日本からの私物
モヤモヤしたまま通常通りの護衛生活に戻って3日…
何故か、巨大な川を越えてからやけに暖かい…いや、南に行くにつれドンドン暑くなってきた。
なんなんだ?この異常気象は…
冬だよな?いや、そんなに気温が違うなんて可笑しいだろ?同じ国だよな?
「暑い…暑い暑い暑い!!」
「うるせぇ…」
「いや、おかしいだろ!赤道近いのか?…いや、こんな急に暑くなりはしないだろ!?あれは熱帯雨林か?アフリカか?おかしい!」
暑さでイライラする!冬用のタートルネックなんて着てる馬鹿は私達ぐらいじゃないか?
「いや、お前…大丈夫か?わけわかんねぇことばっか…」
「何語なのそれ…」
あぁ…ヴィルには言ってないんだったな。
紙飛行機騒動では、自分で考えたって突き通したし、偶に出る日本語の時は、意味を聞かれるだけでさして突っ込んで来なかったしな。
ま、言ってもいいか。
「にほん語。此処より遥かに科学の進んだ世界の小さな島国。」
「世界?科学?なにそれ…」
「ま、そんなとこあるんだー!ってことで…赤道ってのがな…ちょっと待ってろ。」
紙に描かないと説明できねぇっつーの。
手帳とボールペンを手に皆の元に戻る。
「これがマールで、こう、陸地があるだろ?」
「ちょっ、ちょっ、待って…何?その棒と書物…」
「は?…あぁ、ペンと手帳だ。でな…」
「見せて!何これ…凄いんだけど。」
ボールペンを取り上げ、カチカチカチカチさせるヴィル。
「前の世界のもん持ってたのか!?」
「え?鞄もそうなんだけど…」
「あの、布地の鞄もか?!」
「ああ。私が補修したからめちゃくちゃ雑だけどな。ハハッ」
今度はギルがカチカチやっている。何やら楽しそうだ。
だがしかし、返してもらうぜ!
「で、赤道がな…」
「なんで取んのさ…これガラス?…これも!この上質な紙は何なのさ。ツルツルだよ〜!本当に、凄いよこれ!」
次は手帳を取られ、紙を撫で回すヴィルから抜き取るギル。
「…ほう。……なんだこれは」
手帳の一番最後にある、折り畳まれている世界地図だ。
「私の世界の地図だ。あ!赤道あるじゃん!ファインプレーだ、ギル!」
「「「…………」」」
地図を凝視して固まる3人にため息を吐いた。
「…アル!ちゃんと前見ろ。お前御者なんだぞ…」
「お…おぉ…」
「…全然わからない…」
「…ああ」
「何がわからないんだ?」
「これが世界の地図なの?こっちはなに?」
「ああ、裏は日本地図。私の国だった所。…じゃなくてな、私は赤道を説明したいんだ。」
「いや、それはいいから…根本的に何なの?カナメは、何処からどうして此処に来たの?別の世界って何?この地図がマールの地図じゃないなら、この国は何処にあるっていうの?」
なるほど…世界が一つだと思っているなら、この発想が出てもおかしくはない、かもしれない。
ってゆうか、私もこんな世界があるなんて、来て初めて分かったことだけどな。
まぁ、それは置いといて、ヴィルは今、世界の中に、アルタイン王国の所在が分からなくて、不安になっているってことだろう。
それも、この地図が本当だと信じての言葉だ。
ちゃんと説明しないとな。
「ヴィル…ちゃんと聞けよ…説明してやるから。」
「…うん。」
以前、洞窟でギル達に話した様に説明する。
ついでに、こうして旅をしている経緯も。
更についでに、エヴァとの約束も…
「は〜?なんで婚約なんかしてるわけ?馬鹿?しかも受け身って…信じられないよ。バカナメ!!」
「それは…反省してる。」
「ま、口約束だし、縛る術にはならないけどね。」
「いや、私は約束を守る。エヴァが他の女を好きにならない限り…」
「…馬鹿!何故そこまで頑なになれるわけ?恩があるから?カナメの幸せは」
「私は幸せだった!死ぬ前の23年間を覆す程に、家族という、自分の居場所があることが幸せだと思った。私は向こうで孤児だったから知らなかったんだ。こっちでそれを手に入れた。それにしがみつくのは当たり前だろ?…私は大人だ。エヴァは弟みたいなもんだ。まだ子供のエヴァには私の気持ちは伝わらなかったけど、次に会うときはわかるはずだ。その時まで私は待つ。苦痛なんてないんだ。幸い、私が恋をする事は有り得ないしな。」
「「………」」
「……分かったよ。じゃあ、カナメに恋を教えてやればいいんだね?」
「…いや、違うだろ…」
「ま、それは追々…で?カナメの世界はどんな世界なの?」
追々ってなんだよ…
「……馬車はない。馬要らずの、高速で走る車がある。鉄の船が空を飛び、城より高い建物がポンポンある。」
「嘘だろ〜それはねぇよ」
「本当だ。火を使わずに明かりをつけたり、料理したり…あ、私の写真見せてやるよ…ほら。大人だろう?」
財布の中の免許証を出した。
「ほう…」
「へぇ…これが23歳のカナメ?」
「いや、20だ。」
「どれどれ?うわっ!目つき悪ぃ〜ハハハッ」
「異国…異世界か…どうやって船が空を飛ぶの?魔法?」
「魔法なんかない。何故飛ぶのかは知らない。」
「なんでさ…」
「専門家じゃないから…興味もなかったし、飛ぶもんは飛ぶ、手押しポンプは押したら水が出る。みたいな感じだ。それが当たり前なんだ。」
「なるほどな…」
「確かに俺もわかんねぇわ。なんで水が出るんだ?」
「…押すことで中に圧をかけ…」
律儀にギルは、アルに説明をし始めた。
「カナメは、アッチの世界に戻ったりとか出来るの?」
「さぁな…向こうで私は死んだし…いや、消えたのか?でも私は戻りたくない…便利だろうと、命の危険がなかろうと…な。」
「そっか…安全何だね、そっちの世界は。」
「そうだな…剣なんか持っててみろ。すぐ捕まるぞ。夜中に女ひとりで歩いても危険はない。ま、私の国がそうなだけで、危険な国もあるけどな。」
「いいね。そんな国…」
「…殺さなくても、精神的に追い詰め、自殺させる大人も…ガキだっている。陰湿なのか、弱いのか…誰もが幸せかはわからない。そんな面もある。どっちの世界が良いか悪いかは行ってみなくちゃわからないぞ。」
「…随分嫌なこと言うね。自国の事なのに…」
「表があれば裏もあるんだ。…でも嫌いじゃないぞ。アッチのご飯は恋しい。ハハハハッ」
「食い意地しかないのか…ホント残念娘だね…」
「残念で結構!…ちょっ、…何あれ?」
ダチョウ?いや、デカ過ぎる。
木と同じぐらいの高さ…おそらくキリン並の大きさで、黒っぽい鳥が群れで移動している。
ーーーカンカンカンーーー
こっち向かってくんのかよ!
あんなのに囲まれたら…
「…肉食じゃないよな?」
「確か、雑食だよ。」
「肉食べんのかよ!?」
「初めての危機らしい危機だね」
「速っ!走んの速過ぎ!…そしてお前は落ち着き過ぎ!」
「え?そんなこと無いよ?弓弓〜。止まるのかな?」
「…おそらくあの崖まで逃げるだろう。」
「そうだね。その前にやられなければね。」
「わ、私は?」
「アルと代われ。」
「了解!」
「左に多数、右は10…ちょい!!」
「左へ併走しろ。」
「了解」
「左に多数!前に回せ!」
『分かった!!』
たちまち前の5台が二列に変わり、私達は最後尾の左につけた。
「来るぞ!!」




