舐めんなよ!
結局あれ以来喋らないまま、私の肩に居着いてしまった青い鳥。
難なく宿屋に見つからずに部屋と私を行き来させる事に成功した。
後日、組合所のおっちゃんに『雄』判定を受けた。チームの四人目の男で、名前は四郎だ。相変わらず名付けは適当、日本風だ。
私は、四郎と財布男をつれて、約束通り買い物に出た。
「逢い引きだね!カナメちゃんっ」
「コラッ!財布が喋るな」
「酷い…」
服屋に入り、この地に合った服を見繕って貰った。勿論男性物だ。
森に入るため、長袖の通気性の良いらしい服や、ズボン、下着も…
「何で男用の下着買うの?」
「こっちの方がピッタリして落ち着くんだ。お前はいらないのか?」
「カナメに見せる下着はコッソリ買うよ。」
「買うな。そんなもん見たくない」
「こっちは?白なら女性でも…」
「うーん…透けそうだから却下!」
「ええ〜そこがいいのにっ…痛いよ…」
拳骨をお見舞いしてから、財布男に品を持たせて払わせる。
荷物も持てる財布なんて素晴らしい。だが、財布の口は開けてて欲しいが、うるさい口は閉じてて欲しい…
衝動買いが許される日なので、どんどんいくぞ!!
大安売りの黄長鰐の鞄の中から、ウエストポーチ型の、留め具が感じのいい物をチョイス!
沼蛙の頬袋なんていう、半透明な黄色の袋が売っていた。何に使うのか聞いてみると…
「北の人やったら知らんのも無理無いわ!これな、水入れても穴が空かへん限り水漏れ無しなんや。よう伸びるから、濡らしたくないもん入れて、口縛っとったら、川に飛び込んでも安心やで!大きいのやとこっちや!ようさん買って行ってや!ちょっとぐらいまけとくで!」
…だそうだ。風船より薄い、黄色の半透明なゴム袋。良く伸びるが、強度はなさそうなので、取り扱い注意だな。
「ありがとう!いっぱい買うから、後で声かけるよ!」
「ゆっくり見てって〜」
「ヴィル…」
「はいはい、何枚買うの?…でも安いね。向こうじゃ結構高価だよ?箱買いしちゃう?」
大人買いならぬ、貴族買いか…欲しい…が、
「本気か?1枚は3ネルだが、箱となると…」
「買っちゃお買っちゃお!あっちじゃ10枚100ネルだよ?」
「マジか…」
「これは買うから。…俺はあっち見てくるね。買うもの決まったら呼んでよ?」
ヴィルが去り、私も商品を探すことにする。
鰐革なんて高級ってイメージだが、すぐ側で狩れるせいか、お手頃価格だ。
かと言って、自分が買うなら悩むがな…
剣帯なんかも新調しよう…ふふふ
「毎度おおきに!美男子のにーちゃんと青蘭鳥のにーちゃん!」
「この子女の子だよ!」
「言うなよ!」
「…じょっ、嬢ちゃん、またきてや〜」
荷物を宿に置いてから、遅めの昼飯に行った。
そして、腹を満たして、2ラウンド目開始だ!
武器屋や、文具屋…そして欠かせないのが屋台、露天だ!
「もう、疲れたよ〜!」
「休憩しようか。ヴィル、あそこのジュース買って!」
「はいはい、カナメ様…」
公爵家のくせにパシりっぽく、肩を落として離れていく。
石段に腰掛けて、荷物番をしていると、柄の悪い三人がこちらに向かってきた。
『お遣いか?坊主』
『こんなに買って、よっぽど金が有り余ってるんやな〜』
「触るな…何の用だ?物取りか?喝上げか?」
『ヒュー!いっちょ前に威嚇してくるやん!』
「で?本当に何の用なんだ…話し相手か?」
『年上相手に、言い方ってもんあるやろ?舐めとんのか?!』
「年上ねぇ…じゃあ何の用なんですかね?おっさん!!」
『あ!?』
メンチ切っててビビると思ってんのか!?舐めてんのはお前だ!ぶっ飛ばしてやる!!
「ガキ相手にそんなマネすんのが趣味か?おっさん!」
キレて、横殴りのパンチが振り落とされる。
腕を流すように避けて、懐に入り、背負い投げで投げ飛ばす。
受け身も知らねぇのか!ざまぁ!!
『なにっ!?』
「やるか?!お前ら全員で来るか?…ほらっ」
手招きして挑発する。
明らかにブチキレた顔してやがる…ふふふ
「待って待って!なにしてんのさ!!」
「お〜遅かったな!美男子くん。あいつらが私と遊びたいって言うからさ…飲み物ありがと。」
『ふざけんなっ!ぶっ殺す!!』
「ん〜旨い!ヴィルは座って見てな」
「馬鹿馬鹿バカナメ!…みんな集まってきたし、君達ももう止めない?あそこのジュース奢ってあげるから!ね?」
『あん?!お前なんやねん…そんなんで分かった言うはずないやろ!!』
「…っと、危ない…君達何歳?とりあえず座って話そう?」
怒りが急に冷め、笑いがこみ上げてくる。
だって、この状況でありえるか?
「ハハハハハ!お前っ…それで普通に座るわけねーだろ!マジ最高だっ、ククッ…いいだろう。座ってやろうじゃないか。お前らもこっちこいよ!」
『は?アホか』
『おいっ…おもろいやん。俺らにそんなんいう奴…ククッ。……座ったで!』
『あ?!お前アホか!俺はヤられた借りがあるんや!』
「この子が何をしたのかな?…こっちに来て話してよ。」
『何をってな〜…チッ、しゃーない。教えたるわ!』
「うん、ありがとう。この子口は悪いし、すぐ手は出るしで、君達の気持ちは大いに分かってるつもりだよ。」
「おい…」
「だけどね、ホントは情の厚い女の子なんだ。話をすればわかると思うよ?」
『ちょっ、ちょっと待ってや…今なんて言ったん?』
「だから、情の厚い子…女の子!」
『…冗談!ハハッ、嘘つくなや…』
「…女だ。女のガキに手を出したんだよ、お前らは!」
「カナメ!ドウドウ…落ち着いて。」
「馬扱いすんなよ…」
『ホンマに言うてるん?嘘やん…俺らの掟が…』
『マジなん?!』
『………』
急に落ち込むチンピラ三人組…
「掟とかあるんだね…女の子には手を出さないって感じの?」
『…そう。女だけはアカンねん…』
「…じゃあ、掟破ったらどうなるの?」
『…俺はもう、この町から出なアカン…』
「…出なくていい。こんな事辞めればいいんだ。ハンターやれよ…三人ならやれるだろ?」
『………できひん。今更や!』
「何故だ?」
『ガキん頃からの生業や。今更ハンターなんかできひんわ』
「…それはこっちの方が楽だからか?…女の私がハンターやってるんだぞ?私が出来ることを、お前らは出来ないって言うんだな。図体がデカいだけで、その程度なんだな。」
『お前なぁあっ!!』
「黙れ!……自分より弱い奴狙って、金むしり取って…情けねぇんだよ!お前らは大人だろう?やろうと思えば何でも出来るんだ。今更ってなんだ!?逃げてるだけだ!卑屈になって、可哀相な自分は、生きる為には仕方ねぇとか思ってんだろ?あぁ!?ふざけんなよ!!」
『ああっ!?わかんのか?俺らがどう生きてきたか!!』
「知るか!過去なんてどーでもいい!今、お前らはどうしたいんだ?どうなりたいんだ?疎まれたままでいいのか?…私は嫌だ。どうしても周りを認めさせたい!何をすればいいのかわからないが、悪事には絶対手を出さない!自分が正当でいなければ、周りも認めやしない。分かってくれないって言う前に、分かってもらえるように動け…足掻けよ!剣を抜かず、拳で来るってのは、そこまで腐ってない証拠だ。出来る…諦めるな!」
『………』
「…はぁ、熱い熱い…飲み物買ってくるね…」
ヴィルがニヤニヤしながら、ジュースを買いに行った。
もう殴り合いはないと踏んだのだろう。
「ホント熱くなっちゃったな…ハズッ!」
『あ〜あっ……何やねんお前は。…なんで女の、ガキの…お前にこんなこと言われてるんやろ…?』
『…すまんっ!殴りかかってホンマ、悪かった…』
「それはいい。当たってないし、投げ飛ばしたからな。…だけど私は謝らないからな!…何か仕事に就け。ハンターが手っ取り早いってだけで、違うものでもいいんだ。ハンターは命を賭けるから、それなりの覚悟がいる…これからどうするかよく考えろ。まだ続けるならお前らを突き出すからな!」
『…お前はなんでハンターやってんねん…』
「ハンターは生きる術だ。…私はイベルナ人と間違われた、男爵家の養女。」
『養女…なら、お前が認めさせたいんって貴族なんか?』
「そうだ。…途方もないだろう?お前らの方が望みあるんじゃないか?」
『………』
「私よりお前らだ…これまで奪った分は、お前らを嫌う者の数だ。ヤられた側は覚えている。許される事はないだろう…だが、これから恩を売っていけば、味方が出来る。ま、お前ら人相悪いから難しいかもな!くくっ」
『お前な…』
ファサッ
四郎が膝に戻ってきた。
青色の背を撫でながらチンピラを見ると、驚いた顔で固まっている。
「…おまたせ〜はい、君達の分ね。で、どういうことになったの?」
「どうなんだ?あんな事まだやるつもりなのか?」
『…仲間がまだおんねん…』
「何人いるんだ?」
『俺らのチームは7人や。あと、3つチームがあんねん。で、上に頭がおる』
『お前、そんなん話したらマキシムさんに……』
「ソイツが頭か…チッ……お前らは、町から出たら追われるのか?!」
『俺ら7人おらんのバレたら、金徴収できひんから追われるやろな。』
「なるほどね〜。これはどうしよっかな…君達だけ逃がしても解決にはならないから…。我がリーダーと相談するべきかも。」
「…だな。ここの領主は何やってんだよ…」
「君達、その組織を抜ける気はあるんだよね?」
『………』
『やっぱむりや。仲間が納得するかわからんし、対立してもうたとしても置いていかれへん。』
「…頭潰すか…そしたら、お前らは辞めるしかなくなるよな?」
『そら、俺らはそうやけど…でも、なんでお前らがやんねん…俺らがどうなろうと関係ないやろ?』
「もう知ってしまったからには、見過ごせない…お前らも計画人員だからな。情報を出して、密偵しろ。」
『密偵!?』
「これから俺達の宿に来てくれない?相談しよ?」
『だから、なんで俺らの味方すんねんって、聞いてるんや!』
「うーん…正義の味方だから?」
「…いや、コイツらも悪者だからな。」
「違うよ!民の味方!ちゃーんと、君達も入ってるからね。」
『………』
「…気持ち悪いって言っていいぞ?格好つけの、ナルシスト野郎が!」
「なるしすと?」
「自分大好きのキザ野郎のことだ。」
「うーん…なにが悪いの?」
『……』
「お前ら行くぞ。荷物忘れんなよ!財布男!」
「ええ〜…少し持って…待ってよ〜〜!」




