顔合わせ
痛っ、痛い痛い痛い痛い!
「…いってぇ…なんだっ!?」
ガンガンガンッ!
「声…?カナメ!開けろ!…ぶち破るぞ!」
なんだ…四郎がつついたのか。右肩、血が出てんじゃねぇか…
嘴、ヤスリにかけてやろうか…こいつぅ!
「起きやがれ!!」
「はいはいはい…起きた!開けるから!」
「お前はまた、その格好か!?服着て開けろ、馬鹿!」
「…今…何時?」
「10時だ馬鹿野郎!朝飯、もうないぞ!」
「ええ〜!?…なんで…なんで起こしてくれなかったんだ…」
「起こした!何度も。そりゃあ、何度も。今行くっつって来なかった、お前が悪い!」
「返事したのか…?全然覚えてねぇ…」
「早く部屋に来い!」
しかし、寝坊なんて久々だな…やはり夜更かし厳禁だ。今日の様な時の為に、後で鍵渡しとこ…
「お待たせ致しました!昨日の清書になります!」
「…ごくろう。……読めん。」
「ギルがノリツッコミしてくれたぜ!ハハハッ!」
「そんなことより、今日のお前は質悪すぎ…」
「ごめん…寝る前に、ギルかアルへ鍵預けるよ…」
「俺はダメなの?」
「ヴィルに預けるなんて自殺行為だ。」
「…俺に預けろ。」
「うん、アルに預ける。…腹減った」
「…読んでからだぞ」
「さっさと読むよ。まずはーーーーーー」
「ん。意外にちゃんと書き取ってたんだね…」
「意外に、が余計だ。良くやったでいいじゃんよ…」
「良くやった」
「これだこれ。ギルは私の心の拠り所だ。ありがとよっ」
「ああ。」
「なあ〜にぃ?イチャイチャして〜」
「はいはい、言ってろ…飯食ってくる。」
「昼には戻れよ!」
「はいよ〜!」
ガッツリ食べたかった所だが、近所の食事処はすべて準備中だった。ハンター街まで行けば開いてるだろうけど、かかとを返してパン屋に変更。天気もいいので、四郎と一緒に広場で食べることにした。
四郎は、パンの所は食べず、具となったジャム状の果物や、ハムなんかしか食べない贅沢者と判明した。
『お前…』
「んっ!!」
無意識に横を見ると、アスラーと目が合い、近づいてきたのだ。
必死にパンを飲み下し、頭を下げる。
不意打ちとは狡いぞ…服、着替えてねぇ…
「おはようございます!」
『…お前、その鳥…』
「あ、友達の四郎です。何でか懐かれまして…アハハ」
『…まぁそれはいい。お前は、ホンマに俺らのチームに入るつもりなんか?』
厳しい、探るように目を細めて直視される。
「…ヤッパリ、こんなガキやったら駄目なんですか?」
『ええんやけど、お前ハンターちゃうんか?兄ちゃんが稼いで来るんやろ?わざわざ俺らんとこ来る意味あるんか?』
「…俺、何もさせてもらわれへんから、アル兄に頼んで…って言うても、ホンマの兄貴違うんですけど…1人の間、なんか出来ひんかと…」
『…ホンマか?てか、俺らが何しとるんか聞いたんやろ?やる気なんか?』
「もちろん…こんな俺じゃ、無理やと思いますが、ラグさんとかと一緒なら…」
『分かったわ…知らんぞ?痛い目合う事もあるんやからな!それに、ケイさんがお前の』
『やあやあ、おはようさん。俺がなんやって?』
『ケイさん…』
「お、おはようございます!」
ケイナーまで来るとは…冷静に…訛りもちゃんと出来てるのか不安だってのに…冷静に…
『ケイさんが気にしてくれてたって、言おうとしたんです。』
「え?ケイさんて、上の人何ですよね?俺なんかに…?」
『気になるよ〜。可愛い顔しとるもん!この青蘭鳥もええな〜アイツに見せたいわ〜』
優し気に微笑んでいるが、狂気は皆さん周知、と聞いている!騙されないぞ!
「アイツって…?」
『親友。今から行くんやけど、一緒に行かへん?』
一緒に?無理無理!と言えたらいいんだが…アスラーは頷きを施してくるし、昼には戻らねば…
「是非行きたいんやけど、昼には戻れって言われてるんです…」
『すーぐそこやから。見せたら帰ってええで?アカンか?』
ヤバくなったら逃げろ!だが…もしやチャンスか?親友がマキシムの可能性大だ。会えるチャンス…今しかないんじゃないか?
危険は承知。しかし、居所の目星はついても、5カ所もあるし、何より顔を知らない…
仲間に判断を仰ぎたい…どうしよう…
『アカンの?』
ああ、もう!行ったる!私の独断だ!すまん、皆!相手を見て、話通りか確かめてみるよ…
「分かりました。ちょっとしか行けませんが、お邪魔します!」
わざと大きな声で言う。
『元気やな〜…ほな行こか〜』
肩を組んでくるケイナーの肩越しに浮浪者を見ると、不自然に手を上げているので、伝わったようだ…
昨日、会った浮浪者で助かった。最悪の場合、アイツに望みを賭ける!
頼むぞ…涎ジジイ…
「親友って、やっぱ上のえらい人なんですか?」
『ん〜そうやな…心配せんでも、君にそっくりな奴やで〜。可愛い奴や』
「…俺、可愛いんですか?…やっぱ、ガキやから」
『なんな〜ん。気にしとるん?そこも可愛いわ〜アハハハ』
子供臭い演技で自分を低く見せるのは、危機になったとき油断を誘うため。 昨日の情報のおかげで冷静に言葉を選べる事を幸いに、当たり障りの無い話や、自らの設定通りに話ながら、裏路地を進み、集合住宅に入っていった。
『おーい、お客さん連れてきたで〜!』
「あの、カナって言います!はじめまして!」
『ん…ああ。新入りの……眠い……』
何とも自由な奴みたいだ。
ベッドで寝そべったまま顔だけこっちを向く、茶髪の裸男である。パンツは履いているんだろうか?…じゃねぇ!気持ちよさそうに寝やがって…羨ましい…
『青蘭鳥来とるんやで〜』
『んん〜…えっ?!マジや!!』
さっとベッドを降りる裸男。パンツは無しか…一々驚かねぇけど 、隠せよ。気持ち悪ぃな…
ほらみろ、ケイナーに小突かれて服を投げつけられている…なんの茶番だろうか…拍子抜けである。
改まった顔しても、さっきのことは覚えているぞ。ケイナーの親友さん…
『え〜マキシムや。…君は…カナ、やったよな?こっち来て青蘭鳥見して。』
「はい…でもこいつ、俺しか触れないので、もしかしたらマキシムさんも無理かもしれないんですが…」
『…そうなん?ゆっくりすれば…あっ!』
うん。やっぱ逃げたな。
『めっちゃ…悲しいやん…』
「………」
めちゃくちゃ落ち込むマキシムに、申し訳ない顔を精一杯作るが、呆れて物も言えない…奴は、威厳とは無縁だ…
「パンなら食べるかも。良かったら…」
『ホンマに?ありがとう!』
「あ、具しか食べへんから、そこだけ…」
『分かった!…ほ〜ら。食べに来ぃ〜…』
『…ほら、可愛い奴やろ?』
「…ですね。恐い人じゃなさそうで良かったです。」
『なんや?俺が可愛いって?男には禁句やで…ほーれ、ほれほれ…』
話は聞いているようだが、四郎に釘づけだ。
ふと窓に寄り、外を眺める。
うん、あそこに飛べば逃げられるな。退路確保!
『外になんかある?』
「いや、高いから風が気持ちいいなと思いまして…」
『あ!…見た?!俺の手ぇから食べよったで!ヤバい!』
『しっかし似とんな〜!なぁ、アスラー』
「えっ?」
『似てますね…』
『嫌そうな顔すんなや…俺も嫌やで!』
「いや…俺、こんなにデレデレしませんもん。」
『お前もしとったわ!』
「えぇ…」
『その顔!ホンマソックリ!ハハハハッ』
ジッとマキシムと見つめて確かめる。
確かに、ほくろは一緒だが、こいつはそこまでつり目じゃないし、鼻も高い。色も私よりかは黒いし…
「『似てない』」
『ブッ…やめてぇな!同時に言うとか〜ハハハッ』
『そんなことより、この鳥の名前は?』
「四郎です」
『シローやな。…カナは何歳なん?』
「春で15になります」
『若ッ!……この町の事、どう思う?』
「この町ですか?…」
『ほら、外からきたんやから、なんか思うことあるやろ?』
「……格差があり過ぎる事ですかね…」
『難しい言葉知ってんな…』
「病気で本ばかり読んでましたから…だから、本の中のことしか知らないんです。」
『……俺らのこと、どう思う?』
「…性格とかですか?」
『ちゃうやん!窃盗、恐喝、スリとかやることや…』
誤魔化されてくれよ…
なんて答えればいいんだ?マキシムらの意志に沿うように言えばいいのか?
…いや、やっぱり私はこいつらを説得したいんだから、ここは…
「…俺は、辞めた方が良いと思います。でも、仕方ないことだとも思います。仕事に就けない。お金がない。食べ物がない…。隣では無邪気に笑いながら、食べ物を食べる人達…羨ましいし、何故自分は…と、憤ると思います。あの隔離された場所は、マキシムさん達に守られてきたから、生きられた…これからも守っていくんですか?」
『…そうや。』
「このままの生活を続けていくんですか?」
『……なにが言いたいん?』
「良くなる方法は無いんですか?」
『………』
『踏み入り過ぎやぞ!』
『ええ。喋らせたれ…良くなる方法あるんか?』
「俺は、この町の事、見た所しか知らないんです。方法は無いんですか?」
『俺が聞いとるんや…』
「俺が先です。」
偉そうに!と思っているんだろう…尖った視線が突き刺さっている。
ピリピリと緊張感漂う沈黙…だが、マキシムの目から視線は外さない。
「………」
『…はぁ、世間知らずなん?それとも、肝の座った子なん?』
「…頑固って言われます。」
『ハハハハッ!……明日、また来ぃや。』
「えっ?」
『…明日も来ぃって言うてんの!』
興味本位か?…それとも、見張りたいからか?
少なくとも、今すぐどうこうされないということ。
明日があるなら、帰れるということ。そして、また会えるということだ。
「はい。明日もお邪魔します。…兄貴は連れて来たら駄目ですか?」
『うーん…カナだけにして。2人も相手出来ひんから。』
そんなの少しも思ってないだろう…警戒されてはいるのか…
危険だと反対されるだろうな…
しかし、引くわけにはいかない。断れば疑って下さいと言っているようなもんだ。
「…分かりました。マキシムさん…」
『ん?』
私はこいつに言いたい。
私達の計画も、ゲンさんの気持ちも。
こいつらが貯め込んでいるらしい武器を使う前に、思い留まらせたい。
私みたいな警戒された奴に言われても、本気にしたりしないだろう。
それなら、こちらの言葉を信じてもらえるようにならなければ…
「今度はパンツ履いてて下さいね。ふふふ…」
だが、機を見て話すことは重要だ。
勝手に行動しては駄目。仲間に相談してからだ。
『あぁ〜それ、忘れてぇや…』
『クフフフ…忘れるかい。頭のあんな醜態…さ、カナはもう帰らなアカンのちゃう?』
「あっ、また明日来ます!お邪魔しました!」
『おう。シローが重要やで!』
「四郎かよ!…しっつれいしましたーーっ…」
『下まで送ってくるわ!』
思わずつっこんでしまったぜ…
ケイナーの後ろについて、階段を下りて行く。
『明日、今日会うた広場に昼過ぎ来てな…』
「はい、分かりました。」
『……敵にならんといてな』
「敵…私の敵はケイナーさん達じゃないですよ。また明日お願いします!さよならっ」
『ちょっ、待ちぃ……あ〜あ。逃げられてもうたわ………私?まさかな…』




