表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
要の意味  作者: かなりあ
41/63

幸せからの

海辺の食事処…いや、レストランと言うべきだろう。

ジャンルは、アルタイン王国なのだからアルタリアンと言うべきか?まあ、寒いことを考えている間に食べ終わり、腹八分目で店を出た。

そして、そそくさと店の裏に連れて行く。

ボタンを外され、訳も分からず戸惑う2人と、苦悩する1人…


「さあ、お脱ぎになって?」

「はぁ?お前」

「黙らっしゃい!わたくしをこの様な姿にしたのです。あなた方に拒否権はありませんことよ!」


・・・10分の攻防の末、泣き笑いをしながら人力車へ乗り込んだ。

その横には、とってもコワーイ顔の男が睨んでます。

それも笑いのツボに入り、コワーイ顔を見ると思い出すので、ギルに背を向けてやり過ごすことにした次第です。ふふ


今、私達は、岬に建つ古代遺跡へと向かっている。

視界に広がるマリンブルーの海が、私に飛び込めと囁いている。

泳げば気持ちいいに違いない。潜れば楽しいに違いない。

この格好なのが残念で仕方がない…


「ギル…私、やっぱりいつもの服装がいい…」

「…そうか…美しいが、俺も自然体のカナメが好きだ…」


照れるじゃねぇか。

カッと熱くなるのを誤魔化してごつい腕をバシバシ叩く。


「美しい?ハハハ!化粧だ化粧。化けてるだけだ…私な、海で泳ぎたい。釣りもしたいし、屋台の焼き魚とかかぶりつきたいし、この服じゃ不恰好だろ?だから今日限り、美しいらしいカナメちゃんは閉店させてもらうよ。」

「………あ、ああ。お、お仕置きされるようなことをしなければな」

「ん?しねぇって!あんなこともうないって!しかし、あれは良く飛んだよな!ハハハッ」


あれだ。孤児院を脱出する時、私をバレーボールの様にレシーブさせたことだ。

ダンスとかでよくやってるじゃん?と、心の中で言い訳する。


「練習しておくか…」

「いつ使うんだよ!」

「ハハハハッ」


ギルが目を細めて笑う。

それを見て、変わったなと思う。

前まではどんなにバカをしても、ニヤリとするか、笑いを堪えるかだったのが、大口開けて笑うようになった。

自ら冗談を言うぐらい、雰囲気も柔らかくなったと思う。

なんだか嬉しくなって、私も隣で笑ってしまった。




程なくして、岩を掘って造った様な遺跡に到着。

上まで登って、海に張り出した岩盤の上で『心中を迫る女』をアルにけしかけ、大笑いした後そこを去った。

ヴィルが大盛り上がりで、ノリでナイフを抜いてしまったのはやりすぎたかな?ハッハッハ


ひとしきり遊んで、食べて、帰ろうとしたのはもう深夜も間近。

散々引き回した人力車に乗り込もうとした時だった。



「あっ!アイツ…」

「どうした?」

「あ……いや、何でもない。」

「…?早く乗れ」

「ごめんごめん」


アイツだ。ナハルのハンター街に初めて行った時、なんだかんだでお礼にぽっぺにチューしてやった奴…確か名前は……


「ライネル=スパーダ」

「……誰だ…知り合いか?」

「知り合い…かな?一回会っただけ。確か剣聖とか言ってたような…」

「剣聖の神風、ライネルのことか!」

「神風?なんだソレ!ハハハハッ!通り名?」

「……知らないのか?」

「知らないな〜。そんな有名人なのか?」

「…名の売れた剣豪集団だ。3年前、シルダが攻められたことは知っているか?」

「…ああ。ウィルナードも援軍に行った。」


シルダとはリーンの西にある、鍛冶の町。

ウィルナードもその時は駆けつけた。

私は言葉をやっと聞き取れるぐらいの頃で、出て行ってからようやく『戦争に行った』と理解したのだ。

そりゃもう驚愕したさ。毎日教会で祈るシルエラとエヴァ…私も神なんかしんじちゃいなかったが、本気で祈った。

2週間で帰ってきて、2日滞在の、物資提供だけと言っていたから、危ないことは無かったらしい。



「そこで傭兵として参加し、風の様に通り過ぎた後に、敵軍の兵が次々倒れていったらしく、それが神風の由来らしい。最終的に大将を捕らえて武功を上げ、ハンターのみならず、貴族方にも『剣聖の神風』と名が通った。最近では大物の盗賊頭を殺ったと聞く……」

「へぇ〜……凄い奴だったんだな〜」


……私が会ったのは確か2年前…有名になった後だな……

有名人にチューしたわけ?それ、まずくねぇか?やっちまったか?

いやいや私、もっとガキンチョだったし大丈夫だろ?大丈夫!!


「大丈夫とは…何をした?」

「…喋ってた?」

「ああ。」

「……テヘッ」

「誤魔化すな」

「大したことじゃねぇよ。2年前一度会ったきり。名乗っても無いしなっ」

「…言えないことか?」

「ちげぇよ!お礼にキスしてやっただけだ。ここにな」

「…………」

「…なんで黙るんだよ…お子様ワンピースの少女にポカーンとしてたぞ?ハハハハッ」

「…もうするな」

「バーカ!ヤキモチか?ハハハハッ!今しちゃマズいだろう?アル曰く、うら若き乙女らしいからっ!」

「………」

「乳あれば何でも乙女って感じか?あのエロ魔神め!」

「…仕方がない。男とはそういうものだ。気をつけろ」

「普段の私じゃ例外中の例外以外こねぇよ。男色の奴には気をつけよう…」

「それも複雑だが…」

「ん?…心配すんな!投げ飛ばしてやるから!」


ニヤリとギルを見ると、頭を撫でられた。

腕に頭を預け、寄り添う。


「娘を心配する父親だな…ああ、安心する…」

「……………はぁ…もう、それでいい。」


もたれた腕を抜き肩に回された。

ビックリして顔を見たが、同情の目に見えたので好意に甘えてもたれかかった。

私は守られている。

守ってくれる仲間がいる。


夜の涼しい空気に、心地良い暖かさが剥き出しの肩をさする……

あまりの気持ちよさにすっかり寝入ってしまったのだった…。




ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーー



『父親』という言葉は胸に針を突き刺されたかの様に痛い…

ヤケクソの様に肯定したが、行動は裏腹に、肩を抱いた。

驚いてこちらを向くカナメに、この痛みが伝わればいいと思った。

拒絶して、俺のことを男と認識して欲しかった。

しかし、腕は拒絶されず、甘えるようにすり寄ってきたカナメは、ただ身を任せ、すぐ眠りに堕ちた。


冷えた肩を撫で、顔を寄せても、安らかに眠る思い人…

体を支えてもずり落ちそうになるのに見かねて、横抱きにし膝に乗せるが、ムニャムニャと猫のような声を出したのみ…


ここまで安心されては、嬉しいより辛いが勝る。


思い人の女の象徴を目の前に置かれ、数々の誘惑が頭をよぎる…

手を伸ばせと訴えるもう1人の俺。

目を瞑ると益々想像してしまうのに耐えきれず、女を掻き抱いた。

今動けば…俺は…間違いなく、禁忌を犯す。

耐えるために、これくらいは許してくれ……

俺の醜い衝動をちっぽけな理性で繋ぎ止める…


どれくらいそうしていたのだろう…




『ありがとう』




カナメの声にハッと我に返った。

『感謝』の言葉…

寝言なのだから、俺に対して言ったのではないかもしれない…

それでも、普段甘える何てことが無いカナメが、俺に甘えてきたのだ。

それに気付くと、途端に暗雲が掻き消え愛おしくなった。

俺といて、安心出来る事…それは、否む事ではない。


『慕われている』


現に今、俺の胸元を掴み、幸せそうな顔をしている。

意識がある間、俺が、肩や髪を撫でても不快なことはなく、穏やかな顔で目を閉じていたではないか。

こんな無防備を晒すのも、俺を頼っているから…

身も心も俺に預けてくれている…


意味は違っても、カナメの特別になれていた。



額に口付けて身を離し、今まで一杯一杯で考えに至らなかった、『上着を脱いでカナメに被せる』という単純な動作で誘惑を断ち切る。



この、愛おしくて止まない猫は、度々俺の心を掻き乱すが、俺に甘えて腹を見せる程信頼し、安心出来ている。


で、あるなら答えねばなるまい。


『お前のためなら何でもしてやる……愛している、カナメ……』





「あれ〜?カナメ寝ちゃったの?…こんな所はまだまだ子供だね〜」


頬をつつくヴィルから一歩離れる。


「起こすな…」

「え〜、でも、化粧落としたり、着替えとかさ…やっちゃう?」

「阿呆…無粋な事はさせん。慣れない女の姿で疲れている…このまま寝かせよう。」

「ふふふ…なにか進展あった?」

「…ない。俺は父親だ。」

「あちゃ〜………で、どうして嬉しそうなのかな?」

「……そう、見えるか?」

「うん。幸せそうで何よりだね。ギルがこんなに思ってるのに、この子はホント、鈍感で救いようがない…」

「…ヴィルは…」

「俺?俺がカナメを好きだと思ってた?…そりゃあ好きさ!親友だから……ふふふ」

「そうか…」

「安心しなよ…応援してる。カナメが気付くと良いんだけどね…」

「それは駄目だ。……それよりカナメの部屋を開けてくれ。」

「ああ、ごめんごめん…はい、どうぞ。ギルもそこで寝ちゃえば?ハハハッ」

「俺は………戻るぞ。」

「勿体無い…据え膳食わねば」

「据え膳じゃない。ほら…行け。」

「ホント、損な性格してるよ…」

「…わかっている」





俺はこの選択を死ぬ程悔やむことになろうとは、露程も気付いていなかった…………






ーーーーーーみ〜つけたっーーーーー






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ