ケイナーの思うところ
昨日、広場で偶然会った新入り『カナ』を、マキシムんとこ連れて行った。
俺ら3人に、ガキ1人や。普通、年上の知らん奴の所行くんとか、萎縮するやろうし、味方の1人もおらんねんからなんも言われへんハズや。
…やのにあのガキは、えらそうな事口にして、堂々と目を合わしてくる…
マキシムも違和感感じたんやろな…明日も来るように約束させた。
そして俺の問いかけに怪しいセリフを言い捨てて帰っていったんや。
次の日。あの不思議で、得体の知れんカナは、約束通り1人で待っとった。
後をつける奴もおらへんし、何もしてけぇへん。
普通に喋るし、前の日みたいな怪しいことは言わん。笑うし、ツッコミまくりやし、遠慮のない態度がおもろかった俺らは散々ボケまくった。おもろくて、怪しいとこがわからんようになってたんかもしらん…
帰った後マキシムと考えてみたんやけど、ちゃう町の者やからか?とか、俺が怪しい思うからそう思ってまうんか?とか、堂々巡り…
結局んところ、気に入ってしもたんやろな…今思ってみると。
カナが来だして4日目…
もういつも通りって言ってええぐらいの恒例…マキシムの猫なで声を聞きながら、シローへの餌やりを見た後、そん時はやってきたんや…
カナの違和感の理由…俺らはやっぱり探られとったってこと。
名前もちゃう。病気もちゃう。ゼルス出身ちゃう…ってこと。
嘘嘘嘘、嘘だらけ…なんや、安心してもうてただけに怒りを覚える。
しかもや!仲間を呼んどるとか何ほざいとんねん!って話や…
マキシムも、なんでカナの言うこと聞くんかわけわからんし、これでまた嘘やったら死んで終わりやぞって思わんのか?
町変えるって、そんなん出来るわけないやんけ!
カナみたいなガキに出来るなら、誰でもやっとるわ!ボケ!
下に降りると、まだカナの仲間は来てへんかったから、周りに居らせた5人に部屋の上階段に待機しとくよう言うて、待っとった。
ほんならすぐ現れて、ゴッツい兄ちゃんと、キラキラした兄ちゃん、前会うたアル?やった。
『すまない』とかなんとかほざくのんを聞き流しながら、部屋に向かい、入った。
カナん事、縛っとってもええぐらいに思ってたんやけど、マキシムは横に座らしとるだけ…
カナを気に入ってたんは、分かり切っとったけど、コイツは裏切ったんやで?俺らと笑い合うてたんも嘘やったんや。
今まで、頭やからって理由で殺されかけたり、探されとったりしてヤバかったんも忘れたんか?
俺の唯一のダチなんや…無くしたくないんや…俺が守らなアカンねや!!
ゴツイ兄ちゃんが話し始めて、いつでもカナを人質にとれるように、後ろで立って聞いとった…
コイツらの話す話は、軍をも動かす大袈裟なもんで、俺らにはけして出来ひん、ホンマに町を変えれるもんやった。
上手くいったら…やけどな。
でも、それは困るんや…孤児院の院長だけは…
………俺が殺す!
それだけは譲らん…絶対に……
俺が殺して、領主の関連が分からんようになるかもしれへんけど、それだけは譲られへんねや……
殺す…殺す…殺す………!!
軍に盗られる前に、俺の手で!!
俺は変わった後の人生なんかいらん。
牢屋入れられようが、処刑されようが、なんでもかまわん…
アイツだけ殺れれば!!
マキシムが捕まるんを避けたら、なんも思い残す事はない。
他の遠い町で、普通に平和に暮らしてくれたら…そんで、そこで女でも見つけて幸せなってくれたら、俺も幸せや…
貧困街が良くなれば、マキシムが纏める必要もないんやから……
『カナ…また明日。』
は?!マキシム…?カナとはもう終わりやっちゅうのに、明日やと?!
顔も見たないのに…でもマキシム1人で居らすわけにもいかん…
くそっ!明日は復讐最後の機会やのに……
まぁ、ええ。夜や…兵士に紛れ込んで殺る。
カナらが部屋を出て行った…
しばらくマキシムも黙ってて、そして、俺に言った。
『今夜、最後の会合開こか。末端まで全員、貧困街の方に集めろ』
それから、下の者を集め、合間に俺の兵士の服をアスラーに頼みに行って、深夜の会合を始めた。
100人はゆうにおる中、マキシムは台に上がり、よう通る声で端から端まで聞こえるように、今日聞いた俺らの行く末の話をした。
賛同する者、不安を漏らす者、不満の声を上げる者……
それを聞いたマキシムは、一際でかい声で叫んだ。
『黙れ!!!よう聞けよ……どうしても信用出来ひんかったら、明日の昼までに町を出ろ!でもな………大丈夫や!!!新しくなった町で、また会おうや!な?みんな!!』
その瞬間、この建物潰れんちゃうか?ってぐらいの雄叫びが上がった。
その夜、マキシムが俺に言った。
『明日は、俺の悲願が叶う……その後は、一緒に檻ん中の猿になっとこや!ほんで、先に檻から出たケイが、俺が出る時迎えに来てくれ…頼むでケイ…』
それはもう、満面の笑みやった……
俺はこの顔を一生忘れることはないやろう…
俺がアイツを殺りたいん分かってて、止める為に言うてるんやとしても、これほどコイツと居れて嬉しく思った日はなかった……
朝っぱらの、まだまだ寝とる時間やのにカナが来た。
ホンマ図々しい奴やわ…
はりきって料理なんか始めよるし、よー喋る、よー喋る…
ついでにシローも喋りよって、『マキィー』みたいな風に聞こえたもんやから、マキシムが…
ヤバかったな、あれは。ちょっと引いたわ…
カナは、軍が領主を捕まえたん見たら、ゼルスに行くらしい。お別れやって言っとった。
なんや有名なったるみたいな事ほざいとったけど、俺には関係ない。
まあ、最後ぐらいはと思って笑ったったら、こいつも満面の笑みを向けてきよった…
ホンママキシムに似とるわ……なんか嫌やけど。
『私の出身は、この国最北のナハルって町。名前はカナメ。性別………オンナ!これが私の最後の秘密!じゃあな!元気でな!』
とんでもないもん、言い捨てて行きよった……
マキシムも呆けとる…これはしょうがないわ。
俺もあん時、女の可能性を捨てたからな…ホンマやられたわ〜!
夕方、マキシムに『領主の方見てくる』って嘘ついて、別れた。
アスラーから服をもらって、孤児院の見えるとこでその時を待つ。
マキシムにも見つかるわけにはいかんから、細心の注意を払わなアカン…
深夜も深夜…月明かりも弱い、全然見えへん中、松明付けとる馬車が止まった。
マキシム…ごめんな…俺の悲願は復讐なんや。妹をあんな無惨に殺られた恨みは、これでしか晴らされへんねん!ごめん……
兵士達に紛れて、隣接する教会まで移動。
屋根をよじ登り、孤児院の高い外壁を飛び越え、足だけは折らへんように気ぃ付けて下りた。
…いや、落ちたやな…マジで…痛いわ……左肘ヤバそう…
でも殺れる。
例え相討ちでも…もうすぐ殺れる!!
忍び寄って、裏扉を針金でこじ開け、中に入る…
誰一人おらへんけど、ゲスの高笑いが聞こえる。
1人がそのドアに駆け寄って扉を叩くと、豚と奴が出てきて背を向けて離れていく…
今や!!
短剣を抜いて走り出した…
その時、凄い勢いで後ろに引かれ、同時に口と体を押さえ込まれ、全く身動きがとられへんようになった…
わけもわからん中、左肘の痛みで我に返って、復讐が失敗したことを悟った………
「ケイさん…ごめん。ごめんなさい…」
カナ!?お前っ!!
何でおんねん!離せや!馬鹿力!!!
叫んだつもりやけど、カナの手に唸ることしか出来ひんかった。
いきなり首にチクッと痛みが走って…
それから目覚めたときには、もう俺は檻の中やった。
カナのあの声が蘇って、それが夢で、ホンマは殺れたと思い込みたかった。
けど、隣か、隣の隣かしらんけど、そいつがハッキリと言いよった…
「商会の奴も、領主の私兵も、孤児院の院長も、皆捕まったし、この牢屋のどっかに居るんやろな〜!居るんか?クソ野郎!!」
「ホンマや!声聞かせろや!情けない声聞かしてくれ〜」
「「ハハハハッ」」
『…おい…ゴホッ…ホンマかそれ!?』
喉が枯れて声が出にくいわ…
「あ?」
「お、おい……ケイさん?」
「ケイさんですか!?」
『そうや…院長も捕まったんか?死んでないんか?…今、あれから何日経ってんねや?!』
「あ、え…院長捕まるん、俺見ました!」
「今日であの夜から3日です!」
「いや、2日やろ!まだ昼飯食ったばっかしやで。」
そんな寝とったんか…あん時!!カナに薬打たれたんや…くそ!ボケが!!
「細かいんじゃ!ケイさん…俺ら、コッソリ野次馬しとったら捕まったんです…ケイさんもですか?」
『……わからん。ごめん…ちょっと静かにしとってくれへん?マジで……』
「は、はい……何かあったら聞いてください…」
『ありがとうな…ごめんやで……』
あれから、話聞いたり、調書取らされたりで、一月経った頃…俺は牢屋から出された。
孤児院の奴4人殺したんも、洗いざらい全部言ったハズやのに…
マキシムはどうなったんか聞いたら、後2ヶ月の拘留で出て来るらしい…
俺もそうやけど、刑軽すぎちゃうか?
拘留所から出たら、ネイトとラグが罰の悪そうな顔で立っとった。
俺は、小走りで近寄り、2人に拳骨を浴びせたった…
理由は、カナと一緒に居ったんを思い出したからや!
「つぅ〜〜っ……ケイさん…お務め、ご苦労様でした!」
『……なんやそれ?』
「カナメが、ケイさんとマキシムさんが出て来たらそう言えって…」
『その名前出すな!ホンマ胸糞悪いわ…』
「あ…でも…手紙預かっとるんです。カナメから…俺ら読まれへんから、何かいてるかさっぱりなんですけど…どうぞ…」
手紙やと?アイツのなんか……チッ……気になるな…
ネイトが差し出した紙をサッと取り、広げる。
「ケイさん!俺ら失礼します!すいませんっ」
走り去る足音を聞きながら、文字を見ると………
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ケイさん、お務め、ご苦労様でした!
裏切ってごめんなさい。復讐を止めてごめんなさい。
でも、あの時殺してたら、院長はただ楽に死ねただけで、これからの苦しみを味わうことなく、天に登ることになったんですよ?
悔しくないですか?あいつは幸せな思い出しかないまま死ぬんですよ?
これからあいつは、秘密を全部吐き出すまで拷問され、牢屋の生活や、強制労働をさせられる事でしょう。
豪華な暮らしから、一変して底辺に行くんです…さぞ苦しいことでしょう。
ここまでで、ケイさんの気持ちは、清算出来たでしょうか?
それとも私を恨んでいるのでしょうか?
聞くのが怖いので旅へ出ます。
私を一発殴りたかったら探してくださいね。
言っときますけど、私は結構強いので、力をつけてきてください。
また会える日を楽しみにしています…
カナメ
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『クククッ…舐めとんなコイツ…』
これは、マキシム出てきたら殴りに行かなアカンなぁ。
あー!憎たらしい顔してんねやろな…腹立つわ!
でも悪くない。やること出来たし、マキシムの約束守れそうや。
せいぜい有名になって、早よ居所教えてくれや
……カナちゃん……




