チンピラ
宿へ連れて行き、ギル達を待つ。
その間にチンピラ三人の名前や仲間の事を聞いた。
細目の編み込みは、ラグ。絡まれたとき、最初に座った、割と友好的だった奴だ。
顔も体もデカい、私によく突っかかってきたのが、タシン。因みに、私が投げ飛ばした奴だ。
そして、耳に何個ピアス付けてるか数えてみたい程に輪っかだらけの、シャンク。たれ目のビビりという印象…。
このチームのリーダーは、今ケガで静養中らしい。
仲間は皆独身だがラグ達三人とは違い、親や兄弟がいる奴もいて、自分が逃げたら家族が…っていう問題もある様だ。
何人かの知り合いの内の1人が、頭のマキシムって奴の下に付いている。今はちょっと話しをするだけの、ちょい疎遠状態になっているらしい。週に一回金を集めにくるのがコイツ、アスラーだ。
そもそも、なんでこんな組織に入っているのかと聞けば、孤児院に入れる子供は選別されているらしい。その基準は見目の良い子供。
ラグ達は、あぶれた子供というわけだ。その中に貧困層の子供も混じり、盗みで生計を立てていた。
そんな時アスラーが捕まり、それを助けたのがマキシムの部下の男で、その男の手引きで組織に入り、アスラーは上の連中に付いて、昇格していったということだった。
「何だこいつら…」
「あ、アルとギル!こいつらは…私に絡んできた奴らだ。」
「…貴様ら…死ぬか?」
「ちょっと、ちょっと!違うでしょうよ!絡んで来たけど返り討ちに合った人達でしょ!」
「………」
「そうか、そうか…くくっ。何でここにいるんだ?」
「俺が説明するから、カナメは黙っててよ。」
「ん…わかった」
ヴィルが説明する中、こいつらの事を考えてみた。
子供達だけで生きていくには、そんなことをしなければ生きていけないのは、まぁわかる。組織に入って知恵や指示を受ければ、少しでも安全に確実に出来た事だろう。
大人になっても抜けないのは、金がいるから…その金は、そういう子供に回っているんだろうか?
そもそも、孤児院の選別ってなんだ?見目の良い子供ってどうゆうことだ?怪しすぎるぞ…
いずれにしろ、領主とか孤児院が悪いんじゃないのか?
領民を蔑ろにしているんじゃないのか?
こいつらの頭、マキシムも、そう思ってやっているんじゃないのか?
何が悪くて、何が正義かよく分からない。
マキシムを捕まえても意味はないんじゃないだろうか…
ほっぽり出された孤児を守ってやらないと、繰り返すんじゃないのか?
「…わかった。頭のことはとりあえず調べてからだ。言っておくが、これは俺らがどうこう出来る問題じゃない…領主が動かねばならないことだ。」
『…無理や。領主が動く訳ないやん…』
「動くじゃない。動かねばならないようにするんだ。」
『は?…何すんねん…』
ニヤリとする我がグレイトピエロ男性陣。
「それは調査次第だね。俺達になら出来ることがあるんだよ。」
『なにを…』
「秘密っ」
「その前にお前らの組織の事を詳しく聞かせろ」
「あ、貧困層の現状と、君達からみた領主や裕福層の事、軍関連もね。」
『お、お前ら何者やねん…』
「だから〜ヒ・ミ・ツ」
「…それ、言いたいだけだろ?」
「秘密が多いのはモテる秘訣だよ。」
「…お前は男にモテたいのか?」
「馬鹿だね〜…秘密は秘密として女の子に広まるんだよ。」
「広めるな…お前らもだ」
『お、おう…分かった』
ギルの睨みで、ビビりのシャンクは可哀相なくらいコクコク頷いている。
夜まで話を聞き出した後、ラグ達に晩飯を食わせて帰らせた。
翌朝、ラグから約束の物を受け取って、男部屋で待っていてもらう。
昨夜、父親バリに難色を示すギルから、卑屈演技で貧困街の聞き取り調査をもぎ取り、変装の為のチンピラ服を頼んだのだ。
ギルのようなゴツい奴は警戒されるに決まってんだ!私が一番適任なんだよ。
ちなみにもう一人はアルだ。皆より若干日焼けしているから、ギルやヴィルより紛れ込めるだろうっていう適当な理由だ。
中のサラシに、ガバガバな黒タンクトップ…だけじゃ駄目だな…中に自前の灰色タンクトップも着ておこう。下はゆったりした黒のパンツ。
バンダナ巻けばギャングだな…なんか気恥ずかしいのは気のせいか…?
男部屋の前まで行くと笑い声が聞こえる。
「…入るぞ〜」
「…ブハハハハ!お前の格好っハハ!」
「フフフフ…カナメ…」
『ハハハハハ、似合っとるで。ククッ大丈夫や…』
「何だよ!アルだって笑われてたんだろ?」
「お前の方が強烈だ。クククッ…ほら、ガキが粋がってる感じ!」
「…ムカつく!」
「なら止めるか?」
「止め…ない!!とことんやってやる!」
「……何か羽織れ。」
「涼しいから嫌だ。後は訛りか…これでええやろ?舐めとったらあかんで!!」
「ハハハハハ!最高だ!お前は下っ端の役だがなっ!」
「そうだったな…アニキ!何処までも付いていきまっせ!」
『ちょっとちゃうと思うんやけど…まぁええか。』
「ふふふ…暴れちゃ駄目だからね。ラグに付いて、話を合わせて紛れ込むだけだよ。」
「任せ…任しといて!な!アル兄貴!」
「そうやで!俺らラグの舎弟や!ハハハ」
『なんかイラッとするんはなんでやろ…ま、行くで。』
「気をつけろ…くれぐれも」
「バレるな、合わせろ、ヤバくなったら逃げろ!了解しました、親分!」
「なんでやねん!ハハハハッ」
『…何か気ぃ重いわ…』
「すまん…頼んだぞ」
『ああ。ちゃんと見とったる…俺らの立場もあるしな。』
ギルがラグの肩を二回叩き、部屋を出た。
道中、パンや飴を買い、貧困街に向かった。
次第に、ビッシリ並んだ家々…狭く圧迫感のある道に変わり、貧困街に入ったとわかる。
母親と子供が必死に布を洗っていたり、路上脇で寝てる奴がいたり、ゴミがそこら中落ちてたり…とりあえずごちゃごちゃしてて、汚い所だった。
一つのボロ屋に入り、扉を開けると、顔色の悪いやつれた男が横たわっていた。
『ネイト…連れてきたで。』
『…ラグか…こんな格好でごめんやで…ハハハ』
「お前がリーダーか…俺はアルだ。こっちはカナメ。お前の仲間、ちょっと借りてるぞ。」
『ああ…ネイトや。昨日聞いたけど、もし…領主らが動いたとして、協力しとった俺の仲間は、その後どうなるん?』
「それも調査次第で変わるが、新天地で頑張れと言いたいとこだな。主犯格と幹部は捕まることになるかもしれない。しかし、根本的な原因はこの町の体制だろうと考えている。俺達はそこを探るだけだ…引き渡したりはしねぇよ。」
『そっか……なにすんねん!』
ケガが気になり、掛布をめくったのだ。
「足か?…見せろ。」
『ちょっ、ちょっと待ってや!』
『足の付け根やねん。女が見るとこちゃうで』
『お前が、ラグの言うてた女?』
「…なら、アルが見てやってくれ。私は…そうだな…飯作るか。」
『ええんか?そんなんしとって…』
「さっさと作る…」
…きったねぇな…調理場は衛生第一だぞ?ダメダメだな…
ここにラグ、ネイト、タシン、シャンクの4人で暮らしているらしいが、男所帯だとしても、これは許せん…
ま、とりあえず火を先に付けて……
「湯をくれ!」
「まだ火もついてねぇよ!待ってくれ……」
「………馬鹿だなお前…無謀すぎ…」
「出来たぞ。パン粥だ。飲み物はこれを飲め。レモンで飲みやすくしてるからな。」
「すまんなぁ…」
砂糖とちょっとの塩に、レモンを搾った水を作ったのだ。脱水は起こしてなさそうだが、顔色が悪すぎる。
「ネイトな、一人で黄長鰐を狩りに行ってケガしたんだとよ!」
「なんでまた…馬鹿だろ…」
『…色々事情があんねん!ほっといてぇや!』
「女だな」
『ちゃうって!ガキらが見たい言うから…』
『ルミーにええ格好見せようとしたんやろ?…ガキらの面倒見とる幼なじみや』
『なんでバラすんや!』
ガンガンッ
『ネイト…居てる?』
「…彼女のお出ましだなっ」
アルがニヤリとネイトを見た。同時にラグが玄関へ出て行く…
『なんで…?ケガしたん知らんはずやのに…』
『はいは〜い。どないしたん?』
『ラグ…最近ネイト来ーへんけどなんかあったん?鰐置いてあるし、ホンマに捕ってきたんやって、ビックリしてんけど…』
『今な、病に伏せってんねん…』
『おい、ラグ!』
『…ネイト!大丈夫…誰なん?』
「あ〜友達、やで…俺らもう行くから、面倒見たって!ささっ…行こか行こか!」
「そうやな!兄貴!良かった良かった」
『ハハハ…ほな、行ってくるわ。看病してもらいっ』
『待ってくれや…』
『……どこが悪いん?』
『どこって……』
戸を閉めて3人でニヤニヤしていると…
『アホやろーー!死んだらどうすんの!!』
「……クククッ、すげー怒られてやがる…」
『ちょっとは効くやろ。ハハハッ』
「尻に敷かれてるぐらいがいいんだ。いい子いるじゃんか。…さて行きますかっ」
ルミーが見ているという子供達に会って飴を配ったり、他の仲間と話をしたり…
すれ違った別のチームの奴にも、対して目を向けられなかったので、難なくこの日の調査は終了した。
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「今日ネイトんところの奴が、知らん2人連れて歩いてたで。」
「そうか…なんか変なことしとったんか?」
「別にしてへんかったけど…昨日、広場で揉めとった奴に似てる気ぃすんねん。黒髪やし…」
「……黒髪なんか珍しいやん。…同じ奴やったらおかしいよな……明日様子見て接触しとけ。怪しかったら連れてこい」
「ん。了解っ!アスラーに言っとこ…」




