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要の意味  作者: かなりあ
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もう1人の兄ちゃん

ライネルが馬で走り去り、私達はスバル達と話し合いを始めた。


スバル達が住む場所は、もう少し川を降りた対岸で、一応バーブル伯爵領。

水には困らないのに、普通の野菜や麦は全く育たず、森に入っても生えている草木は毒のあるものばかりで食べることができない。

獣を狩って、毒素が出る前の新芽を探し、魚を採って保たせているイベルナ族。


半月程前に、男が訪ねてきて書状を持ってきた。バーブル伯の名前の物と、帝国から自分達への書状…

真偽を確かめようと潜んで探ると蔑む噂を耳にした。

そして、領主の娘が、自分達の話をしている時、『どうにかしてくれる』というような事を口にしたのが決定的だった。

帝国からまた男が来て、服や食料を恵まれ、その時盟約を結んだ。

バーブル伯を攻めないのには複雑だったが、この国の人間は誰もが同じく自分達を捨て置き、蔑んだ。だから一緒だと思った。

書状は、燃やせと言われてもうない。内容は、メシュリーに攻め込み、開戦後町を混乱させる事。後は帝国がやるから、隠れて、出てを繰り返せ。


寝返った訳は、神鳥とお使い様である私。

肩に神鳥、黒髪、女…三拍子ピッタリと一致した言い伝え…

違うんだ…そんな魔法みたいな力はない。とは言えない…

ここでバラしてしまえば折角の説得が水の泡と化す。

幸い、お使い様は普通の人間だと分かってもらえている様で助かった。



ライネルが戻るまで動くわけにもいかず、ボロが出ないようにイベルナ族と会話をして、時間を潰す私達『剣聖団』だった…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー

ライネル視点






馬をひたすら走らせ、戦場へと急ぐ…

町を抜け、門前で固まる軍の横をすり抜ける。



「おーーい!ライネルさーん!待って待って〜」

『あ?…お前、何故ここに…』


馬で追いかけてくる公爵坊ちゃん、ヴァリウス=サルバルートだった。


「急いで来たんだよ!カナメは?」

『アイツな〜今えらいことになっちまって…』

「えっ?ケガとかしてないよね!?」

『違ぇ…イベルナ人が攻めて来やがってよ。』

「なになに!?…全部話して!!」

『走りながらだぞ?闘王に知らせる途中なんだ。』

「わかったから早く教えて!」

『はぁ…俺らはあっちのーーーーー』




教えてやると、公爵坊ちゃんは黙り込んだまま一緒に走りつづけている。

開けた高原で両軍がぶつかっているのを横目に、アルタイン軍後部へと向かった。


「ライネルさん…俺に交渉を任せてくれないかな?」

『は?ハンターは今、闘王の指揮で動いてんだぞ?』

「カナメはハンターだけど、イベルナ人は違うよ…もし、イベルナ人を率いるんだったら貴族にも公言しないといけない…軍に組み込むにも、後見が居ないとまずいんだ。イベルナ人だけだと…」

『ならイベルナ人は帰らされるってのか?』

「だからそこで俺だよ…俺の後見で無理なら、兄さんを出しても良い。最終手段に爺様が居るしね。カナメの名誉挽回の機会を逃すわけにはいかない!」

『……そうだなっ!任せる!』

「ありがとう!ライネルさん、今まで…本当にありがと!」

『おいおい…まだアイツは俺の妹分だぜ?』

「えっ?!惚れてないよねっ?」

『はぁっ?馬鹿野郎!妹分だって言ってんだろ?』

「はぁ〜良かった〜」

『可愛い妹だよ…』

「だ、ダメだよ!カナメはギルのなんだからね!」

『ハハハ!じゃあ一発殴って良いよな!?』

「…はぁ、大変だ…ホント、カナメはモテるね…」



あたりめぇだ。アレが可愛くなくて、どこの女が可愛いってんだよ…

何より手のかかる大事な妹だ。

危ねぇことはさせたくねぇが、これが妹の幸せの道なら何だろうと手を貸してやる。

あの辛い事件から、ここまで乗り越えさせたんだ。今度だってやれる!やってみせる!




訝しげに見る人の合間をかいくぐり、闘王の近くまで来ると馬を降りて駆け寄った。

騎士に顔だけで通るコイツも凄ぇが、ハンターでは俺の方が顔が利く。

振り返った闘王に軽く頭を下げ、書状を差し出した。


「何かあったか?」

『はい…剣聖のライネルです。指示された場所で問題がありました。詳しくは書状に書いてます。』

「私、ヴァリウス=サルバルート。サルバルート公爵家の者です。その書状の件でお話があり、共に参じました。」

「ほう…………ふむ、なるほどな…………くくく…では、俺も行こう。………おい、後は頼む。」

「おう」



向かった先にギルが居た。

あの頃より一層目つきが鋭くなっていた。俺を見るなり驚き、更に険しく曇る…

そう、コイツは俺が参戦していることに今気付き、カナメが居ることを悟ったのだろう。今にも突っかかって来そうだが、必死に留まっているのが分かる。


天幕に入り、俺の事は全く気にもせず話を進める貴族共と闘王バズフロール…

俺は見ていた。

ギルがカナメに相応しいのか…


コイツはやっぱりカナメを思っている。

イベルナ人に今からやらせようとする事を『止めたい』と思いながらも、口に出してはいけないと、必死に耐えている。

俺だって止めたい…止めたいけど出来ない。

口に出来ない立場もそうだが、カナメの今後を思えばこそ、そうするべきで…

でも、ついて行けない理由が髪の色なんて、こんな無情なことってあるか?

ただヴァリウスは、その方向で進めていく。


何故?心配じゃないのか?仲間だったんじゃないのか?何故そんなに自信満々なんだよ…

そう思っていたら、ヴァリウスが一際厭らしい顔付きで声を発した。


「お願いしたいことがあります。ギルバート殿、アルベルト殿、イベルナに謝罪の意を示せる100名程の精鋭騎士…お借り出来ませんか?」

「…髪が違えば成り立たん作戦だぞ?それでもか?」

「ええ。髪を黒く染めましょう。」

「「「何っ!?」」」

『ハハハハハッ!どうすればできる?』

「なに、簡単です。インクを被ればいいんですよ。それをイベルナ人への謝罪を込めて目の前で行います。なので、快諾して貰える方のみで結構です。」

『ククッ…お前なかなか…遊んでやがるな。この状況を』

「滅相も御座いません。ただカナメ、黒髪の娘と一緒に行きたいだけの男です。ね、ギルバート殿、アルベルト殿。」

「ああ。…父上…私が行くことをお許し下さい。」

「仕方ねぇ!…戻ったら会わせて貰うぞ!我が息子の惚れた娘に!」

「なっ、父上!」

「ククク…では、インクをかき集めなければならないので、私は行きます。」

「騎士は夜のうちにそちらに向かわせよう。」

『俺も行きたくなってきたぜ…』

「駄目ですよ。バズフロール様が抜けては統率に不安があります。それに、その手柄はイベルナに回すのですから…ふふ」

『本当に…上になると好き勝手に出来ねぇもんだな…』

「ハハハ、そうですな!若者に任せると致しましょうぞ。バズフロール殿。」

「よし、では行ってこい!不覚を取んじゃねぇぞ、息子!アルも、ヴァリウスもだ。生きて戻れ!」

「「「はい!失礼致します」」」




天幕を出て、カナメの仲間『グレイトピエロ』と馬で駆ける。


やべぇな…めちゃくちゃ燃えてきたぜ…

しかしインクとはな…いつから考えてやがった?面白ぇ。

これで付いていけるな…

危険極まりない作戦だが、やれる気しかしねぇな!


『とりあえず俺は団に報告しなきゃなんねぇ。その後俺も店回るわ!』

「いや、ライネルさんはそのまま居て。ビックリさせたいから、俺らのことは団長だけに…よろしくね!」

『ハハハ。ビックリ所じゃねぇよ!面白ぇから乗るがな!ククッ』

「ライネル殿…カナメの様子は…」

『ふん!もうすぐ会える。会って確かめろ!』

「…………」


こんぐらい意地悪させろってんだ。

ヴァリウスもニヤニヤしてやがるし、俺の手紙の内容言ってねぇんだな。

コイツも大概性悪だよな…ククク

さーて、早く戻って妹見ながら酒でも飲むとするか!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー


ライネルが戻り、衝撃的な任務を聞かされた。


私を含めたイベルナ族は船に乗り、帝国側と欺いて敵陣営の背後を急襲する。

川には総数5000が居るにも関わらずである。

こちらが300人しか居ないことを知った上での命令だ。

死ねという事ですか?

そりゃ前からも攻撃してくれるだろうけどさ…300では無謀すぎて、ただの自殺志願者だ。

だがそれでも、手柄の面では最高の采配だ。

立場が上な程背後で守られて居るはずだから、お味方演技で騙し討ちできたなら、容易く将を射て、陣営大混乱の総崩れとなる。

という、シナリオ…

イベルナ族の起死回生のチャンスとなれば、やるしかない。


私は剣聖団とイベルナ族の真ん中で晩飯を食べ、何故か引き止めるライネルを振り切って、テントに寝転がった。

追い付いたライネルがぎこちなく喋りかけて来るのを無視して目を閉じる…

なんだかんだとどうでもいい話を子守歌に、ウトウトし始めると、突然声が止んだ…


『……………カナメ…』

「…ん?」

『俺はお前のこと、マジで身内だと思ってる…』

「な、なんだよ。突然何言い出すんだ?」

『………』

「…私も兄貴がいたらこんな感じかなと思ってた。ありがとな…ライネルのおかげで救われたよ。私はこうして笑って生きていけてる。」

『救われたか?』

「ああ。以前を思うとホント、謝ることしかできない」

『そんなことはいいんだ。俺もな…どうすりゃいいかわかんなかったし、笑わせたら勝ちみたいなとこあったからな…ハハハ』

「そんなこと言ってたな。ま、私は負けたからこそ、今がある…感謝してるよ、お兄ちゃん。ハハハ」

『ふっ…兄ちゃんとして、お前を守ろうと思う。』

「はぁ?今回の作戦のこと?イベルナ族だけしか無理なんだろ?」

『どうにかする…』

「どうにかって…」

『大丈夫だ。安心しろ。絶対守ってやるから…』

「いやいや、わけわかんねぇ…」

『…分かったな!でも、何があろうと逃げるな。』

「……逃げはしない。私だけじゃない。イベルナ族の今後がかかっている…」

『約束だ…絶対だぞ?』

「はぁ?なんか意味深だな…ま、約束するよ。…もしやこれは死亡フラグか?…ライネル、死ぬなよ?」

『ん?それは俺のセリフだ。俺が居ても気を付けろよ?』

「はいはい…心配性な兄ちゃんも寝ろよ。」

『ったく、遅ぇな…』

「ん?」

『いや…俺がいねぇと眠れねぇんだろ?ホント、可愛い奴だなお前は。』

「もう眠れるさ…撫でさせてやってんだよ。ククク」

『よし、お前は黙ってろ。』

「ふふふ…おやすみ、兄ちゃん……」

『おう…』



ライネルも、戦前だからいつもと違うんだろう…

コイツでもシリアスになれるんだな。ふふふ

今日は精神的に疲れた…寝よう。明日は決戦なのだから……





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