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要の意味  作者: かなりあ
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逃避

ここへ連れてこられて、恐らく今日は二回目の夜…

先程寝入ったコイツは、『当分はお前1人でいいだろう』と笑った。

明日の朝には見送りに行くことを約束した。

私はその時逃げ出せたらと思っている。

獅子喪失の私が、脱走出来るなんて自信もくそもないのだが、このまま居るなんて拷問でしかない…

女達が無事に戻る事…それが私を生かしている。

それが済めばどうでもいい。

こいつから離れられたらどうでもいいんだ。


今や、エヴァに合わせる顔もなく、戻る何てことが出きるはずもない。


ギルに会ってしまったら…

こんな私を見られてしまうなら…



いっそのこと消えて……




な、なんだ?

外が騒がしい…

窓から顔を出すと、盗賊達が剣で戦っているのが見えた。



………………助けが来た?



手足震える…

恐怖と歓喜がごちゃ混ぜになり、頭が真っ白になる…


「ハッ!コイツを……」



殺らなければ!!



『ブハッ…やめ、ガッ……』


胸に跨がり、殴る!顔を殴る!恨む気持ちをひたすら殴り、ぶつける…


「死ね!死ねよ!…うぅ…お前のせいで…お前のせいでなっ!…この野郎ぉおおっ!」



バーンッ


『バシュリーさん!!……お前っ!!』


けり破る様に開いた扉からベントが剣を持って入ってくる。

やれよ…殺せよ…

もう死んだって良いんだ…


ピクリとも動かなくなったバシュリーをまた殴り始める。


なんで私は剣を使わなかったのだろう?そこにあるのにな…

まぁどうでもいいか……




視界の端でベントが吹き飛び、壁にぶち当たるのが見えた。

ああ、死ねなかったか…


そっちを向くと、ぼやけた金髪が見え、心臓が跳ね上がった。


ギ………ル?



『大丈夫か?』



ち、違った……


目をこすり、凝らすと、ふわりとシーツがかけられる。


『ライネル=スパーダ』

良かった……ギルじゃなくて


シーツでぐるぐる巻きにされて、横に抱き上げられた。

見知らぬ男3人と入れ違いに部屋を出る。



「…女達は無事か?」

『……ああ。お前が無事じゃねぇがな…』

「そうか…ライネル=スパーダ…ギルはここにいるのか?」

『グレイトピエロのギルか?!そうか、お前が…』

「そう…探してくれてたんだな…」

『アイツらはもう一つの拠点に行っている…俺で悪かったな…』

「いや…それで良かった。助けてくれて、ありがと……」

『おぉ……死ぬなよ?』

「………」

『顔…合わせられねぇってか?』

「………」

『馬鹿かお前』

「このまま!…このまま、違う所に連れてってくれ!頼む!頼むよ!無理なんだよ…」


ギュッと抱く力が強くなる。


『大丈夫だ…どれだけアイツらが必死だったか分かるか?』

「分かってる!分かってるからダメなんだ!私は大事にされていた…こうなって今更好きだって気付いたって、辛いだけ…苦しいだけなんだ!」

『お前…』

「戻って、普段通りになんて、私…できねぇよ…ギル達だって、私に負い目を持って接してくるだろう?悪くないのに、アイツらのせいじゃないのに!無理だ…無理なんだ……どうしたって皆辛いままだ…」

『…駄目だ…生きていること、伝えねぇ程残酷な事はない。』

「伝えるだけで良い!会ったら…私は……」

『会って……それでも救われなかったら…来ればいい。』

「…え?」

『お前は腕が立つんだろ?ハンターとして、アイツらと居たんだろ?』

「ああ…そうだ。」

『なら、俺らの所に入れてやる。……一緒にいることが辛いなら』

「……で、でも……はぁ、ありがとう。すまないがよろしく…頼む…」


荷車に下ろされ、ごそごそと荷を弄るライネル。


『……服だ…これを着ておけ。俺は行くが、ここで…1人で待ってるか?女達の所』

「1人にさせてくれ…終わったら、今後の話を…」

『あぁ、分かった。じゃあ…変な気起こすなよ?』

「ああ。約束する」


目を合わせ、グイッと私の頭を抑えて走り去っていった。


会わせることは譲れないということか…

しかし、逃げ場は出来た…



会わなきゃいけない…

別れなきゃいけない…


こんなにもツラいとは…



私も…女だったんだな……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー



暫くして続々とライネルの仲間が戻ってきた。

私は服を着て、邪魔にならないよう、岩の上に座って待っていた。

カツラを被りっぱなしだったので、痒くて臭くて…

体も汚い…芯から汚れきって、廃れて、吐きそうなる…

子供は多分大丈夫だと思う…避妊はされていた筈だ…


『出来ちまったらおさらばだからな』

と、笑っていたアイツの顔が蘇る…


「ああぁぁ!」


頭を掻き毟り、脳みそを空にと、ただ言い聞かせる。


『……お前…だよな?』

「あ…ライネル=スパーダ」

『フルネームで呼ぶのやめてくんねぇ?…髪は…』

「ああ、カツラだ。本物はこっち。」

『聞いちゃいたが…それでさ…仲間にはまだ言ってねぇんだ。確定じゃねぇし……』

「……確定だ。もし無理なら1人で」

『いやいやいや、駄目だっつってんだろ?後で仲間に話しておくから、連絡しろ。宿教えてやっから!』

「お人好し…」

『それはお前だ。』

「女に聞いたのか?スパーダ…殿?」

『ああ。それと、ライネルでいいから…俺も有名になったもんだ!ハッハッハ』

「…違う。私はライネルに会った…2年前…いや、もうすぐ3年になるか…」

『はあ?』



ーーーーーもう、でるぞーー!ーーーーーー



『おう!……知らねぇぞ。3年前なんて…』


歩きながらふと笑う。


「私はナハルでお前にキスしてやったんだがな…」

『キスだぁ?………あ!』

「ふふふ…」

『お前か!!あん時の手針娘……なるほどなぁ〜』

「なるほどとは?」

『女でハンターやるのに納得したぜ!…へぇ〜育ったな〜』

「ああ、裸見たんだったな…」

『………すまん。そういう意味じゃ』

「わかってるよ。言い方が悪かったな…」

『……一応言っておくが…バシュリー、顔がボコボコすぎて判別つかねぇ…』

「…死んじゃあいなかったか?」

『死んじゃいない。死にかけてるがな…』

「そうか…迷惑かけたな…」

『いいんだ…生きている方が金になる。お前にゃ悪いが…』

「もういい。誰かが殺してくれるだろう…で、どこに乗ればいい?」

『荷台に乗れ。俺も乗る。』

「分かった…」


中に入るとライネルの仲間が3人立ち、盗賊が数人横たわっていた。


『すまん…女の所に』

「いい。……ベント…」


目を見開き驚くベントに足を蹴り落とす。


「おま、グガッ」

『おい…』

「ごめん…気は済んだ。邪魔したな…どうぞ、私に構わず尋問してくれ」

『……だ、そうだ。前の方で座って休め』

「ん。甘えさせてもらう…」





それから無言で目を瞑り、そうしても一睡も出来ないまま町に入った。

馬車が止まり、遂に会わなければならない時になった。


グズグズして下りようとしない私を引っ張り出し、地面に下ろすライネル。




「カナメ!!!」





会いたくて、会いたくなくて

堪らなく恋しい…ギル





駆け寄る勢いのまま抱きしめられる。


嬉しい…悲しい…

安心…苦しい…

幸せ…絶望…


相対した気持ちが蠢く中、私の意識は途切れた……





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