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要の意味  作者: かなりあ
28/63

心残り 

遂に降りだした豪雨の中、ガンガン飛ばす花子と幸子のおかげで村に着く手前で合流でき、そのまま村に入った。


カリストファーはジュースを飲んだ後、すぐに眠りにつき、メイリーンはクッキーの四つ目を食べている途中で寝入ってしまった。

親はどうしているのかなど、辛い事かもしれない事を起こして聴くわけにもいかず、宿へと運んだ。


そうした経緯を話すと、商隊の代表サーベス=ラウナーとこの村の村長に嫌な顔をされた。

しかし当然ながら、この村で受け入れる事は約束してもらったので、迎えが来るまでは不自由なく面倒見てもらえるようだ。

医療費を渋る馬鹿共に、ギルバート次期侯爵様が金貨を叩きつけたのにはスカッとした。という一幕もあったので、早く騎士が迎えにきてくれと、人知れず願ったのは言うまでもない。


宿に寝かせた子供達の面倒は、先程診察してくれた、医者とは思えないムキムキ親父の娘、アヴァンダがきてくれた。

体はムキムキではないが、笑い皺が親父にソックリな、明るく元気な女性だった。



商隊がこの村を出るのは明後日と言われたので、やることもない私達は寒さから逃げるように宿に篭もり、カストファーの様子を見たり、宿で十分寛いでいた。



翌日の昼、米の試食会的なものを内々でやっていたら、アヴァンダが入ってきて、その父親と村長、商会のサーベス殿が次々参加してきた。

味わう暇のない、米とフライパンとの戦い…

女将との協同作業の末…医療費の件の悪印象を軽減させた手柄は私のモノだ!

だがしかし!米をどのくらい消費したか思い出すと泣けてくる…

皆喜んでくれたが、一番楽しんでたのは、アルとヴィルと医者娘だ。


無邪気にハシャぐアヴァンダをギルの結婚相手に推してみたが、無言の睨みを頂いた…


「お前の好みはどんな感じなんだよ…」

「…直感」

「一目惚れかよ…無理難題すぎる…」

「なになに?一目惚れ?」


ヴィルとアルが話に割り込んできた。


「違う…」

「ギルの女の好みの話。」

「俺は、なんつーか、こう、儚い感じの、首や腰の細い…口元のホクロとかいいよな〜」

「あ!ミズリーフ伯爵夫人?」

「わかっちまった?いいよな〜!あのホクロがまた妖艶でいいんだよな〜」

「俺はね…正面から俺に言い返す事の出来る子がいいんだよね。」

「いる訳ねぇだろ。ハンターなのにあんなに女の視線集める奴なんか……なんだよ…」


アルもギルも目を見開いて私を見ている。


「か、カナメ?」

「ん?」

「そうなんだよ。今のとこカナメしかいないよね。俺と結婚する?」

「は?…私?」

「うん。今までで一番楽しい女の子だよ。カナメは。」

「はぁ?無理無理!絶対に嫌だ!死んでも嫌。お前とは絶対友達以上にはならない。断言する!お前にからかわれて一生を送るのは真っ平ごめんだ!!」

「あ〜フられちゃった。初めての告白だったのに…」

「初恋は実らないもんなんだよ。そういうことで、私は除外しといてくれ。」

「じゃあ、親友ならいいの?」

「……いいけど…私は、仲間は皆大事だぞ?お前だって仲間だろ?それって親友となにが違うんだ?」

「…アハハハハッ!好きだよ、カナメ!」

「キモい!抱きつくな!…今までで一番気持ち悪い!」

「ハハハハッ、そのまま部屋に行っちまえ!ヴィル!」

「いいの?行こっか、カナメ」

「………」


ふざけんなよ…!


「死ね!」

「うぐっ……」


崩れ落ちて、床に這いつくばるヴィル。

握り拳をヴィルの鳩尾に叩き込んだのだ。


「天誅!」


「クハハハハ!ヴィル情けねぇぞ!ハハハハッ」

「ククククッ…ヴィル、それは、マズイ…くふふふ」

「はぁ、はぁ、はぁ…信じ…ら…れない…よ…」

『どうしたの、この状況!?』

「あ、アヴァンダ。」

「食あたりじゃないわよね!?」

「ああ、神という名の私が、正義の鉄槌を…いや、鳩尾にドスッと…ねっ!」

「えっ!?」

「ハハハハッ、ヴィル…もう立てるか?ククッ」

「…うん…本当に、死ぬかと、思ったよ…」

「馬鹿は死ななきゃ治らないってのに…」

「並の女じゃないって知ってるだろう?」

「ギル…強敵だね。」

「…何だって?」

「……」

「また悪口言って」





ーーーアヴァンダさん!男の子が起きました!ーーー




「…やっと起きたか。私も行く!」

「ええ。その方が助かるわ!」

「じゃっ、皆、片付けよろしくぅっ!」

「狡いぞ!」

「ハッハッハ…」


逃げるが勝ち!




カリストファーはまだ熱があったから、身体は怠いはずだ。


「カリストファー…おはよ。大丈夫か?」

「うん…メイも…ずっと寝てたの?」

「ああ。あれから寝たままだ。疲れてたんだろう。お前もな」

「私は医者のアヴァンダ。飲み物とか食べ物食べられそうかな?」

「う、ん。喉が…」

「…はい、お水。沢山飲んで。」


ゴクゴク喉を鳴らすカリストファーの首に手のひらを当てるアヴァンダ。


「…うん、少し下がったわね。」

「あの…母さんと」

「その話、聞いてなかったろ?教えてくれ。どこで親と別れた?」


「…あの日、剣持った奴が来て…逃げて…隠れたんだけど、近くで声がして、また逃げたんだ。じゃあまた追いかけられて…母さんが倒れちゃって…逃げろって……父さんが逃げろって…」


ポロポロ涙を流しながら話すカリストファーの背を撫でる。


「そこは森か?川とか渡ったか?」

「うん…ずっと森の中。メイと2人になって、川の所の木に登って寝た。」

「…そうか。父さんと母さんの名前は?どんな格好だった?髪の色、服装…出来るだけ詳しく。」

「父さんは…ジーム。黒い服着てた。髪は僕と同じ茶色…あ、髪を後ろで結んでる」

「あ…頬に傷はあるか?」

「…それ、叔父さんだ…」

「…似てた奴いたかな…ごめん。わからない。母さんは?」

「イブリン。髪は同じで、長い…茶色の服…父さんの服と、緑のスカートで…」

「見てないな…転んでケガしてたら私とは会うことないし…。とにかく、今は軍がなんとかしてくれている。カリストファーみたいに逃げた人達の捜索も一昨日の朝からしている。お前達の事も村長が連絡したから、直に迎えにくるだろう。早く治して村の皆の所に戻ろうな。」

「…うん。」


アヴァンダに代わって、診察してもらう。


「…痛いところとか、吐きそうとかないかな?」

「…足が痛い…」

「靴擦れと…疲労かな?…少し揉んで解してみるから、痛かったら言うんだよ?」

「うん……」


「…んん〜……ふぁ〜あっ」

「…メイ!」

「にいちゃ…痛い…」

「ど、どこがいたいの?!」

「…ぜんぶ〜…うごくと痛いの…」

「なんだ…」

「メイリーンおはよ。お腹すいた?」

「すいた〜…はちみつ食べたい」

「ハハッ、覚えてたのか。ちゃんとご飯食べたら食わしてやる。…このお姉さんが世話してくれるから、ちゃんと言うこときくんだぞ?」

「カナメ、どこにいくの?」

「飯作ってくる。…さっき食ったミルクの米、あれなら食えるだろ?」

「あれね!美味しかったわ!それじゃあお願いします。…多めに作ってもいいわよ?ふふっ」

「まだ食うのかよ…じゃあ、行ってくる…」



薄味で作ったリゾットを食べさせた。

子供は動けないぐらいしんどくないとじっとしてないから、アルとヴィルを交えてババヌキをして退屈を紛らわせ、寝かしつけた。


親のことを言わないメイリーンは、子供ながらに何を思っているんだろうか…


『明日村を出る』そう話したときのメイリーンの縋る目と、開いては閉じるカリストファーの言えなかった言葉は、言わなくてもわかる。

私が孤児院を出るときのガキらと同じ…


『行かないで』だ。


私は聞いてやれない。

こいつらの親が生きていて、早く会えることを願う事のみ…





出発の朝、まだ寝ているカリストファーとメイリーンの顔を覗き、ささやかな折り鶴を置いて村を後にした。

最悪の場合はどうなるのかと考えると、後ろ髪を引かれる思い…のまま…






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