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要の意味  作者: かなりあ
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時を経て

あれから1年経ち、春が来て、私は16歳になった。

ライネル達『銀聖』の仲間に入れて貰い、未だに旅を続けている。


初めの内は、そりゃもう…どん底だった…

エヴァとの約束も、男爵家に戻ろうとすることも、ギル達と一緒に居ることもできなくなった私は、ただ無表情に淡々と言われたことをこなすロボットの様だったと思う。

私というイレギュラーが入ってぎこちない剣聖団に、ただ居るだけの使えない女とは思われたくなかったからだ。

しかし、やることがない時には何も考えたくなかった。

ほっておいて欲しかった。

そういう時には、何故かしらライネルに引っ張り出され、皆の中に混ぜられた。

それでも私は愛想笑いすら出来ず、皆の話をただ頭に流すだけ…

そんな虚無に過ごす日々でも、夜には必ず思い出す…

『マール』に来てからの日々を一つ一つ振り返って、泣いて、漸く眠りにつけるから…

そして腫れぼったい顔でライネル達と顔を合わせ、痛い顔をされるのだ。

そのせいで気を使わせているとわかっていても、ライネル達に気を配れる程の余裕はなかった。


けれど今ではだいぶ落ち着いた…

1年という時間だけでなく、ライネル達が手を焼いてくれた事。と、私に刺激を与えた二つの事のおかげだ。


一つは、ナハルに行って、エヴァを盗み見たこと…

ウィルナードより男爵らしく、堂々としていて、それでも優しい表情は変わっていなかった。格好良く大きくなっていた。

どうしてもそれを誉めたくて、紙飛行機で手紙を出した。それが部屋に入らず失敗して、もう一度書いたのは今では笑える話。

『負けちゃ〜いられない』と付け足したのは、私自身に言い聞かせるためだったのかもしれない…

家族に戻る資格はないかもしれないが、胸を張って会おうと決意したのだ。


そしてもう一つ…何故だか知らないが、行く先々の組合所にヴィルからの手紙が届く…偶にアルからも。

何故なのか…つけられているのか?と見回してもサッパリわからない。

ギルから来ない分、ビッシリとギルの近況が書かれてあり、『黒髪の女が好きらしいよ』だとか、『忘れられない女がいるらしいよ』とか、一々余計な事を書き連ねてある…

嘘か本当かわからない内容に胸がズキリと痛んでも、ギルの今を知る事が出来て暖かな気持ちになれた。


アルからは、何故か心配していると言う内容…。アルからの優しい言葉とか、ちょっと変だしこそばゆい…

だから、手紙に書かれた返信の為の場所に、日常の絵を書いて送った。ピエロがどこかに必ず居る絵……返信の文句が面白いんだ。くくく…

因みにヴィルには実家の方に苦情文を送り続けている。じーじがどうにか渡してくれるだろう。他力本願だが、重要なことではないのでそんなもんだ。


それで、仲間はどうしているかだが、国の外回り一周を果たした後、ハンターを辞めたらしい。

ギルは領で親を手伝い、アルはやっぱり従者殿。

ヴィルは王都で遊んでいるらしい。

軍に入るとか言ってたのはどうなったのか…

まあ、コイツのことは全く心配していない。

皆が元気なだけで、私は満足だ。


私には四郎がついているし、ライネル達は…うん、いい奴だ。

何というか…個性的?柔らかく言うと。

総勢15人、ライネル達代表格が5人。

リーダーのマッドは、眼帯をした渋い男。魚が可愛くて食べられないということを省けばだが…

ムードメーカーのライネルはやっぱりお人好し。最初の頃は、私なんかに付きっきりだった。今でも私を気にして纏わりついてくるが、そうしてくれることに私が甘んじているのが現状。

双子のサリドとハリドは、シャレが通じない様な強面のくせにおちゃらけキャラで、度々見知らぬハンターに絡んで困らせる。

最後にセシル…ほぼ無言。単語しか喋らない。剣の手入れをしている時の笑った顔が不気味。

まぁ、そんなヤツらは、戦って、歌って踊って、寝て、また戦う…

よくそんなにぶっ続けでハシャげるのか甚だ疑問だ。

私が精神年齢30だからだろうか?…それより年上の者も居るがな…


なんだかんだで癒されて…いや、流されて、笑えるようになり、前の私を取り戻しつつある。

問題点というと、盗賊限定で逆上してしまうだけかな?目立って病んではいない。



変わらない事もある。

ギルへの気持ちは、褪せることなく、幸せな思い出として心に置いている。

結ばれたいとかそんなんじゃなく、暖かいものを貰ったから、それを大事にしてるって感じだな。

未来に期待とか、全く考えられない。

ただ幸せであればそれで……




今私は、ハリストン伯爵領、アルの実家があるメシュリーと言う町に来た。

ハリストン伯爵領の南西側に、マラッサルへ向かった時に渡った広河がある。その対岸の森は『魔境』と呼ばれていて、どこの国の物でもない森…

そこから出てきた大きなトカゲが川を泳いでいたのを目撃したので、組合所に依頼が来たようだ。

大きなトカゲって、固有名詞あるのかな?

鰐でも馬鹿でかいのに、大きなって…恐竜?まさか……な。


馬車まで船に詰め込んで対岸へ…

依頼主、ハリストン伯爵の大型船は凄く興奮した。

アルの父さんすげぇよ!


船中歩き回った後、ライネル達の居る客室へと入る。


「凄かったぞ〜!船の中」

『ハハハハ。探検してきたかっ!ガキだな〜』

「オッサンとは違って若いからなっ!」

『オッサン呼ばわりはやめろって言ってんだろ?』

「私はまだ16だ。10歳上ならオッサンだろ?ハハ」

『ライネル〜!お前の躾が悪いからだ!』

『俺は教育係りじゃねぇよ。監視役だ』

「監視って、部屋が一緒なだけだろ?まさか風呂とか…」

『ば、馬鹿っ馬鹿言うな!見てねぇ!マジだって!』

『ハハハハッ!焦りすぎ〜!』

「ふふふ…ライネル、冗談だ。信じてるぞ」

『ならなんでマッドに隠れる!?』

「そりゃあ…な?」

『『『ガハハハハッ』』』

『…続き』

『ああ、話の続きだったな。』

「出ようか?」

『構わん。ただ説明は後だ。』


私がまたマッドの隣に腰掛けると話し始めた。


『…そう、戦が始まるなら俺らも参加する事になる。』

「戦っ?!」

『黙ってろっ』

「ごめん…」



話が終わり、皆『わかった』と合意する中、ライネルがジッと私を見つめてきていた。


『カナメはその時どうする?』

「私は…」

『手柄を立てられる場だ。』

「だな…」

『だが俺達は傭兵だ…一番危険な場所になる。』

「…だな。攻めるのか攻められるのかで決める…どっちだ?」

『攻められる方だ。』

「なら…やる。手柄は無くてもいいけど、この国好きだし」

『いや、お前は…それだけか?』

「うん。」


『今決めなくていい。始まるとも限らない』


そう言ってマッドが私の頭を小突いて立ち上がった。


『さぁ〜て、もう着くかな〜っと!大きなトカゲ楽しみ〜!』

「どんな奴なんだ?皆に聞いても全然わからない」

『俺も知らん!ハハハハッ』

「なんだよそれ〜」



次から次に馬車が降り、他のハンターとの競争が始まった。

ここで何頭か狩り、大暴れすれば当分寄ってこないから、3日間の狩り物レースみたいな感じだ。

見つけた獲物は、一槍入れたチームの物で、横取り厳禁。

『魔境』なんて怪しげな名前なんだ…大きなトカゲじゃなくても、どえらい獣がいるはずだ。

それなのに私達ハンターは嬉々と走り出した。



『うおおぉぉ〜〜!』

『サリドさん!危ないッス!!』

『ギャハハハ!サリ、やべぇ!マジ早ぇよ!!』


ふふふ…相変わらず馬鹿だコイツら。

巨黒鳥の首にしがみついて走り回る馬鹿サリドがいる。

そびえ立つ木の障害物を、難なくすり抜ける巨黒鳥に拍手を贈りたいぐらいだ。


『オラァ!絞めて、荷車に戻んぞ!!』


マッドの声にサリドが従い、オロオロしていた団員が倒れた巨黒鳥を捌き始めた。

私は四郎を肩に乗せて果実採取中。言うなればサボりというやつ?

『だって四郎が欲しいって言うからさ〜』と言うと、大抵目尻を下げて許してくれるのだ。

最近では普通に喋るもんだから、本当に自分の意志で話しているとしか思えない。私の口調と同じなのは残念だが、そんな四郎でも『可愛い』『面白い』と通用するらしい。

四郎も渡り鳥なのにずっと私と居ていいんだろうか?

3日程帰ってこない時もあるが、必ず私の所に戻ってきた。やっぱり、つがい探しとか、寒さの影響とか心配だし…

でも、ずっと側に居て欲しいな…



1日目を終え、2日目も凄いハリキリ様で大収穫。人数が多い分楽な時も多いが、養う事は大変だ。


そして今、私が踏んでいるコイツ『大きなトカゲ』を仕留めた。恐竜が出てくるよりビックリだ!

大きなトカゲの正体は、カメレオンに似た、象程デカい獣だった。

色は多様に変化し、死んだ時の色がそのまま革になる。なので、『今この色!』って時に留めを刺さなければならない。

だがその間、カメレオンがジッと動かないなんてことはない。反撃し、逃げようとするので、チームの連携が大事なのだ。


『はい、カナメのせいで金貨一枚損した〜!』

「ええ〜嘘だ!赤から青のグラデーションだぞ?文句が出るわけない!」

『不気味……』

「セシルまで!?嘘だろ?ってか、誰かが今だ!って叫んだんじゃん。」

『俺は違いま〜す!』

『違う…』


他の団員を見ても首を振る…


「ま、連帯責任さ!んなこともある!次行こ、次〜!」

『ったく、しゃ〜ねぇなっ!』

『剥ぎ取り…』

「はいはい、やりますよ!皆手伝ってくれ〜!」


ハリドとセシルを残し、団員5人にお願いした。


『お前はいいよな…セシルさんと喋れて…』

「は?あれ、喋れてんの?」

『普通に喋ってんだろ…』

「…ん?で、なんでセシルと喋りたいんだ?」

『ええ?わかんねえ?鍛え抜かれた腕を自慢する事なく、さり気なく俺らを助けてくれたりさ!寡黙なのも尊敬できる所だが、喋り掛け辛い!』

「ハハハハッ!セシルはただの不思議ちゃんだろ?アイツは面白いぞ?怒らせるまで質問責めしたんだけどな。そん時は…」



『カナメ…』


耳元でドスの利いた声…


『セシル、さん…』

「…手を動かしますっ!」

『そうして…』



その日の狩りも終え、夜中の襲撃も捌いて、ライネルの隣に寝転がった。

ライネルは、普通に眠れるようになった今も、私の『夜』を守ってくれている。

『ここにいるから』と、眠るまで頭を撫で続けてくれる。あの日の悪夢を繰り返さないように。


本当に申し訳ない。

ありがとう。


私は守ってもらわないとダメな女になってしまった…




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