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要の意味  作者: かなりあ
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戦争と黒

今日から投稿再開します。

3日目の早朝、人数分の朝食を作り、私は荷車番で待機。

昼過ぎに船のお迎えが来るので、それまでに船着き場へ戻らなくてはならない。


2つに別れたチームが戻ってきて、船着き場へ向かった。


荷物を整理しながら待つが、待てど暮らせど船は見えない。

うちの団員も、他のハンター達もイライラが積もってきた。


漸く来た頃には、もう日が沈み始めた時分…



船に乗り込み、部屋で待機させられていると、事情を聞きに行ったマッドとライネルが戻ってきて、皆を集めて話し始めた。


『…メシュリーに着いたら直ぐ、戦に参加する。』


ガヤガヤとざわめき、場が張り詰めたものとなった。


『今回も、自由参加でかまわん。町で出来る事も多々ある。怪我人の処置や、住民の避難護衛とかだな。戦が終わり次第戻ればいい。どうするかは船が着くまでに言え。』

『領主の部下から聞いた内容なんだが、今、国境で大型船が5隻、中型が20程確認しているようだ。ま、もっと増えるとは思うが、いずれも北から…予想通りのバルガリア帝国。この町とシルダを盗るつもりだろう。地上だろうと船上だろうと雇われるつもりだから、参加するなら町に着くなり、準備は早急に整えろ。以上!』

「はいっ、質問!」

『なんだ?』

「こっちの軍隊はもう着いてんの?それと、鎧とか無くても大丈夫なんですかっ?」

『軍は領主軍3000、第7軍隊2000が今の所居る。後からも来るだろう。鎧はなぁ……くくっ、チェーンメイル用意してやろうか?』

「それって十分な数なのか?…チェーンメイル…」

『後で教えてやっから。他は?聞きたいことねぇか?……なら解散!』



個人的に話を聞いて、バタバタと慌ただしく船を降り宿へ…。ご飯も風呂も済ませ、ベッドに寝転ぶ。と、ライネルが寄ってきた。


『本当に戦に出んのか?』

「出る。アルの家族だぞ?見て見ぬ振りなんてできない。」

『アル?』

「アルベルト=ハリストン。私の仲間に茶髪の癖毛がいただろ?ここの領主の三男だ。」

『へぇ…アイツも貴族か。よく考えると、良いとこ育ちばっかでよくハンターなんかしてたな…』

「そうだな…なんかギルの家の風習らしいぞ…ヴィルはなんでか付いてきたな…あ!私は貴族に入れるなよ?」

『…暮らしてたんだろ?ナハルで。』

「そうだけど、普段は悪ガキ達と走り回ってたし、貴族らしくなんて全くなかった。よく考えると、私が男爵家に戻っても何の利益もないんだ。私はどこぞの貴族と縁結びなんてしたくはないし、もう出来もしない。令嬢との交友なんて面白いことは一つもない。ただ家族っていう証が欲しかっただけだったのかも…近くに居るだけで良かったんだ。ナハルに民として住めば良かったんだ。」

『そう思うならそうしろよ…』

「まだ無理。エヴァに負けてしまうのが嫌だ。」

『兄ちゃんか…でも、戦に出たら死ぬかもしれねぇんだぞ?勝ち負け以前に終わりだ。』

「なんだ?私達はハンターだぞ?毎日命かけてんじゃん。心配か?戦争を舐めてると思うか?…私は知ってる。体験こそないけど、情景は想像出来る。残酷な虐殺も、敗戦の辛さもな…全部見たり聞いたりだけど。」

『見た?』

「あ、まあ、そこは気にするな。私も覚悟はする。遺書でも書いとくかな…」

『やめろ!縁起悪ぃ…死にに行く何てことないよな?』

「バーカ!ありえねぇよ。ライネルが助けてくれたんだぞ?恩を裏切れるかよ。生きて勝つぞ!」

『フッ…あったりめぇだ!俺がまた武功上げてやる!』

「それはどうかな?私も大人しくする気はねぇよ?ふふ」

『お前は危ねぇ事すんな。』

「心配性だな〜。ま、臨機応変に…」

『俺、やっぱ不安だわ…』

「さ、うるせぇ奴はほっといて寝よ寝よ〜!おやすみ、セシル!」

『…ん。』

『起きてたのか!…やんちゃな妹分持つと大変だ…早く寝ろ。』

「手がかかる子ほど可愛いって?照れるな〜ハハハ」

『溺愛…』

『うっせぇ!』

「ふふふ…おやすみ、ライネル…」

『ああ…』





『寝た…な。よいせっ、と……』

『…参戦』

『カナメ参戦、か…応援すべきか止めるべきか…はぁ』

『止められない』

『だよな…。とりあえず公爵坊ちゃんに連絡しねぇとな…』

『………寝る』

『おう』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー


この2日後、布告なしの夜襲で戦火は開かれた…


シルダとメシュリーの中間に上陸させ、双方陣を敷いた。

味方7000、敵10000。

あまりに早い開戦に、町の防衛もせねばならず、7000布陣出来たことは賞賛されるべき事…らしい。

河では未だ敵船が浮かび、約5000は居るらしい。



闘王が急遽駆けつけ、ハンターの指揮を取ることになった。

初めて見る闘王は思い描いた姿そのもので、全身黒の服に、黒のマント、頬に十字傷があり、オールバックの金髪と口髭の似合う壮年の男で、鋭い目で見渡しながら怒声とも聞こえる激励を浴びせた。

戦の空気に呑まれ、変な高揚感を抱いて出発した……

が、何故か町の南西防衛にに回された。

町民は慌ただしく兵士の誘導に従って動くのを横目に、熱が冷めた様な雰囲気で指定の河川敷に到着した。


マッド曰わく『冷遇ではないぞ。大丈夫と言う場所にこそ隙があり、そこを付け狙われるんだ。警戒を怠るな。』だ、そうだ。

……うん、微妙だ。

闘王の激励に盛り上がった反動で急激に落ち込む幹部5人以外の私達団員。

日が落ちても何の諍いもなく、その日は終わったのだった…





ーーーカンカンカーン!起きろ!船だ!ーーー




「は?」

『急げ!時期に来るぞ!』

「ま、マジでっ、何々、船?」

『そうだ!』



急いで武器を掴み、テントを出ると、朝焼けのまだ仄暗い時間。もうすぐ側に3艘浮かんで人の立ち姿も見える。



『イベルナ人…』

「は?今、イベルナ人って言ったか?!敵じゃないってこと?」

『……多分』


多分ってなんだよ!と口を開こうとしたら、矢が飛んできた。


「……敵じゃねぇか!」


そう言っている間にも矢は周囲を飛び、船から人が下りてくる。

雄叫びを挙げ、剣を振りかざして走ってくる黒髪に、弓矢を構えた時だった。




突然急停止し、陸で膝を付くイベルナ人達…


私も、

横のマッドも、

団員全員が、それに習って固まった。


「え?」


皆一斉に私を見て、益々訳がわからない。



イベルナ人を見ると、剣を横にして、天に掲げている。


『神鳥様!お使い様!申し訳ございません!!』


「…え?何て言った?」

「神鳥と言ったな…お前は、お使い様?」

「いや、四郎?…訳わかんねぇから…私はっ」

「待て…話を合わせろ。そうだな…剣を捨てろと叫べ」

「け、剣を捨てろ!とりあえず話を聞こう!」


『はっ!…皆、下船せよ!神鳥様がお見えである!剣を捨て、下船せよ!』



続々と地面に膝を付く300は居るだろう黒髪達。

その中には涙を流す奴も居て、間違いでなければ『青蘭鳥』を神の鳥として信仰しているということなのだろう…

と、冷静に考えてみたが、私が四郎に仕えてるってこと?私が教祖になれってこと?

ヤバくねぇ?私次第で戦っちゃうわけだろ?


「大丈夫だ。俺らがいる。ここに来た訳を聞き出せ…」


マッドが四郎の居ない方の肩を叩き、促してきた。

後ろを見ると、団員全員が周りを囲み、ニヤニヤしている。

他人事かよ…と呟きながら、イベルナ人達に向き直る。


「はぁ〜…顔を上げろ…代表は居るか?」

『はっ、イベルナ族、スバル=イベルナと申します。』


一番前の屈強そうな男が、野太い気迫ある声で名乗りを上げ、前に来た。


「では、スバル殿…」

『殿など必要ございません!』

「そ、そう…スバル、どんな事情でここへ来て、何をしようとしていたのか答えてくれるか?」

『はっ…我ら、我らを滅ぼすという話を聞き忍び、追い込まれた我らは帝国と結び、共に攻め入るとしてここに馳せた次第…神鳥様とお使い様がいらっしゃるとは露知らず、誠に…矢を向けるなど…合ってはならぬことを……くっ…』


「……イベルナ族を滅ぼすなんて聞いたことあるか?」

「ない。…嵌められたか?」


「私はそんな話聞いたことがない。それは本当だという証拠はあったのか?」

『…領主名の書状を貰い受けました。元々我らは所領を移され、冷遇されておりました…いつ気に障り、処罰されてもおかしくないと思っておりました。』

「なるほどね…さて、どうするか…」

『神鳥様…お使い様…我らは罪を犯しました…処罰は如何なることも受け入れる所存…しかし我らのみでお許し頂きたい…そして、そして…残した子孫をどうか救って頂けませんでしょうかっ!?』

「……救う?」


マッドに顔を向けても「聞け」と顎を向けるだけ。


「救うとは、どう救えばいいんだ?」

『我らの土地は不作の地…更に魔境と川に挟まれ、獣に襲われる事もしばしば。町へ村へと出ても、戦乱の影響で恨みをぶつけられる日々…我らはこのままではいずれ滅びます。ですが、地を蘇らせて頂ければ現状の飢餓は免れます…どうか、よろしくお願い致します…』


「…もしやアルフォンヌ物語?無理だ…どうしよう、マッド…」

「……うん、こちらに寝返らせろ。こちらに馳せ参じれば、どうにかなるかもしれん。」


味方をしに来たならイメージアップにはなるか?

本当は攻めに来たんだがな…

でもわたしが困るんだよ…お前らにそんなことをされたらな。

目に力を入れる…

なんとしても説得しなければ!!



「…聞いて欲しいことがある…お前たちは、帝国に騙されている。滅ぼすなんてことはない。私達は帝国からの侵略を防ぐためここにいた。冷遇された恨みもあるだろうが、お前たちが参戦したら…もし手柄を上げたら、そんなことはなくなるんじゃないか?不遇な扱いを受けてもこの国の為に戦った…それがキッカケになるんじゃないか?」

『お言葉を返す様ですが、我ら、アルタイン国に期待も未練も御座いません…今まで子が…親が…飢餓や、獣に喰われ死んでいった様を見ており、救援の言葉は何一つ届かず捨て置かれた…今更何をしようとも変わるとは思えません。』

『そうです!神鳥様!』

『私たちはもう、耐えきれないのです!』


ホント…打ち負かされたコイツらの方が恨みは強いのに、ほったらかしとは…

反逆されても文句は言えないぞ?

しかし、口々に嘆き叫ぶ声をねじ伏せる様に叫ぶ。



「私がいても、そう思うのかっ!?」


『…………』


そう、私は教祖、四郎は神…


コイツらはマラッサルの不良達と似てる。

国への『失望』…どうにも改善出来ようのない立場…

縋るものが私である事…それが寝返らせる鍵になる!


「では、このままメシュリーを攻めてどうする?勝って、お前らが貰えるものってなんだ?」

『メシュリーを…』

「ではメシュリーを貰ったとしよう。…帝国がこの国全てを侵略しなければ、メシュリーに移ったイベルナ族はそれまでずっと危険に晒されるぞ?…取り戻そうと必死に攻めてくる。それに耐えられるか?帝国が守ってくれるか?帝国は、そうしてくれると信用できるのか?」

『…ですが、』

「敗戦し、帝国が逃げたらお前等はそれこそ滅亡する。私がお前たちをやらなければならなくなる。私はそんなことしたくない。』

「…………」

『…私はこれまでこの国をずっと旅しながら回った。私の髪を見て、嫌な顔をした奴もいたし、罵声浴びせられることも合った。…けど、私は、神鳥の使いとしてじゃなく、私自身を助けてくれる人がいた。見ず知らずでも育ててくれた、仲間にしてくれた…。全部が全部嫌な人間じゃない。住む土地、住む領を変えればそれこそ一変する。それを試してみないか?試すために、やってみないか?私と一緒に…」

『…一緒に…』

「そうだ。私に賭けてみないか?……結論は皆で話し合って決めろ…」


かかとを返して、ライネル達を野営地に押しやって、縋るように四郎を見た。


「イイネッイイネ!」

「四郎〜!人の気も知らねぇで!マジで気が重い…」

「カハハハ!お使い様っ、聖水をどうぞ!」

「…ふむ、ご苦労ハリド…って酒じゃねぇか、馬鹿!」

「ハハハ、えらいことになっちまったな〜」

「だな…ライネル、闘王に連絡を頼まれてくれるか?」

「俺?」

「お前なら二つ名出せばいける。」

「ええ〜!それってどうよ?…恥ずかしっ」

「ハハハハ!書状を書く。どちらに転ぶか…決まったら即出ろ。」

「…監視役は?」

「ハハハハ!カナメが心配ってか?」

「私は大丈夫だ。…アイツらがどちらを選ぶかで、私の立場も変わってしまう…命よりそっちがヤバい。」

「だな…お使い様…どうかあの黒髪に囲まれませんように…」

「拝むのやめろよ…」

「「「ハハハハハッ」」」




数分後、また膝をついて地面を見るイベルナ人達を見て、ゆっくりとスバルに近づく…



「決まったか?」





『はい…決めました。信じるなら……貴女様と…』

「ふぅ…そうか。」


スバルの腕を引き上げ無理矢理立たせると、手をギュッと握る。


「ありがとうスバル…ありがとう皆…。これからの事、相談しよう。とりあえず体勢を崩して良い…畏まる必要もない。私はカナメだ。よろしくな!」


「ヨロシクナッ!」


『神鳥様がっ、…お言葉を……』

『『『し、神鳥様あぁぁー!』』』

「…………」


罪悪感でとても居心地が悪く、呆然と固まるスバルの手をそっと離した…



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