帝国軍に素知らぬ顔で降り立つ。あくまでも騙し討ちなのだから、全員の『演技』に懸かっている。その間にさり気ない陣形成型を行い、突撃……


それから、今必要なイベルナ族への支援物を聞いたジグルードさんは、それを書き留めさせ、数日中に船で運ぶよう、スバルの目の前で書状を書いた。

戦時中で食料をかき集めるのは至難の業だが、ジグルードさんは出来る限りの誠意を見せたのだ。

わだかまりが全て消える訳ではないが、今までの危うい綱渡り状態から各段に良い関係になったと見ていい。

なんせ信憑性もクソもない神鳥様と御使い様が唯一繋ぐ糸だったのだから…

胡散臭い喋りの鳥と、イベルナ族でなく地球人の私…

勘違いも甚だしいが、私が魔法を使う事より、アルタイン国がしてくれる事の方が何倍もイベルナ族にとって最良なのだ。

まあ、戦果を挙げなければ確実ではないのだが、例え失敗に終わったとしても力ある公爵、侯爵、伯爵の三拍子がどうにかしてくれると、私は分かっている。失敗する気も、戦争に負ける気もないけど。



この夜が明けると、私達の戦争が始まる…


『戦争』


盗賊とは違う…

敵も味方も国の為に戦い、上の命令で殺戮を行う普通の、善良だろう人との殺し合い…


そうであっても負けられない…

守りたいものがある…

味方をしたい人がいる…

何より、自分自身の運命を変える為に!!


攻められる理由すら知らない私達だからこそ、相手に同情や憎悪もなく、余計な事を考えずに自分達の意志で戦える。

私達は、この無謀な作戦でも、必ずやり遂げてみせる!


変に高揚したこの気持ちは、何にも例えようがなく、ハラハラと落ち着かない…

戦前だからだと言い聞かせても、視られてる感覚は誤魔化せなかった…

そう、私は別の意味でも緊張していた…


そうこうしてる間にジグルードさんと従者は騎士達の所に戻り、スバル達も去っていき、マッドやライネルも肩を叩いて消え、グレイトピエロの面々だけになった。しら〜っと立ち去るつもりだったが、視線を振り切るなんて出来ようはずもなかった。



『カナメ、元気そうだなっ!』


アルがニカッと笑って沈黙を破った。


「うん、見ての通り、元気だっ」

『跳び蹴りされるとは思わなかったよ!』

「アハハハ!ヴィルが手なんか広げるからだよ!感動の再会ぶち壊してやった。くくく」

『クククク…』

『ホントだよ!…でも、熱い抱擁で帳消しってことにしといてあげる。ふふ』

「ハハハ…そういや皆…老けたな。」

『失礼な!1年でそう変わらないよ!』

『そうだ!俺はお前が変わりすぎてビックリだ!』

『あぁ。…子供ではなくなった…』

『そうだ!…なんだ?女らしく髪も伸ばしやがって…それに、その乳はなんだ!?』

『アル…』

「やっぱりそこ見るわけか!ハハハッ!変わんねぇな〜エロ魔人!」

『でもホントだよ…背丈も胸もあって、その細さ…麗人と言っても過言じゃないよ。』

「大げさだな!私はハンター服だぞ?…まぁ、さらしにしても意味なくなっちまって、今流行りに流行ってるブラにしたからな…」

『あれ凄いよね!裸より厭らしい感じでさ!』

「ヴィルの女性遍歴なんて聞きたかねぇよ。くくく…あれ実は、私の世界の物なんだ。」

『『え(は)?』』

「ゼルスで女装したろ?あん時服屋の店主に見せたんだ。そしたら、完全に忘れてた頃に町の服屋に飾ってあったんだ…ビックリしてさ…」

『何?なら、カナメは今お金持ち…?』

「ハハハッ!んなわけねぇじゃん。勝手に荒稼ぎしてんだよ。私も別に文句はねぇし、手に入りやすくなったからいいんじゃねぇ?」

『勿体無い…』

『マジか…あれがお前の…』

『……あ!忘れてた!これは会って伝えたかったんだよね……あの、盗賊に乗っ取られた村の子覚えてる?』

「ああ!カリストファーとメイリーン?!会ったのか!」

『会った。父親の方は片腕無くしたけど、両親共に生きてた。』

「そうか…よかった…よな?生きてりゃそれで。元気そうだったか?」

『元気だったよ。畑仕事手伝ってた。メイリーンはお転婆だよ…引っ張り回されて…それより、カナメに会いたがってたよ。』

「ハハハッ!そうか。今度行かなきゃな!」


盛り上がっていたのに、ふと沈黙が流れる…


『………前に戻ったみてぇだな…』

『…ああ。』

『だね』

「そうだな…寝なきゃいけねぇってのに…」

『いいんじゃね?一夜漬け!寝ろったって無理な話だぜ。』

『そうだね。カナメに会ったんだ…しょうがないよ。』

『ああ。今寝ようと変わらんだろう…』

「しゃーねぇなっ!付き合ってやるよ!」

『てめぇ、やっぱ生意気坊主のままだな、コラッ!くくく』

「髪の毛混ぜんなよ〜私はもう30歳なんだぞ?撫でられる歳じゃねぇって!」

『まーた精神年齢の話か?!』

『30歳が跳び蹴りなんてしないよ…』

『クククク…綺麗に決まってたぞ。カナメ』

「ギル、私もそう思った!」


………………


ーーーーハハハハハッーーーー



はぁ、涙がでる。

笑い泣きだ。

懐かしさと嬉しさとが相まって、どんどん滲み出てくる…


とっさに体育座りをして、膝に顔を埋める。


漸く収まり、顔を上げると私を挟んで微笑んだ3人と目があった。


「なんだよ…近ぇな」

『そんなに俺らと会えて嬉しいか!?ハハハハハッ』


笑いながらアルにまた頭を撫で回され、頭がぐわんぐわんする。


「やめ、やめろ〜!逆だろ?私に会えて嬉しいんだろ?アルったら、照・れ・屋・さんっ」

『……お前…色気…?』


サラリと髪を流し、アルにどや顔を見せてやる。


「フッ…大人の色気か?ふふふ…」

『ええっ?!ちょっと…まさか!聞いてないよ!!』

「何を?…どういうことだ?」

『いや…なんでもないよ……』

「…そんなことよりヴィル!手紙の返信、ちゃんと読んでんのか?」

『ああ!父上から届いてるよ。』

『おい!俺への返事であの絵は何なんだよ!!字を書け字を!』

「ハハハハハッ!傑作だろ?!」


くだらない話は、日が登るまで続いた。

今までの離れた時を埋めるように……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー


朝になり、皆が起きてきて、ジグルードさん達が持ってきた軍用食を頂き、遂に出発した。


インクを被った彼らは、だいぶ頭が痒いようで、バリバリに固まった髪の毛を掻き毟りたいけど、毟れば色が出るかもと、苦悶の表情で耐えている。

ホントに申し訳無く思うが…笑える!





船が目的地に近づくに遵い、当然周りに浮かぶ船への接近は免れない。顔見せをし、敵ではないと思わせないといけない。

即ち、イベルナ族だけが甲板に出て、問いかけられれば事情をでっち上げ、振り切る。私達は隠れておかなければどんな事で露見するかわからない…

そんな緊張感に包まれて居るはずの船内は、我が『剣聖団』によって何とも和気藹々(わきあいあい)とダイズで賭事をしていた。

私はどうも騒ぐ気分になれなくて…1人になりたくて部屋から出た。

出航前に余計な事を聞いたせい…それを言ったのは、本当に憎たらしいアイツだ…

それでも戦以外の事を考えている余裕はない…

窓から見える帝国船の接近に、スバル達は上手くやっているのか毎度不安になって、ホッとして…を繰り返していた。


四度目の接近で、併走し、離れない敵船…

不安が募り、甲板に上がろうかと迷っていた最中、イベルナ族が飛び込んで来た。


「うおっ」

『お、御使い様!申し訳ありません!』

「それよりどうした?!」

『相手船に我が村に来たムリード殿が乗船しており、交渉が難航しております!』

「待て…マッド!ちょっと来てくれ!…相手はなんと言っていた?」

『予定通り、町を襲い続けろと』

「ほう…アルタインを恨む振りで推せそうにないのか?」

『相手も従わぬ姿勢の族長に怒りを向けてきております!』

「…もうすぐ着くな…」

「そのまま押し進むしかねぇ…もし、攻撃する姿勢を見せたら、すぐ鐘を鳴らせ。」

「さり気なく盾の所に居ろよ!矢に気をつけろ!」

『はい!!』


「…やべぇな…」

「そいつと陸で交渉と言えばのむかな?」

「どうだかな…」

「そいつに、大将へ取り次いで貰い、交渉を打診して、位置を把握するというのは?」

「ふむ…」



突然外が騒がしくなる。

外に耳を凝らし、聞き取ろうと近寄れば…



ーーーー人質ーーーーー



「!!……人質とか言ってるぞ!」



その瞬間扉が勢いよく開き、先程のイベルナ族が入ってきた。


『人質…人質を寄越せと言ってきました!』

「全部離せ」

『戦いたいと言うなら、交渉の場を持ってやる。その際1人のみ…出せないな岸に寄せることを許さぬと…これ以上近づけば強行手段を取ると弓を構えております!』


『…チッ、奇襲困難か』


いつの間にか後ろにジグルードさんが居た。

目を瞑って唸り、考えている。


「ジグルードさん…」

『…イベルナ族は人質に出せん。強いるわけには行かん…このまま引き返すか強襲するか……』


「駄目です!」


声を張り上げた私に、集まった全員の視線が集中する。


だってそうだろう?

今やりあえば、奇襲の意味はない。

ジグルードらが髪を染めた意味もない。

引き返せば、次の急襲は出来ない。

即ち、起死回生する術は…消える


「人質、出しましょう」

『なにっ!?これ以上イベルナ族に』

「出しましょう!此処まで来て、半端に終わらせるなんて出来るか!!…四郎…避難しとけ。」

「アイヨー」


四郎が窓枠に止まり、剣やベストを脱いでハンターらしさをなくす。そして隠して持てる武器を準備する。


『まさか…』

『お前!!』

『『『カナメ!!』』』


「ジグルードさん…後は任せます。位置はどうにか知らせますので、作戦通りに…」

『許さねぇぞ!お前が行く必要ねぇ!!』


扉に振り返るとライネルが立ち塞がった。


「必要ある!!私が戦争にイベルナ族を巻き込んだ」

『それは俺らが…それに、イベルナの為だろうが!!』

「私はイベルナ族の御使い様だ!ここで立たなきゃいけないんだ!スバルに行かせる訳にはいかない。私とイベルナ族との命運は同じ…成さねばならん!だ…ふふふ」

『笑ってんじゃねぇ!ふざけんなよ!俺が守るって…』

「ライネル…いや、兄ちゃん。死ぬ気はねぇ!そうだな…助けに来てね、お兄ちゃんっ」

『てめぇっ!』

『…本気なのか?』


一歩踏み出してきたジグルードに顔を引き締めて口を開く。


「人質が私である必要ありますよね?…私が餌。餌を追いかける獅子になって貰えますか?出来れば貪欲な…」

『餌と?くくく…女なんだ…せめて宝石と例えたらどうだ?』

「そうですね…黒にとって四郎が宝石、私は宝石の箱みたいな物ですが、頑張ってくれるでしょう。」

『俺は許してねぇ!グレイトピエロも反対するに決まってる!』

「ライネル…あ!忘れ物!!ちょっと待ってろ!」

『あ?……』


素早く部屋に入り、私物を数点服に突っ込み、ぺたぺたと均す。


「ごめんごめん…剣を預かっててくれ。じゃ、行ってくる…」

『話は終わってねえ!!』


ガンッ


手首を掴むライネルを背負い投げ、床に叩きつけた。


『ぐっ』


ドアノブに手をかける…



「ごめんな…マッド!この後は頼んだ!!」






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