女装
およそ10日の旅を終え、国で見ると南の端の東側…ゼルスという町に着いた。
ここは海がある!魚介類がてんこ盛り〜!!
それとも船か?釣っちゃうか?
泳いじゃう?素潜りしちゃう?銛は売っているのかね〜?
「嬉しそうだね〜。そんなに早く、婦人服着たかったのかな?」
ヴィルのニヤ顔に唖然とした…
忘れてた……!!
うわ〜最悪…
ここの女、足がチラリと見えるのは、スリットじゃなくてやっぱり…パレオじゃね?
「えーと…アレ、着るんすか?」
「ハハハハ!いいねぇ〜!お仕置きには打ってつけの厭らしさ!くくく」
「アル!わかってんのか?私はもうすぐ29歳だぞ?目がつぶれても知らねーぞ?」
「バーカ!お前は今14にしちゃあ発育の良い、うら若き娘だぞ?諦めて女を披露したまえ!ハッハッハ」
「ヘルプミー!ギルバート!」
「へる…?…俺達からの仕置きだ。味方は出来ん」
「マジかーー!!」
「ふふふ…俺の美的センスに委ねていればいいよ。」
「……猛烈に不安だ…」
「あ〜ウキウキしてきた!店をまず見聞しなきゃね〜」
かくして3日後、その時は来た。
腕を組まれ、ヴィルに連行されている。
その後ろにアルとギル…
逃走は許さない。といった感じだ…
…諦めよう。もう、割り切ってしまえ!
シルエラの調教を受けたのだ。存分にやってやろうじゃないか!!
まずはマッサージ屋みたいな所に連れて行かれた。
なんだ、やったぜ!…と、思ったのは間違いだった…
個室に入って真っ裸にされ、顔の産毛も、襟足の産毛も、足や脇…言えない箇所の毛も整えられた…
その後は全身クリームで揉み込まれ……
恥ずかしさで死ねる。ヤられたような気分だ…女に。
次は何故か路地裏の怪しげな店…中に入ると生首。じゃなくて…カツラだ。
選んだのは暗めの茶髪ロング…眉毛が黒いから、馴染む色はそれだけだった。
次は服屋。
来た!恐怖の時間が…
何やら三人楽しく服を選んでいるが、すっげぇ場違いだぞ?気づいているかい、諸君…?
私は試着室の前のテーブルで、茶を頂いて待っている。
「カナメ!どっちがいいと思う?」
あたかも、自分が着そうな言い分である…
「……どっちもピンクじゃねーか…一緒だ、一緒!」
「カナメが絶対着ない色ってピンクでしょ?赤と黒も捨てがたいけど、顔が幼いからね…花のレースか、蝶のレースか、どっちがいいの?」
「……花…」
「く…コレをカナメが…ふくくくく」
「アル…私の変身にとくと驚くが良い!」
『試着しますか?』
「しますけど、この野郎共に見せたくないんですが…」
「ええ〜!」
『は、はい。では、奥に…奥にご案内致します。』
「お願いします。…後で化粧しに行くんだろ?そこで見せてやる。」
「「「わかった」」」
「どんだけ心待ちにしてんだよ…あ、すいません、行きます…」
久しぶりに付けてきたブラジャーとパンツ姿になる。
鏡を見ながらしみじみ思う。
しかし、乳も成長したものだな…
この分だと背も伸びているだろう。スキニーも履けそうだな〜。
『失礼します…それは…!?これは何ですか?』
「え?ブラか?」
『ぶら、と、仰るのですね!何とも画期的な!是非後で見せていただけませんか!?』
「い、いですけど、アイツら待ってるんで少しだけですよ?」
『ありがとうございます!それでは、下から服を引き上げて頂いて…』
「は、はい………ああ!こう着るのか〜。なるほど!」
『この服だと、ぶら…が、見えてしまいますので、お外し頂いても宜しいですか?』
「マジか〜ノーブラかよ…まぁ、しょうがねえな…」
『……こちらに胸当てが付いているので、心配は無用で御座います。こちらを首に掛け…失礼しますよ…』
胸を触って、グッと寄せられる。
ホルターネックの超ミニワンピースで、伸縮性のピッタリとした着心地。…背中はスケスケ花柄レース…
エロい!アホか!
『お気に召しませんか?』
「い、いえ、いいんです…下はコレだけ?」
『いえ………その布地だとこちらが宜しいかと…』
「これで良い。巻き方教えてくれ」
『こう巻きまして、この様に結びます…お似合いです。』
「そ、そう?痴女に見えない?」
『ち…じ?』
「いや、とりあえず普通何だな?これで町を歩いても。」
『はい!海辺であれば、お腹を出しているのが流行っていますし、お客様程の身体をお持ちなら、その位せねば損と言うもので御座います!』
超力説された…
「へ、変じゃ無ければいいんだ…」
『お客様…もしよければ、私がお化粧や髪結いなどできますが…いえ、させて頂けませんか?』
「え?…私、化粧品もってないだけど、大丈夫か?」
『お任せ下さい!私が持つ技術を貴女様に捧げてみせます!』
「そ、そう…じゃあ任せるから、アイツらに伝言を頼む。準備が出来るまで時間潰しておけと。」
『はい、今すぐお伝えして参ります。失礼致します。』
ーーー皆!店番頼むで!素晴らしい素材を見つけたでぇ!ホホホホホ ーーー
私は素材…聞こえてるぞ……
それから、あれよあれよと顔を作られ、カツラを結われと、セコセコ動くマダムっぽい店主に飾り立てられ、完成した。
うん、鏡を見て『誰ですか?』は、お決まりだろう。
化粧でこんなに鼻筋が通るのか…宝塚程じゃないよな?
マツゲもグリングリンじゃんか…塗りすぎじゃね?
髪はアップの後れ毛ウェーブで、左の耳付近には大きな花の銀細工が刺さっている。
服は先程の通り、ホルターネックで谷間が覗き、同じ薄ピンクの生地に薄いレースが重なった、右腰で結ばれたパレオ。
靴は白地にピンク花柄のハイヒール。
ネックにしていた鍵と指輪は外され、大粒の一粒パールのネックレスを付けられた…
鞄も何故か持たされ、至れり尽くせりなのだが、外した私物やブラジャーは人質に取られ、貸してくれたネックレスや鞄などと引き換えだそうだ。
明らかに高そうな感じだが、もう、ブラジャーに夢中で聞きやしない…
『2、3日で返してくれたらええよ!あー下から持ち上げてるんやな!もみ洗いやないと崩れてまうやろな…うーん』
客に本性だしちゃダメだろう……
「わかった…財布男呼んでくる…」
『……あ!お金も返しに来るときでええよ!その代わり、これの試作品作ってもええ?』
「別に好きにして良いぞ。私のさえ無事ならな…」
『ありがとう!ホホホ…この鍵は持っとき。あ、返すもんは返してな?』
「あ、ああ…じゃ、行ってくる。」
『ホホホ…連れの方を驚かせていらっしゃい!紳士服の方に居るはず!』
「そうだったな………殿方を、アッと言わせてご覧に入れますわ!」
『いいわ、いいわ〜!平伏させてご覧遊ばせっ!』
「いいな、それ!ご覧遊ばせ!くくく…」
いい感じに乗ってきたぜ!
お、調度3人、向こうむいてんじゃねぇか…ふふふ
「そこの殿方…わたくしと少し、遊んで下さらない?」
「「…………」」
「えーっと…」
狼狽える海兵みたいな格好の3人に一人一人目を合わせ、微笑みを崩さない。
淑女の基本である!
「もしかして…わたくしのこと、ご存知でない…?」
ふくくくく…馬鹿みたいな顔しやがって…笑いたい!笑いたい!
「………」
「申し訳な…え?」
「…カナメ」
「遅ぇよ!気づけ気づけ。くくく」
「まじっ、マジなのか?!すげぇ…」
「…すごい、変貌ぶりだね…綺麗だよ。カナメ!」
「………」
「ギルは声も出せないか?別人になりすぎた?ふふふ」
「…綺麗だ」
顔を引き締め、顎を上げる。そして目を細めて見下すのだ!
「そんなこと、初めから分かっておりますわ!行きますわよ!時間は無限じゃありませんわっ」
「クククク…高飛車女になりきりか?」
「なにを?わたくし、いつもこれですわっ。従者は黙ってついてこれば良いのです!」
「ふふふふ…エスコートは入りませんでしょうか?お嬢様…」
ヴィルが手を差し出してくるが、タカビーは傲慢が真骨頂!敢えて違う奴を選ぶのさ!
「そうね…貴方よりそこの無愛想な殿方に頼もうかしら?」
「ククッ…喜んで…」
「俺も腕くんでよ〜」
「仕方がないわね…今日だけよ?」
「至高の幸せ…有り難く存じます。ふふふ」
「アルは後で歩いてやるからな!」
「俺には素に戻るのか!ハハハ」
「アルは幼女が好きだから〜、純情系でやってやるよ!」
「好きじゃねぇよ!」
「どこに連れて行ってくださるのかしら…」
「無視かよ…まあ、楽しむとするか!」
「そうだ!手引き車頼んで、観光しようよ!」
「手引き…人が引くのか?…ですの?」
「粗があるね…演技はしっかり宜しくね。」
「わたくしにその様な口を叩くなど、無礼先晩!」
「これはこれは…申し訳御座いません、お嬢様…」
「いいわ…肝に銘じておきなさい…あ、四郎!お前は私が分かるのか!偉いぞ!」
「出てる出てる…地が出てる!」
「…これはごめん遊ばせっ。ホホホ…案内せよ!従者!」
「しらねぇよ…なんか違ぇんだよな…純情系でいってくれ。」
うーむ…両手を組んで、一歩アルに踏み出す。そして、上目遣い…ぶりっこのの基本基本!
「…お願い致しますわ。従者様?」
「うっ…なんかキた……それならいける!」
「これなら、優しくしてくださるのですか?」
首を傾げる。炸裂、瞬き16倍速!!
「ぐっ……」
「…カナメ、アルが本気になる前に止めておけ。」
「あら、それは大変ですわね!殿方のお心を弄ぶ所でしたわっ!なんて、罪作りなわたしくし……」
ヴィルに、ヨヨヨともたれかかる。
「「「…………」」」
「いや、黙られたら恥ずかしいからさ…」
「姉さんぐらいでいいからさ…楽しもう!」
「楽しもーう!あ…間違えた」
「だな!」
「そうしよう。」
手引き車はすぐに見つかった。手引き車とは、やはり人力車だった。
2台捕まえ、アルとヴィルがペア。私はギルと乗り込む。
つーか、ギルがデカすぎて私しか一緒に座れないのだ。
ヴィルならギリギリと言った所か…2人の密着は気持ち悪いだけなので、自然な流れだな。
この町のオススメスポットを車夫に頼み走り出す。
まずは、海辺の食事処へ出発だーー!
「カナメ…足を閉じろ」
「やべっ!完全気が抜けてた。よいしょっ」
「…足も組むな」
「ギル…そしたら上着を貸して頂ける?」
「……無理だ」
「フッ…何故ですの?その服の中はどうなっていますの?」
拒否するって事は相当面白い筈だ。ふふふ
「見せろ〜!」
「待て、待つんだカナメ…あれだ。袖がない。アイツみたいな風になる…」
脱がそうとした私を抑えつつ、通行人を指差す。
そこには、白のスラックスパンツに、白のノースリーブYシャツ、青のスカーフ的なねじねじを首に掛けている。
なるほど…細身で色が黒いこの人とは違い、ギルが着ると…
「ブハハハハ!見せてくれ!是非とも!!」
「待て、落ち着けカナメ!着いたら見せてやる…だからここでは勘弁してくれ…」
「くふふふふ…アル達のも見なければ!や〜楽し…凄く楽しいですわっ!ね?ギル様…ふふふ」
「……はぁ」




